17〈イリス〉
殿下との婚約解消から2年近く経ち、私はもうすぐ学園を卒業することになる。
そして今日は新しい婚約者になる方との顔合わせだ。
新しい婚約者はこの公爵家の親戚筋の人で屋敷には来たことがないがずっと父のそばで働いていたそうだ。
つい先日ウィルフレッド殿下は辺境伯の後継に指名された。この国を守る辺境では後継を血筋で決めない。その頃には私は殿下が私と結婚してなにを成し遂げたいかを父から聞いていた。そして婚約解消した今でもその協力体制は変わらないという。そのひとつがエドワード殿下の婚約だ。北の大国ノイス国の王女が我が国の王子と結婚する。一見友好的にみえるノイス国にも好戦派が多くおり、この国と隣国との共倒れを狙っていたが一向に訪れないその時に益々動きが活発化していた。そんな中エドワード殿下と王女は手と手を取り合い無益な戦いを望まずこの婚約を画策している。我が公爵家は祖父と父が率先して祖母がノイス出身であることからも彼女を支える役目を得て前からずっと内密に動いている。私の新たな婚約者もその1人であるらしい。
私と殿下が婚約解消できたのも国もそして父達も平和と公爵家の名誉回復は望んでいたが後に公爵家が王妃と非常に近い存在であり、且つ当主は元王族であるとあれば要らぬ不和を起こしてしまうと危惧していたからだった。
本当に何も私は知らなかったんだと改めて思う。
正直ゲームの成り行きを知っているから自分こそが一番この世界をわかっている、そんな驕りがあった。
全てが違ったのだ。殿下もアメリアも他の人だってひとりにいろんな思惑や考えがありこの世界を生きている。それをなにも見ていなかった。
婚約者はクリスと名乗った。歳は15も離れてあまり特徴もないその風貌に私はゲームだったらモブだろうと考えて、この後に及んで愚かな真似をする気かと心の中で自分を叱責した。癖は中々ぬけないがもう間違えたくはなかった。
「イリス嬢。これからどうぞよろしくお願いします」
そう言われて幼い頃の殿下との出会いがよぎった。彼があの時何を考えていたのかもうわからない。だけどこの人のことはわかりたい。理解したい。それは2人の協力なくしてできるはずがない。
愛されたい。大切にされたい。そればかりで自分が愛するなんて考えられないそんな自分はもういらない。
「こちらこそよろしくお願いいたします」
緊張しながらも礼を返すと。彼が笑ってくれた。それが何故か泣きたくなるくらい嬉しくかった。
クリス様は笑うと右頬にえくぼができる。こうやってひとつずつ関係をつくっていきたい。まっすぐに彼を見つめた。




