実際戦闘なんてしたくないよね
初の戦闘描写が入ります!
僕は今ゴブリンに襲われそうになるという、非常にたいへんな事態に襲われている。
「いい?フニル。 私は魔法をちゃんと使えるわけじゃないからあれだけど……確かイメージが大切だって聞いたから……何とかなるよ!」
なんと無責任な……あーもうやるしかないか。えぇとイメージだっけ?闇、闇……
時はちょっと前に遡る。
「フニルー! このぐらいでいい?」
エレナさんの手を見てみるとリカバ草が20本、雑草が50本ぐらいあった。農家だったら大活躍するかもしれないな。
「…………これだけあれば大丈夫ですね。あっそれは雑草なんで捨てちゃって下さい」
魔力が通ったものを見れる魔法か……これはなかなか便利かもしれないな。大魔王から貰った杖を探す時に便利だろうな。
「よし! じゃあ帰ろっか」
この時はとても順調だった。とても初めてとは思えないぐらい。しかし、問題は帰り道におこったのだ。
「いやー随分と収穫したね!」
クエストでの依頼量は15本だったが、僕達は35本も取っていた。一応余った素材はギルドの方で買い取ってくれるらしい。まぁリカバ草は魔力が通った雑草だから大した額にはならないと思うけど……あれ?あの動き続けないと生きていけないんじゃないかと思っていたエレナさんが急に止まった。
「フニル……あそこ、みてみて」
エレナさんが指を指す方を見るとゴブリンが約2、3体いた。僕は初めて見るがゴブリンは知性が少なく魔族相手にも突っかかっていくそうだ。
「このまま進むと多分戦闘になるかも。静かに行くけど……心の準備はしといてね」
……僕達の間は嫌な緊張感と静寂に包まれた。エレナさんは戦士の癖に剣を家に忘れてくるなどという失態を犯している。それに僕は大魔王に貰った杖を家に置いてきているので唯一ちゃんと使える"怠惰"の魔法が使えない。この状況でゴブリンに襲われては、最悪死に至るかもしれない。そんな緊張感があった。
「……エレナさん。一応僕の護身用のナイフ、渡しておきますね」
エレナさんは何も答えずにただ頷いてナイフを受け取った。いつもの性格上らは考えられないほどの真剣な表情に僕はちょっと気圧されそうになった。
――パキ
「あっ」
エレナさんの間抜けそうな声が聞こえた。
前言撤回しよう。エレナさんはどんなに真剣な表情でもエレナさんなのだ。そう。落ちてる木の枝を踏んで音を出すという中々のミラクルを起こすのだ。
枝を踏む音でゴブリン達はこちらにきずき、ゆっくりと近ずいてくる。ゴブリン達はもれなくゴツゴツとしていて頭を殴られたら即死するんじゃないかと思われる棍棒を手にしている。
「ニンゲン タベル」
「ニンゲンノ メスダ メスダ」
「タ ベテ ツ ヨクナル」
さてどうするか…僕達にもう残されている時間は余りないな……
「ねぇフニルって攻撃系の魔法が杖なしで使えたりする?」
……僕は一応闇魔術が使えるらしい。ギルドの水晶のスキル欄に闇魔術と書かれていたから使えるのは知っている。だが、知っているだけで使ったことは無い。当然使い方も知らない。
「…………エレナさんって魔術を使う時、どういう風に使いますか?」
「魔術……そうだね。私の場合は頭の中で魔術の効果のことをかんがえるかなぁ……」
なるほど。闇魔術……闇って言ったら何が浮かぶんだ?…………なんも浮かばないな。
「グゲゲ オンナァァ!」
僕が闇魔法のことを考えていると、真ん中のゴブリンがエレナさんに向かって棍棒を振り上げながら突撃して行く。そしてエレナさんの頭に向かって棍棒が振り下ろされる。
しかし、エレナさんは僕が持っていた護身用の小さなナイフで軽く棍棒をいなす。そして、棍棒が空振りに終わり体制が崩れたゴブリンの腹に向かって激しい回し蹴りを御見舞させる。
す……すげぇな。エレナさんってこんなに強いのか……
回し蹴りを食らったゴブリンはだいぶ奥まで吹っ飛んだ。そのまま意識を失ったかと思ったら、苦痛に抗うように呻き声を出しながらも立ち上がった。
「いい?フニル。 私は魔法をちゃんと使えるわけじゃないからあれだけど……確かイメージが大切だって聞いたから……何とかなるよ!」
なんと無責任な……あーもうやるしかないか。ええっとイメージだっけ?闇、闇……いや、やばいななんも浮かばないな。まさしく一寸先も闇ってやつ…………あっ闇って言ったら何も見えないってイメージがあるな。
「オマエ! オマエェェェ!」
「ヨ クモ ナ カマヲ!」
「コロス コロスゥゥゥ!」
やばい!ゴブリン達が走ってこっちに来る。……よし、覚悟をきめるか。
僕はエレナさんの方を見る。……覚悟を決めているからか少し笑っている。このエルフ、本当は鬼とかなんじゃないか?もしくは戦闘民族かなんかか?
いやいや、気を取り直すか……闇、一寸先は闇。……そう視界を奪う……これだ!
僕は右の手のひらをゴブリンたちの方に向ける。そして頭の中で何度も視界をうばうという単語を繰り返した。
「グギャ? ココハ?」
「イキナリ ヨルニナッタ?」
「ミエナイ ミエナイ」
「フニル? もしかして魔法使った?」
「……使えたみたいですね」
「そっか……うん! 私が教えるのが上手いお陰だね!」
エレナさんは自慢げに、そして得意そうに僕のことを見てきた。まぁ教え方は何より……まぁ喜んでいるんだったらいいか。それより早く逃げないとな。
「よし! じゃあフニル! 今のうちに逃げるよ」
そう言ってエレナさんは走り出して行った。
僕も全速力で走ったが全然エレナさんに追いつくことが出来なかった。やっぱり速いな。僕が遅いわけじゃないよ……きっと。
僕は初めて戦闘をした。まぁ悪条件の中よく頑張った方だと思うよ。
作中秘話
戦闘描写をする時は剣道をイメージしながらやることにしました!