1–2 友達とクイーン
笹川愁乃は学年きっての美少女である。顔は言わずもがな可愛らしい。髪は茶髪をポニーテールにしている。勉強は少しアレだが、運動神経は抜群。性格も良く、男子の間ではマドンナ扱いされている。
そんな彼女に、入学から半年経ってとうとう告白した猛者が現れた、という一件で、学年の話題は持ちきりになっていた。
「なあ京輔!笹川に告ったやつって誰だと思う?」
翌日の昼休み。自動販売機でコーヒーを買った俺に、快活な声でクラスメイトの戸山龍一は問いかけた。俺は受け取り口からコーヒーを取ると、彼に向き直って言った。
「…実は龍一だったり?」
ぼくです。めちゃくちゃぼくです。いや意図してはいなかったのだが。
「んなわけねえだろ!俺はQ3の一人に告白できるような度胸は持ち合わせてねえよ」
Q3とは、クイーンスリーの略。美少女として有名なA組の稲瀬さんと、B組の真白さん、あと我らがC組の笹川さんを総括してそう呼んでいるらしい。
ちなみに龍一はこんなことを言っているが、俺とは違ってイケメンかつスポーツ万能、その上成績も優秀。実際にQ3を射止めるとしたら彼くらいしかいないのでは、と思ってしまうほどの優良物件だ。
ちなみに俺は彼とは違ってイケメンではないし、運動もろくすっぽできない。唯一勉強に関しては学年でも上位は維持できているが、それは彼も同じ。女子とも碌に話せないのでほぼ男子にしか友達がいない。
つまるところ、俺より龍一の方が主人公に向いてね?作者何考えてんの?
そこで、俺の携帯が震えた。
「ん?あー…ごめん龍一。ちょっと行ってくる」
「え?どこに?」
「空き教室」
携帯の画面には、
『しゅうの:話があるから1−A横の空き教室に来られたし』
と書いてあった。