紳士な狂人Aと謎多き万能B
小説お題メーカーより、
【お題】手遅れになるほど狂った社会人と謎の多い友人が救い、救われる話書いて。
※ 救い、救われるは無視して仲の良さをアピールしました。
「〜〜♪」
適度な運動は心地好い。しかし日が落ちても汗ばむこの季節は、空調の効いた部屋でのんびり過ごしたいと考える人が大半だと思います。
予定外の行動のせいで余計な汗をかいてしまいました。肌に張り付くワイシャツが不愉快です。早くシャワーを浴びてサッパリしたいですね。
え?鼻歌を歌って御機嫌じゃないかって?……まあ予定外ではありましたが収穫が大きかったですからね。御機嫌にもなるというものです。
「……!」
なんということでしょう。ワイシャツに染みが付いていました。落ちにくいというのに。はぁ、明日はクリーニング屋に寄らないといけませんね。
カラスの行水ばりのシャワータイムを終えてサッパリさせて部屋に戻りますと、
「よっ、かたしといたぜ」
部屋を離れる前には居なかったはずの男がリビングで寛いでいますね。目元まで隠れるボサボサの黒髪に黒いシャツと黒いジーンズを身に付けた不審者ルックな男です。最近は外出時に黒マスクを付けているので、ますます怪しい人ですね。通報しておきましょうか。
「不法侵入者よ、ありがとうございます。その手際の良さは尊敬できますね」
「いつものコトじゃん。それに、それだけしかソンケーできないみたいな言い方ヒドくないか?ほら、ワイシャツのシミ抜きもカンペキだぞ!」
「おお、助かります。私がやると不思議と拡がってしまいますからね、とても有難いです」
「オマエは何事も大雑把すぎるんだよ!」
はーやれやれと大袈裟なジェスチャーをされると流石の私もイラッときてしまいますね。 捌きましょうか。そのままジーッと彼を見つめてると次第にブルブル震えてくるのがまたゾクゾクきますね。
「それにしても片付け終わるのが早かったですね。私のシャワータイム分くらいの時間で終わらせました?最短記録じゃないですか?」
「まあオレだからな!その辺は得意分野だ!今回はツテもあった分ラクだったよ」
「癪ですが認めましょう。貴方は顔も広い様ですからね。寧ろ貴方の得意分野でないところが知りたいのですが」
「ふふん、経験の差だな!オマエよりは大抵のことはできると思うぞ」
「そのどや顔が心底憎たらしい」
「ちょ、まて、声のトーンがガチじゃん。やめよ?ほら戦利品はいいのか?久しぶりだろ?」
「そう簡単に誤魔化されると思いますか、不法侵入よ。そういえば合鍵も渡してないのに鍵の掛かった部屋に入るのはどうやっているのでしょうか?前から気になっていたのですよ。観念して吐くと楽になりますよ」
「かんべんしてー。それに入り方はヒミツだって前にも言ったろ?メシのタネをホイホイしゃべってたらやってけないっての」
「それで納得するとでも?侵入されてるのはこちらなのですが?神出鬼没過ぎて少し引きます」
「ううぇ、ひ、引くなよ。オレのアイデンティティなの!そんなことより、今回はそこそこ良いエモノだったんだろ?早く堪能しなくていいのか?」
「はぁ、時間がないので誤魔化されてあげるとしましょう。明日も仕事がありますからね。調理時間は減らせません」
そうと決まれば下拵えを急がないといけませんね。何を作りましょうか……
この考えてる時間がひたすら楽しいのです。私の為の私だけの料理。お肉のエピソードを想像するのも中々良いですね。ああ、鮮明に思い出せる悲鳴。若くて柔らかいお肉なのでレアでいただくのもいいでしょう。
「〜〜♪」
とある町の一角で人がひとり消えました。しかしニュースにならず誰も気付かず噂にすらならず、ひっそりとひとり消えました。
最後まで有難うございます( ˙꒳˙ )ゝ