恋の色 壱
好きな人がいた。
いつも気がついたら目で追っていて、なんて恥ずかしいことをしているんだろって思ったけれど、目があったとき、私がテンパってると、彼がニコッと笑いかけてくれて、もうどうしようもないくらいの嬉しさと、もっと一緒にいたいっていう欲望がぐるぐる渦巻いて。
私は、
私は。
彼を守るために、死んだんだ。
昼休みのちょっとした時間。
「理夢は好きな人いる?」
「…んー。私、悠里君がいいかな…」
「悠里!?あんな奴好きになるなんて、理夢は物好きだねぇ〜」
「なんでー?かっこいいじゃんっ!」
いつもみたいに友達の優奈と恋バナ。私が好きなのは悠里くん。優奈の幼馴染らしくて、この間のバレンタインデーも優奈のお陰でチョコを渡すことが出来た。
「悠里、理夢のこと気になってるみたいだし、付き合っちゃいなよ!」
「もー!嘘とかいいから!期待させないで!初恋は実らないんだし…」
「いつまでそんな初々しいこと言ってんの?そんなもん最近の女子はいってないって!」
「えぇ?…優奈の最近、わかんないんだけど…」
楽しくて、休み時間が終わる時間がくるのが嫌で嫌でたまんない。
「よっ!」
「おっ、きたか悠里!」
「ゆっ、悠里くん…」
悠里くんは、なんだか何時もキラキラしてる。優奈があんな奴って言っていたけど、結構悠里くんはモテてる。クラスでモテモテの鈴ちゃんは、悠里くんが好きだ。あの子は何時も可愛くて、非の打ち所がない凄い子だと思う。
「なんだよ、恋バナ?俺も混ぜてー?」
「はぁ?きっもいなー!幼馴染として言うけど、それを女子に言うなってのっ!」
「ははっ!なんだよ、それー!」
二人は幼馴染だけに、男女の境がないみたいに話も弾むし、何よりも悠里くんはとっても楽しそうに笑ってる。私が話しかけたときとは違う笑みに、どうしても優奈にいいなって気持ちを抱いちゃう。
「女子って言えばお前じゃなくてやっぱ理夢じゃね?」
「!へっ、あっ、えっ、!?」
「理夢ー!そんなテンパらなくて良いから!おい悠里!」
「やぁっぱりなー!俺の知ってる女子はそんな言葉使わないしなー?」
「あぁ?なに言ってんだ悠里風情がー!」
「あっ、あのっ!」
「ん?なに、理夢。」
「ゆ、優奈は、とっても可愛いし、ちゃんと女の子だから、え、えっと…あの…」
言葉が続かなくてもごもごしてると、優奈がキラキラした目で、私の名前を呼びながら抱きしめた。いきなりきた優奈に少し体勢を崩しかけたけれど、なんとか持ちこたえた。
「理夢!理夢ー!やっぱり理夢はかっわいいー!」
「優奈!?」
「優奈サーン?理夢困ってますけどぉ〜?」
「うっさい!これは私の萌えなんだよ!可愛いんだよ!お前には分かんないのかー!?」
「はぁ!?べつに、可愛いとは、思うけど…」
その一言に、私の目が変わった気がした。少し小さな声で言われた言葉に、天にも昇るような心地になり、心がふわりとあったかくなる。
「…ありがと」
思わず口から出た言葉に、少し恥ずかしくなったが、まぁ良いかと思うと、優奈がほわわぁっと蕩けるような笑みを浮かべ、悠里くんはびっくりしたのか、大きく目を開き、なんだか頬が赤くなっていた。
「理夢。」
「!な、なに?悠里くん。」
「お前、そう言うの、他のやつにもいってたりする?」
「他のやつ…?いって、ない、けど…」
「そ?なら良いけど。」
「あ、理夢、悠里!先生来ちゃう!席つかなきゃ!」
「あ、うん!」
ぽつぽつと時間が過ぎていく。もう、中学三年生。受験を考えなければいけない私は、偏差値で考えて、45の葵高校に行くことを考えていた。45なら、私の頭でも十分だし。…でも。三年間の恋は、あと二ヶ月で終わることが決まっていたようだ。私は葵高校。優奈は音楽の道を目指しているから、有名な音美高校に入ると嬉しそうに言っていた。そして、悠里くんは、東京のここから遠い、地方の高校に行くらしい。これは親の都合らしくて、悠里くんが行くのはどうしようもならないのだと、そう誤魔化し続けた。
「理夢ー!一緒に帰ろっ!」
「あ…うん!」
とっても楽しそうに話す優奈を見て、いいなぁと思わず口に出しそうになり、ぐっと堪えてそうだねって相づちをうった。
「理夢、明日、卒業式だね。」
「へ?…あ、そう、だね。」
「理夢、悠里に告っちゃえば?」
「…うえっ?む、無理っ!」
真剣な表情で私を見て言った言葉に、つい反射的に言った否定の一言に、優奈は泣きそうな顔になった。
「理夢!」
「っ!」
「理夢、いいの…?もう、これでなんにも言わなかったら理夢の初恋終わりなんだよっ!?」
「ゆ、優奈に何がわかるって言うの!?」
「分かる。」
「えっ…?」
「私だって悠里が好きだった!いっつも目で追っかけてたし、でも、でも…」
「でも…?」
「私は、幼馴染の壁を超えられなかった。だから、理夢には、初恋を叶えて欲しい…私の、たいっせつな、親友には…」
ぽろぽろ涙を零しながら泣く優奈を、私は暫し硬直して眺めて、はっとして駆け寄って、ありがとう、ありがとうと優奈に心を込めて言った。
「明日の卒業式、十分に楽しんじゃおうっ!」
「…うんっ!」




