風の中にきっといる
「フニルー! 朝だよー!」
僕が被っていた布団を勢いよく取り上げられた。
……寒いし眠い。……それに誰だよフニルって……
僕が目を半開きのように少し開けると少し不機嫌そうに腕組をしているエレナさんが立っていた。……そういえば昨日早朝に……あぁ、思い出した。
「…ぉはようございます…」
「ほら急いで急いで! 早くしないと時間が過ぎちゃうよ!」
僕はエレナさんに背中を押されながらいそいそと家を出ようとした。どうやらエルフ達は外で祈りを捧げるようだ。……正直朝が弱い僕はちょっと挨拶をすることに若干の後悔を覚えている。不謹慎だとは思うが。そんなことを思い、目をしょぼしょぼさせながらドアを開けて外に出た。
するとどうだろう。さっきまで考えていたことが全部吹っ飛ぶほど……この森の朝の姿が美しいと思った。
「ほらフニル! ここで片膝を立てて。 手はこういうふうに両手を合わせて。」
そう説明するとエレナさんは目をつぶり静かになった。
僕も目をつぶりお祈りを捧げなければならないのだろう。しかし、生まれてから僕の自宅から1歩も出させてもらったことも無い。それに朝が弱い僕には。この光景を見ないという選択が出来なかった。
朝の柔らかい太陽の光が差し込み、耳を澄ますと聞こえる鳥の声。この森は昨日の昼や夜の姿とは全く別の姿に変わっていた。
……たかだか景色って思ったけど。……なかなか侮れないなぁ。
僕がそんな感傷に浸っているとヒュウと風がふいた。どこかに光るものを運んでいるのか、その風はキラキラと輝いていた。
…そして、その輝きは風と共にどこかに行ってしまった。
「ねぇ! フニル見た!? きっとお父さんとお母さんが会いに来てくるたんだよ!!」
エレナさんは目をキラキラさせて喜んでいた。…もしかしたらエルフ達はこの朝の森の光景とキラキラと光る風を知っているから朝にお祈りを……いやもしかしたら本当にエレナさんの父と母が来たのかもしれないな……
僕は自分でも珍しいと思うが随分と詩的なことを考えてしまった。
「……あの、エレナさん」
「ん? なになに?」
僕達は朝のお祈りを済ませてから家の中に戻って朝食の準備を一緒にしていた。
「…朝呼んでいたフニルって…?」
「ああ! あれ? 今日から人間達の街に行くしさ。 それにいつまでも魔王様って言うのも堅苦しいし、ファーフニルって長いじゃんだからいいかなって」
そう言ってエレナさんはヘヘッと言って笑った。まだ1日しか一緒にいないがとても機嫌が良さそうに見える。……きっと朝に良いものをみれたからだろう。
「……分かりました。 今日からフニルって名乗ります」
「おお! そうすると私が名ずけ親だね!」
エレナさんは本当に機嫌が良さそうに朝食が並べられた机の前の椅子に座った。
今日僕は。この朝食を食べ終わったら初めて。……人間の街に行くのだ。
ここまでを1章とします!
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