第一話 原初の悪魔
「ここは…?」
俺は見覚えのない場所にいた。
そして、少し記憶も混乱しているようだ。
「確か俺は…」
そこでふと思い出す。
俺は18歳の高校三年生だった。
容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群のモテる三要素全てを持って生まれた俺は人生イージーモードだと思っていた。
実際、良い友達に恵まれて彼女もでき、毎日が楽しかった。
でもある日俺は放課後、友達に呼ばれて屋上に行くと、彼女が犯されていた。
「は…?」
「よう、来たか。優馬。こっちは楽しんでるぜぇ」
「やだ…助けて!優馬!」
「うるせぇ!黙ってろ!」
「いやッ…」
「何をやってるんだ…?」
「見ての通り、お前の彼女を犯してんだよ!」
「何を言っているのか…分からない。とりあえずやめないか?」
「はッ、彼女が犯されてるってのに冷静ぶってんのか?」
「俺が何したってんだよ、早く離せ」
「あ…?お前はいつも成績優秀で運動神経もよくて顔もいい。羨ましいよ。でもな、そんなお前が俺は嫌いだ!何もかもが自分の思い通りに行くと思ってんだろ?周りからチヤホヤされてきたんだろうが!俺はなぁ…そんなお前と友達になった時は吐き気がしたよ…でもこうして今はお前の彼女を犯してる。ハハッ!良い気分だぜ」
「うるさい…いい加減やめろって言ってるだろ!」
「うッ…てめぇ…それ以上動くなよ?動いたらこうだからな?」
あいつは懐からナイフを取り出し、彼女の首に突きつけた。
「いやぁ…助けて…優馬ぁ…」
「クソッ!彼女を離せ!自分が何してるのかわかってるのか!」
「あ〜あ、そう言うのうぜぇよな。正義感かしらねぇけどお前の力じゃ彼女は救えないぜ?お前は見た目だけのクズ野郎だからな!」
「クズはお前の方だろ!いいから彼女を離せ!」
「うるせぇなぁ。お前は何も分かってない。今俺の言う事が聞けないのなら死ぬぞ?」
「うるさい!彼女を離せ!」
「ふん、死ね」
「あ…?」
ふと腹の辺りから違和感を感じ視線を下すと自分の体にナイフが刺さっていた。
じんわりと熱い感覚がし、力が抜けていく。
「俺だけじゃ無かったようだな?お前が嫌いな奴は」
そして俺は抵抗できず床に倒れ込む。
彼女の方に手を伸ばすが、彼女もどこか諦めたような顔をし、喉元を掻き切られた。
「あぁ…あぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」
俺は血が出るのを気にせず叫んだ。
最後にあいつの足を掴み、睨んでやると…
「じゃあな」
あっさりと殺された。
――***――
思い出しただけで怒りが湧いてくる。
俺が周りを気にせず怒気を撒き散らしていると、
「お前さんよぉ、強そうだな?」
「誰だ、お前は」
「俺は原初の悪魔が一柱ルシフェルだ」
「原初の悪魔?何を言ってるんだ?」
「ん?お前もそうじゃないのか?生まれた瞬間に理解できるはずなんだけどなぁ」
「俺も原初の悪魔なのか…?」
「恐らくな、俺と同じ実体をもたない精神生命体だからな」
「精神生命体?」
「その名の通り体を持たない生物だ。今のところ俺達悪魔、精霊、天使がそうだな」
「ふ〜ん、で?何しに来たんだ?」
「おっと、そうだった。お前さんからすごい魔素量を感じてな。戦いにきたんだよ」
「ほう?俺と戦う?いいだろう、やってやろうじゃないか」
「そう言うの嫌いじゃないぜ、じゃいくぜ」
実体を持たないのにどうやって戦うのかと思ったら普通に殴ってきた。
魔素の塊が人の形をとっていてそれが襲いかかってくる。
俺はそれをひたすら避ける。
「なかなかやるじゃねぇか」
「その程度なのか?」
「ほう?言ってくれるじゃねぇか!」
攻撃速度、威力共にさっきとは比べ物にならないくらい上昇し、流石にきつくなってきた。
「そろそろ反撃を…」
俺もルシフェルと同じように魔素で形を作り殴っていく。
両者互角の戦いだった。
数日間戦い続け、結果的には決着はつかなかった。
だが、俺はルシフェルは信用できると判断した。
それはルシフェルも同じだったようだ。
「なぁ、俺には名前がない。お前がつけてくれ」
「任せてくれ」
ルシフェルはじっくり考えた上、最高の名前を授けてくれた。
「お前の名前はアラン。復讐もしくは憤怒を司る悪魔ってのはどうだ?」
「あぁ、最高だな」
突然、俺の体が光り出した。
「お、お呼ばれみたいだな」
「誰に?」
「人間にだろうな。俺達悪魔が誕生したから召喚魔法も出来たんじゃねぇのか」
「なるほど、じゃ行ってくるわ」
「おう」
――***――
「なんで…なんで…私がこんな目に…」
私は追っ手から逃れる為に振り向かずただ走り続けた。
私はこの国の第ニ王女だった。
と言っても、姉が一人と兄が二人いたから王位継承権は最下位だったわけだけど。
私は姉や兄達とは違って自分より国民を優先していた。
その為あってか、次期女王にと言う声が上がっていた。
それを姉達はよく思わなかったのだろう。
今私は姉達の刺客に追われている。
路地裏に逃げ込みなんとか逃げようとするがなかなか振り切れない。
そろそろ限界も近くなってきた頃、角を曲がった先は行き止まりだった。
「嘘…」
後ろを振り返った時には既に囲まれていた。
「へへっ、暗殺者にでも頼めばいいものを俺たちに頼むってのはこの娘を好きにしていいってことだよな?」
「あぁ、そうだろうなぁ」
「こりぁ…上玉だぜ…」
「い、いや…」
「おっと、大人しくしてな。じゃないとちと痛い思いをしてもらうぜ?」
「ひっ…いやぁ…」
腕を掴まれ、服を一枚ちぎられる。
手を振り解こうとするが、男の手を振り切れる筈もなく頬を叩かれた。
「痛い…」
「抵抗すんなよ?」
なんで?なんで私がこんな目に遭わなくちゃいけないの?国民を優先したから?王家にうまれたから?それとも一番下だから?
もう嫌だ…誰か
「助けて…」
その瞬間足元に大きな魔法陣が出現した。
「お?な、なんだこれは!?」
「おぉ〜これが人界か。で、俺を呼び出したのはお前か?」
「え…?あ、あなたは…」
「知らずに呼び出したのか?悪魔だよ、悪魔」
「あ、悪魔だぁ?聞いた事ねぇぞ、そんなもの」
「何だよお前、今この子と話してるんだけど?」
「う、うるさい!そいつは俺らのだ!」
「はぁ〜…雑魚のくせに何言ってんだよ」
「なんだと…?もうゆるさねぇぞ、覚悟しろ!」
腰につけた剣を抜き、斬りかかってくる。
だが、そのどれも遅く避けるのは簡単だった。
「お前、弱いからもういいよ。"死ね"」
剣筋がピタッと止まりそのまま倒れ込んだ。
「あ、兄貴!てめぇ!兄貴に何をした!」
「あ?殺したんだよ」
「こんな事して許されると思うなよ!」
「はぁ…お前まだ分かってないの?この状況」
「う、うるせぇ!兄貴の仇は…」
「"死ね"」
これでよしっと。
この二人だが、俺は魂を抜き取って地獄へ送っただけだ。
どうやら悪魔は魂の管理をする役割もあるみたいだ。
「あ、ありがとうございます。私はアリスと言います」
「俺は悪魔だ、呼ばれたから来ただけよ」
「あ、あの…悪魔とは一体…?」
「天使の対となる種族だ。天使はいい奴みたいだが、俺達は悪い奴だ」
「ふふ、自分で悪い奴って言っちゃうんですね」
「まぁいい、それより呼び出した理由は?」
「あの、それが…呼び出したと言うか呼び出せちゃったと言うか、自分でも分からないんですよね…」
「なんだそれ、話にならねぇぞ?」
「すみません…」
「心当たりとかねぇのか?俺が呼び出されたって事は怒ってるとか、復讐を望んでるとか」
「それなら姉達に恨みがあります」
「ふ〜ん、じゃそいつら殺すんでいいのか?」
「お願いします」
「兄弟殺すことに抵抗ないんだな」
「心配してくれるんですか?」
「うるせぇよ」
俺はアリスの案内の元、兄弟達の元へ向かった。
そこで王女だと初めて気付いたのだが特に興味などなかった。
「うそ…なんであなたがここに…?殺されたはずじゃ」
「なに!?なぜ生きている!」
「そんな…せっかく用意したのに」
全員が驚愕に目を開いている。
「やっちゃって下さい」
アリスからお願いされたしもう一仕事しますか。
「ククク…復讐の時間だ」