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アミューと七色の山  作者: アミュースケール
第一章 フィリアムの赤い山
6/22

【1】

いつまでも、この陽だまりと木漏れ日のなかで、木の根を枕にして寝っ転がって、ただ時間をもて余していたい。成績、競争、人間関係、SNS、進路、あらゆるしがらみや雑音から離れられた。なんて居心地がいいのだろう。


僕が、僕を感じられる。


誰かが言ってくれた言葉の種々を静かに思い返すことだって、出来る。(ちまた)で起きたことやテレビのニュースで流れていた事件の因果関係を自分なりにちゃんと消化し、観想することだって。また、それらへの祈りを、勉強してきた今では、何か大きな存在に捧げることだって、出来る。


最近こういう時間を作って、いなかった…。


僕だけが持っている、僕の心の声。

僕の呼吸とリズム。


夢の解明ばかりに気を取られていて、あまりにも短期間の間に、目に映る世界が変わり過ぎてしまったから、一度、こういう、ゆとりのある時間が、今の僕には、必要なんだ。鉄は熱いうちに打てと、いうけれどもね。かえって、こういう自然体の方が、夢の解明だって、はかどりそうだ。回り道、回り道。


振り返ってみると、3ヶ月前に比べれば、なにか見えてきたような、気がする…。


この3ヶ月間で感じてきたことや、学んできたことの内容は、たとえ頭で分かったとしても、実際にそれを生きられるようになったり、身についてくるのは、長い人生の年月が必要だろう。14歳の僕では、まだ想像すら出来ないけど。


一昨日はそれにしても、何か、大きな存在の息吹きを感じた1日だった。


ヒロキが言ってくれたことや、部屋で一人本を読んでいて、発見したことが、何か、大きな、ことのように感じたのは、確かだった。大きな大きな船に乗ったような気分だった。この自身の中にある、確か、という感覚さえ疑いだしたら、またそれは懐疑的過ぎて、ヒロキが言ってくれたことを、大切に出来なくなってしまうから、いきすぎなんだろう…。命を大切にね…。


そう、自身を超えた、何か偉大な存在を感じざるおえなかったんだ。


これから先、その存在と意識的に交流するも、しないも、僕の意志や選択のひとつひとつ次第。



うんっ?何かが、消えたり、現れたりしながら僕に近づいてくる。なんだろ…。あれは…、あれは。


「ワタル…、久しぶり…」


ワタルは意外にも、平静としていた。



「待っていました」


「ワタル…、変わったところと、変わってないところがあるね…。変わらなくていいところは、変わってないところ…。ワタル…、あの方が呼んでいる…、ワタル…、着いてきて…」


「あの方…?」


寝そべっていた体を起こして、立ち上がり、赤い妖精のあとを追いかけて、神秘なる広大な草原を飛んでいった。


妖精は、次元が変わるように、姿を消したり、現れたりしながら、ワタルを案内した。


ワタルはだんだんと実感が湧き、胸が踊りはじめた。ついに、念願の赤い妖精との再会を果たしたからだ。


それから、しばらく飛んでいくと、何かが、見えてきた。ワタルは、その場で止まった。


「あれっ?」


だんだんと左右から近づいてくる。近づいてきて、その正体をみるなり、ワタルは驚いた。


「ユカ!ヒロキ!」


「あれっ?やっぱりワタルだ」


「ビックリさせてくれるじゃない!」


「どうしてここに!?」


「突然声が聞こえてきて、ここに来るようにうながされたのよ」


「僕もそうだよ!そうしたら、今、こうやって、ワタルとユカに出会ったわけ…。それにしても…、これがワタルが言ってた草原と…、あっ、赤い妖精」


妖精はきらきらとした光をこぼしながら、挨拶をした。


「ワタルのおともだち…、ヒロキ…とユカ…だね…。はじめまして…」


ユカは制服のシワを伸ばしてから、丁寧にお辞儀をした。


「はじめまして!赤い妖精さん」


ヒロキはいつものように神妙な顔つきで。


「はじめまして、宜しくお願いします」


「さあ…、三人とも、着いてきて…」


それからワタルとユカとヒロキの三人は、赤い妖精のあとを、追いかけて、水晶のように煌めく、広大な草原を飛んでいった。三人の胸は高鳴るばかりであった。

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