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6〈アメリア〉

学園には同じ制服をきた子達が沢山いてみんな楽しそうだ。

私も緊張しながらその中を歩いている。

お友達ができるといいな。放課後にお話をして私はおしゃれに疎いから教えてもらったりして。一緒に勉強をしてわからないところを教えあいっこしたり。

想像するだけでわくわくしてにやける顔を抑えて教室へと向かった。


私には友達と呼べる子が1人だけいた。街で暮らしていたころミーちゃんという可愛い女の子だった。

まだ母が食堂で働いている頃日中1人だった私に声をかけてくれたのがミーちゃんだった。

ミーちゃんはお人形遊びが好きでお人形を持ってなかった私に貸してくれる優しい子だった。

でもメルちゃん達に誘われてるからアメリアちゃんも一緒に行こうとミーちゃんが言ってた日、全てが変わってしまった。私を連れて行ったミーちゃんを見たメルちゃんと周りの子は鼻で笑って

「私はミーを誘ったんだけど。なんでついてきちゃったの?あんたみたいな最低女の子供と遊んだらお母様に怒られちゃうわ」

それを聞いて何も言えなかった私とメルちゃんを交互に見て困った様子のミーちゃんに

「ねえ、ミーも。あんたもその子かばうならもう一生あんたとは遊ばないしお母様にあんたと友達やめたって言うからね」

ミーちゃんが泣きそうな顔してこっちをみてごめんねっていってメルちゃん達の方に駆けてった。

メルちゃんはミーちゃんをよくやったわねって褒めながら私を見て笑ってた。


悲しくて悲しくて家に帰って大声で泣いた。

泣いても泣いても涙は止まらなくて母が帰ってきて抱きしめてくれたらもっと涙がでた。

どうしたの?優しく聞いてくれる母に理由は言えなかった。その日からミーちゃんが来てくれることははくなった。

ミーちゃんを責める気持ちはない。仕方ないことだったお偉いさんの娘のメルちゃんに逆らうなんてできないことだ。


あの時は平民なのに私の父親が貴族なことが周りに受け入れられなかったんだと思う。

でも今は私が貴族の娘であるということは国に認めてもらえたってお兄様も言っていた。国から認めてもらえたなら貴族の子達も私を仲間にいれてくれるんじゃないか。お兄様も間違いなく家族として私を大切にしてくださって私だってお兄様が大切で私はあの家の家族だって信じられるから。


先生達からの説明が終わった時私は緊張しながら前に座っていた令嬢に話かけようとしていた。彼女は私と同じ家格の男爵家の娘だ。私から話しても問題はないはず。

「あの、私アメリア・メイスと申します。よろしければ少しお話をしませんか?」

彼女はそれを聞いて微笑んでくれた。私もうれしくて笑顔が隠せない。

「ええ、嬉しいわ!私はー…」

「あら、噂は本当だったのね。その髪色をつかってオルセード様の異母妹として下賎な血が入り込んだって。嫌だわ、いくら母親が最低だったとしてもそれを踏み台にして貴族になったつもりで笑ってるなんて。あなたも気をつけなさい。彼女は母の死を利用するような方。私たちが注意しなければあなたが利用されてしまうところだったのよ」



彼女達は立ち去り、話しかけた令嬢も帰ってしまった。私を気遣うような目線をくれた。それで充分だった。

彼女はニケル侯爵家のユリエラ嬢だ。このクラスで一番高位な人沢山の令嬢が周りを取り囲んでた。彼女達が去っても私の体は動かず固まったままだ。どうやって動かせばいいかわからなかった。

平民も貴族も何も変わらないんだ。…違う。私は結局平民にも貴族にもなれない存在なんだ。

母も、そして父も周囲からすれば間違ったかもしれない。でもそうしなきゃ私は生まれなかった。

父も私たちを気にかけてくれたという、何より母は私を愛してくれた。その母の死を利用しただなんて。

「期待なんてしなきゃよかったなあ」

溢れそうな涙を引っ込めてうまく笑えた。そう思えた。


×××


数日間の間はお友達ができないだけで意外と学園生活は良いものだった。嫌味なんて聞こえないふりすればいいことだったしなにより授業がすごく楽しかった。しかし入学して2日目に行なった学力テストの結果が張り出された瞬間平和な時間は終わった。なんと女子の中で私が一番だった。見た瞬間は嬉しかったけどその後がすごかった。なぜ、どうして。そう考えた人たちが一つの結論を導き出した。それは私がある先生に色目を使ってふしだらに迫って問題を先にみていた。ということだった。それはすごい勢いで噂になった。

あまりに根も葉もなさすぎて笑った。入学したその日に先生を籠絡できるなんて私もすごいなあなんて思ってたらついに先生に呼び出しを受けたのだ。


そこには教頭先生と私に迫られたとされる学年主任のケント先生がいた。

ケント先生はいつも白衣を着ていながら髪はボサボサでたまにヒゲも生えてるが男らしくてかっこいいと男性にも令嬢にも人気の先生だ。


「まあ座ってくれ」

「失礼します」

「いや、今回のテストの件でな、俺に迫ってお前が先に問題を見ていたってここにいらっしゃる教頭先生に直訴した生徒がいたらしくて。事実確認をって教頭がおっしゃるもんだからさ、こうやって来てもらったんだ悪かったな」

「私もそんな事はありえないと思うのですが、念のためです。話してください」

教頭先生の言葉に何をどう話せば良いかわからなくて声が上擦ってしまう。

「はい。私は先に問題は見てないです。先生とも話すのはこれが初めてです」

「その通りです、教頭。実は入学初日に迫られたことは本当なんですよ。誰にもとられたくないって迫って来たのはこのアメリアさんとは別の子で。でもその子の未来もあるから誰にも言わなかったら今回こういう話になってて俺も驚いているんですよ。噂のはじまりがその子なのか違うのか俺もまだわからないんですけど。アメリアさん悪かったな。俺がモテすぎるのが原因だ」

悪い顔して笑う先生を私も教頭も呆気にとられてしまった。

「…事情はわかりました。アメリアさんはこれからも勉学に励んでくださいね」

「はい」


噂が蔓延した時、勉強を頑張っても文句言われるのかと手を抜こうかなんて思いついた時もあった。でもオルセード兄様を思い出すとそんなことはできなかった。そして今教頭からの言葉を聞いて決意を新たにする。


結局噂のもとはわからなかった。迫った令嬢は否定したらしい。真相はわからないし、先生達以外私を疑っている人達はいる。でも私がやるべきなのは手を抜いて目立たなくなることじゃない。実力だとわかってもらえるまで勝ち続けることだ。

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