(短編)狂った羊と盲目の魔女
「ここは…まさか異世界転生…?」
俺は確か、トラックにひかれたハズだったが、
気付いたら見た事のない部屋のベッドの上で寝ていた。
隣にいたエルフの女が俺に話しかけているようだが
言語が全く分からない。異世界転生って普通、言語とか分かるようになるものじゃないのか?
俺はエルフの女から、ベッドから起こされて部屋から出た。廊下は華美な装飾がされている。
ここは、城か?そうして白い貴族服を着た男性の前に連れて来られた。そうか、こいつがこの国の王様か。
「俺の名前はショウダ・アキト、異世界転生者だ!言葉は通じねぇがこの世界に召喚されたからには、あんたの力になるぜ!」
勿論言葉は通じないが、王様は目を丸くして驚いていた。第一印象は最悪みたいだな。
鎧を着た衛兵に両腕を掴まれてひきずられるように暗い牢屋に連れて行かれた。
「いてて...異世界転生者ナメんじゃねーぞ!」
牢屋の見張り番に向かって叫んでいると、近くにいた
少女が話しかけてきた。
「あなたもここに連れて来られたの?」
「あんた、俺の言葉が分かるか!」
俺は、言葉が通じる嬉しさのあまり涙が出てきてしまった。
「わかるよ。私の名前はユナ、産まれてからずっとここにいるんだ。」
その少女はユナといい、目に包帯を巻いてボロ雑巾のような服を着ていた。
「他の奴らには言葉は通じないのに、なんでユナには通じるんだ...それにその包帯は...」
ユナは笑顔で答えた。
「私、産まれた頃から目が見えないから包帯をしているの。それに、私も貴方と同じ様に他の人の言葉は分からないよ。だから、言葉が通じる人がとても嬉しい!」
俺は、牢屋の中で時間を忘れるようにユナとたくさん話した。何日も、何日も
俺とユナが出会ってから何日が過ぎただろうか。
いつも通り、起きてから反対側の牢に向かってユナの名前を呼んだ。
返事がない。それにユナの姿もない。
「ユナ!ユナ!どこ行ったんだ!。おい看守、ユナはどうした!」
言葉は通じないが、焦った俺の姿を見て看守はどこかに行ってしまった。ユナはどこに連れ行かれたのか。
それを知るすべはない。
その日の夜、夢を見た。血だらけの服を着たユナが俺の名前を呼んでいた。
「アキト、助けて...痛いよ、怖いよ...」
叫びながら飛び起きた。ベッドと服は汗でびちょびちょだ。
ユナの居場所は分からない。だけど、ひどい事をされているのは間違いないはずだ。俺は牢屋から脱走してユナを助け出すと誓った。
「ユナ、必ず助けだしてやるからな。」
次の日の夜中、俺は看守の目を盗み牢から脱獄する事が出来た。居眠りをしている看守の首を後ろから絞め落とし、看守の持っていた木刀のような物を奪い取り一目散に走った。
「ユナを助ける。」
次々にエルフやゴブリン、ドワーフなど多種族の兵士が俺の前に立ち塞がるが、俺は木刀で制圧していく。
「タスケテ」「コロサナイデ」
今、日本語で助けを求める声が聞こえたような気がしたが関係ない。ユナを探すのが最優先だ。
ふと、ドワーフの腰を見ると拳銃のような物が見えた。
これは紛れもない、日本の警官が身に付けている拳銃だ。
「このドワーフ野郎、転生した警官から殺して奪い取ったのか、ありがたく使わせてもらうぜ。」
俺は拳銃を奪い取り、次々に兵士を殺して回った。
「ユナを助けるんだ!ユナを....タスケル。
邪魔者ハコロス」
〜〜〜〜〜〜
「臨時ニュースです。東京都の〇〇病院で、立て篭もり事件が発生です。犯人の名前は、
『ショウダ・アキト』さん20歳。数ヶ月前のトラックに跳ねられた所を搬送され、
この病院で治療を受けていました。ショウダさんは
跳ねられた時に頭を強く打ち、数百万人に1人が発症すると言われている。他の人間や建物がファンタジーの世界に見えてしまう、通称『異世界病』を発症し隔離病棟で治療を受けていました。なお、現在の被害者数は不明です。」
ユナヲタスケル。邪魔者ハコロス。
〜〜〜完〜〜〜
いきあたりばったりで、思いついたストーリーに主人公とヒロインの名前を決めて書き進めました。初投稿なのでイマイチかもしれませんが、ぜひ読んでみて下さい。