初クエスト達成
僕達はゴブリンから逃げるために全速力で逃げた。まぁエレナさんに限っては途中から見えなくなってしまったが……本当に足が速すぎる……
僕は息が上がりながらも走るのを辞めなかった。そのおかげか街の出入り口に行きより全然早く着くことが出来た。出入り口の前でエレナさんは落ち着かない様子で待っていた。
エレナさんの手には人一人分ぐらいの大きさがあるでっかい両手剣を持っていた。そしてエレナさんは僕にきずいたのか両手剣をブンブン振り回していた。
「あっ! 良かった無事だったんだ! 今からフニルを探しに行くために家までこの剣を取ってきたんだ!」
……いや。そんなおっきな剣、忘れないでよ……おかげで死にかけたじゃないか。
とはいえ結果良ければなんとやらだ。道中で二、三個ぐらい落としたけどリカバ草はある。早くクエストを済ませよう。
「……ご心配をお掛けしました」
「うん! ならギルドに行って報告しよっか」
日は落ちてきて辺りはまだギリギリ街灯を使わなくてもみえるぐらいになっていた。それに伴いお祭りムードだった街もすっかり静かになってお通夜のようになっていた。
本当に人間とはつくづく分からないものだな。まぁ関係ないけどね。
僕達はギルドに着くまで今日の話をした。……まぁ傍から見れば一方的に話しかけられているように見えるかもしれないが……コミュニケーションのとり方など人それぞれだから気にしないで欲しい。
「いやーでも凄いね! 急に魔法なんてつかえるものなんだね! あれのおかげで何とかなったよね」
いやー、褒められるのはやっぱり嬉しいな。……と思ったらもうギルドの前だ。
「よし! じゃあ報告して早く帰ろ」
エレナさんはそう言ってまたドアを勢いよく開けた。時間も時間なので酒場のようなところに多くの人がいた。そして、もれなく全員の注目の的にエレナさんがなっている。…………この後に入りたくないな。
「おー! エレナちゃんじゃん! 今日はギルドに来る日だったっけ?」
酒場にいた随分とチャラそうな……僕の苦手なタイプがエレナさんに話しかけてきた。チャラそうな彼がいたテーブルには他に3人いたが全員男でチャラそうな集まりだった。まぁ類は友を呼ぶとも言うからな。……はぁ。かかわりたくないや。
「おー! こっちで飲もうよ!」
「いいじゃんかよ!」
などなど、ナンパし始めている。……どうしよう。このままだと一向に話が進まない。
「いやー。 ご飯食べたいのはあれだけど……今日は先約があってね! フニル行こ!」
そう言うとエレナさんは僕の手を引っ張って無理やり話を遮って受付の所に向かった。話を遮られたナンパ男達はもちろんいい顔をしていない。それどころか僕に殺意をむけてきてるような……はぁ、先が思いやられる。
「あっと……受付の……受付の人! クエスト終わらせてきたよ!」
「はい。 受付のリナです。 お疲れ様でした。 それでは依頼品を回収します。」
僕はリナさんにリカバ草を15個渡した。
「はい。 ……ちゃんとリカバ草ですね。 やはり魔術師の才能があるみたいですね。 どうでしょう? 魔術師として登録されますか?」
「……はい、お願いします」
ついでにリナさんがエレナさんとのパーティ設定をしてくれた。とはいえ僕のランクはFなので一緒に行けるクエストには限りがあるが。
「余ったリカバ草はこちらで買い取ることも出来ますがどうしますか?」
「……お願いします」
そう言って僕は残りのリカバ草をリナさんに渡した。すると買取価格は10本1ゴールドで合計2ゴールドにしかならなかった。
「ではこちら銅貨2枚の2ゴールドになります。それとクエストクリア報酬100ゴールド、合わせて銀貨1枚と銅貨2枚になります」
クエストのクリア報酬とリカバ草の代金が割に合わないが……これは言うべきなのか……まぁ黙っておこう。
「……ありがとうございます」
「それでは本日はお疲れ様でした」
そう言ってリナさんはぺこりと頭を下げた。隣を見るともれなくエレナさんは立ったまま寝ていた。
「……エレナさん、帰りますよ」
「あっ! 初めて自分から喋りかけてくれた!」
そうするとエレナさんはとても上機嫌そうになった。
「それじゃ、帰ろっか!」
そう言ってエレナさんは僕の手を引いてギルドを出た。……先程のナンパ男達に睨まれていた。はぁ、厄介事が増えそうだよ……それにあの道を帰るのかぁ。
作中秘話
ここまでを2章とします!
もはや秘密でもなんでもないって?
そんなにこの作品に秘密は無かった……