皇女
「お父様っ」
私の声は衛兵によって遮られた。
「エレノア様、御下がり下さい」
近衛騎士のサローワが、私を玉座の間より
連れ出した。
「サローワ!、お父様の所へ戻りなさい。」
サローワは唇を噛みしめながら
首をふり、城の廻廊を皇女と進んで行く
「サローワ!、今すぐ離しなさい。」
それでも、サローワは皇女を離さず
城の門の外へ皇女を連れ出した。
「エレノア様、南のハグマレスト王国へ
お逃げ下さい。馬車は此れに用意しております。」
そう言い、護衛の従者に引き渡した。
「サローワ、私は逃げません」
サローワの表情は、悔しさと悲しさと
皇女への想いでなんとも言えない。
「エレノア様、どうか息災で。」
そう、言い残したサローワは
城の中に消えて行った。
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エレノアが馬車にゆられハグマレスト王国に
着いたのは城を出て3週間たっていた
「エレノア様、もうすぐハグマレスト王国の
サレマの町に着きます」
エレノアが皇都を出る時、付き従った
護衛騎士のカイバスが言ってきた
「わかりました。」
短く返事を返し、続けて
「貴方達は、ここまででよろしいです」
エレノアに付いてきたカイバス達は
驚きの顔をした
「エレノア様!」
おもわず声をあげてしまった、カイバスが
続けて何か言おうとして時
エレノアが手をあげて遮った
「カイバス、私は、もう皇女ではありません。
これからは、この国の民として生きるのですから」
なにか決意したような表情で
エレノアはサレマの町の入り口に向かって
歩き始めた。
カイバスはうつむき
その場に留まっていた。