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3–4 染谷家での勉強会

 「ただいま、宮奈(みやな)


 「おかえりー」


 染谷家のリビング、ソファーの上でマイシスター染谷宮奈がくつろいでいる。制服を着たまま、手には漫画、机にはポテチと、休みに休んでいた。普段は結んでいる黒い髪も、それに伴って解かれている。


 「お邪魔しまーす」


 そこへ、一人の女子の挨拶が投じられた。宮奈はそれを聞いた瞬間、漫画を閉じてがばっと上半身を起こした。


 そして声の主である笹川さんをじっと見る。


 「…お兄ちゃん、彼女?」


 ポカンとした顔をして、彼女は首を傾げた。


 「生憎だが違う。友達だ。一緒に勉強しようと思ってな」


 なんとか冷静に否定する。今後彼女にはしたいとは思っているが。おっと口が滑ったぜ。


 「なんだ、良かった…って、え、お兄ちゃん…勉強して大丈夫なの?」


 「…え?」


 妹の言い方に笹川さんが疑問を抱いたようだ。


 稲瀬さんにふわっと話したことだ。両親の不幸以来、家で勉強は一切してこなかった。自分から勉強しようとするとそのことがフラッシュバックし、動悸や息切れがするのだ。


 それを間近で見てきた宮奈からすれば、確かに不安にはなるだろう。


 「うーん、大丈夫じゃなかったらまあ、その時はその時で」


 「そっかー…頑張ってね。ここ使うんなら、私部屋に戻るから」


 「ありがとう」


 そこで、笹川さんがタイミングを測ったように、宮奈に話しかけた。


 「ごめんね、宮奈ちゃん。それと初めまして、京輔君と仲良くさせてもらってる、笹川愁乃です。これからよろしくね」


 宮奈は少し冷たい目を彼女に向けた。


 「…よろしくです。勉強を、頑張ってくださいね」


 彼女は勉強の部分を強調してそう言うと、漫画とポテチを持ってリビングを出て行った。ててて、と階段を上がる足音が聞こえる。


 「私、なんか変なこと言ったかな?」


 「まあ、気にしなくていいんじゃない?」


 俺はそう言いながら、キッチンへ行って飲み物やお菓子等を準備する。


 「それじゃあ、やっていこうか」


 「うん。今日はよろしくね」


 こうして勉強会が始まった。

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