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23〈アメリア〉


「おい!終わったぞ!不可侵条約が結ばれた。殿下達はもうすぐ王都へ戻ってくるらしい!」


ディル先生が入ってくるなり大声で発したその言葉はずっとずっと待ち望んでいたもの。

嬉しくて嬉しくてもう涙が止まらなかった。

ディル先生とオルセード兄様はもちろん研究員皆で喜んだ。

戦いを目にすることはないが自分たちのつくる薬が戦さ場でつかわれているという事実は重くて皆を鬱屈させていた。傷を負った人々のためにできることが沢山あるだろう。


×××


少し浮き足立った気分も落ち着き日常が戻ってきたころに城にて戦いを労うための宴が行われるという知らせが研究所にもたらされた。私たちの新薬研究が国に褒賞されるようだった。それとは別にオルセード兄様にも手紙が渡されていた。

褒賞といってもあまりピンとは来なくて城で行われる舞踏会や宴の類にもあまりいい思い出はないが今回は別。一目でいいから殿下達の無事のお姿を見たい。はっきりとこの目で。

宴の当日は研究所も周りに倣ってお休みで、兄様と私も準備だ。今日は陛下の前に出る予定なので適当にはできない。

通いの方に手伝ってもらう。私はなかなか着ない兄からもらった大切なドレスに着替えようとしていたら。


「わー!ちょっと待って!ちょっと待って!脱ぐの一旦やめてね」


兄様が突然入って来てぎょっとしてしまう。服はまだ着たままだけど恥ずかしかった。


「ごめんね。実は今日はアメリアにこのドレスを着てもらおうと思って」

兄の声でロディさんが一着のドレスを持って入って来た。

それは薄紫の布地が丁寧に縫われたドレスだった。刺繍などはない飾らないそのドレスはとても綺麗で美しかった。


「とっても素敵です。オルセード兄様。あの、なんていったらいいか。う、嬉しいです。ありがとうございます」


ドレスに見惚れて時間がかかったが感謝の気持ちを伝える。


「あ、それ僕からじゃないよ。今日の僕の立ち位置はさながらお姫様に変身させる魔法使いってところかな。なんて贈っていただいたものを渡しただけだから感謝はその方に伝えてね」

「これはどなたからの贈り物なんですか?」

「今日行けば教えてもらえると思うよ」

「えぇ!気になります…」

「ハハハ!さあ僕は出て行くから早く着替えてみせて」

出て行く兄様とロディさんを見送りながら。ドレスを贈ってくださるなんて誰だろう。断れない縁談かなにかなのかしら。

私にとって紫は大好きな色。殿下の瞳の色だから。でもこのドレスは色が淡いので誰かに指摘されることもないだろう。単純な嬉しさも残しつつ贈ってくださった方が見当もつかないまま準備に取り掛かった。

普段仕事にかまけて蔑ろにしてた髪や顔を手入れされると、自分の中にいる女の子の私が大喜びして自然と顔もほころんだ。


「とってもよく似合ってるよアメリア。さあ行こう」

優しく笑ってくれる兄様。熱心に研究している兄様もかっこいいけど着飾っている兄様も素敵だ。兄様といると守られているな。って心から安心して息をすることができる。

オルセード兄様が決めたのなら迷わずその誰かと結婚する。そうは決めても憂鬱になってしまうわがままな私。こんなに兄様にも男爵家にもお世話になってるのに。しっかりしなくちゃ。

今日は殿下の無事な姿を見られるはず。そう思えば色んなことは瑣末なこと。オルセード兄様のおかげで戦いが終わるまで結婚もせず殿下のことだけ考えられた。今日話すことはできないだろうけど私もこんな綺麗なドレスを着ているから少しくらい目が合ったらいいなあ。なんて欲張りなことまで考えながら兄様と共に馬車で城へと向かった。


ここまで読んでくださってありがとうございます!

これからお城のパーティーの場面なのですが「宴」としてあくまで異世界の催し物として歴史上の舞踏会などのしきたりや流れとは全く別物として読んでいただけたらと思います!(これまでも好き勝手書いてきちゃって今更かもしれませんが。)引き続き読んでいただけたら嬉しいです(^ ^)!

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