p.48[贈り物を作るために]
オースティンさん達との話し合いが終わり、部屋に戻ろうと廊下を歩いているとアリシアが話しかけてきた。
「無事に帰って来て下さいますか?」
「そりゃ大丈夫だと思うよ。皆動いてくれてるし」
俺の言葉を聞いて安心したようだ。緊張に覆われていた表情は安堵の物に変わった。
「ああ、そうだ。今度渡したいものがあるんだ」
「渡したいもの、ですか?」
「あんまり期待されると困るけどな」
話している途中で恥ずかしくなって、半ば逃げる様に部屋へと向かった。
カゼノさんがケースの中で カタカタ と揺れ、笑われているようだったが軽く小突くと静かになった。
「初心ですか」
「うるさい黙ってろ」
部屋に戻ってカゼノさんの攻撃を躱しながらジズの所に行くように準備を整える。
カゼノさんもジズの前では俺より酷いのにこういう場面では強気に出てくるからなー。どうにかならないものか。
「今余計なことを...」
「考えてません」
準備と言っても風よけにローブを羽織るだけなので直ぐに終わる。
時間が来るまで暇なので宝石類を机にならべてみる。
「宝石に容量ってある?魔法許容容量みたいなの」
「術者の技術力でどうにかなるんじゃないですか?私が生きていたころにはそんな物無かったのでどうとも言えませんが」
「技術力...」
俺とは最も遠い場所にある言葉が聞こえた気がする。ハハハハハ。
ジズなら出来るか?アリシアに渡すなら最高の物を上げたいからな。
「とりあえず一つ作ってみるか」
「何を作るんですか?」
カゼノさんに何を作るかを聞かれるが俺自身もソコまで深く考えていない。
別に攻撃用の魔法を込める必要は無いからな。魔法は俺自身が使えるし、兵士達には魔法剣なりなんなりを渡せばそれで済む。
「とりあえずは風呂だな」
「お風呂ですか」
この世界の風呂事情はよろしくない。
香水かなんか知らないが、お香の様な物の上に衣類を被せていき、匂いを付けて体臭を紛らわせている。
水浴びももちろんするが限度があるんだろうな。
俺も最初は困惑したが、水と火の魔法を手に入れてからは自室でこっそり疑似的な風呂に入っている。
湯を出して、球体状にしたものに入るだけだがこれだけで結構違う。宙に浮かした湯に入って『飛行・湯』みたいなこともしてみたが、俺が素っ裸なので傍から観たらかなりシュールだと思う。
「水と火の合成で湯を出すように調整したい」
「まあ、無理ではないですね。魔法の合成についてはツバサさんも出来ますから」
魔法の合成?...あー、泥人形で使ったのか。
方陣を考えるところから始まったのだが、俺とカゼノさんとで別々の方陣を一つの宝石に刻むことで決定した。
方陣の形をカゼノさんに教えて貰いながらも、何とか魔法陣が完成した。
この魔道具は明日、屋敷の誰かと試してみよう。
「そろそろじゃないか?」
「そうですね。行きましょうか」
そろそろいい時間なのでジズの所に向かうとする。眠気がヤヴァイ。
「ようジズ」
「どうも、ツバサ」
ジズと挨拶を交わして互いに報告をする。
どうやら鉱山は人の姿が見えなかったようだ。そして奥深くには巨大な熱源反応があるとのこと。
形大きさからしてドラゴンであることは殆んど確定した。
俺の情報も教えて、揺れは体温を温める為の物だとも教えて貰ったのでコレで決まりだ。
ドラゴンが逃げた方向が分かっていてどうして探さなかったのか聞いてみたのだが、倒せもしないのに余計な事はしない。と返された。
「問題はどうやって倒すかなんだけど何か考えはあるのかい?」
「鉱山全体を粉塵爆発で吹き飛ばそうかと考えてる。ドラゴンが居る場所に続く道があるならそれをやろうかなとか」
「悪いんだけど粉塵爆発について教えて貰えないかい?」
粉塵爆発については言葉だけじゃなく、実際に実演もした。
酸化していない金属の粉を周囲に撒いて、その中心地に火種を出すと爆発する。
簡単に説明するとこんな感じだ。
火が出るから酸素は無くなるし、爆発の影響で鉱山も崩れるかもしれない。逃げ場も無いから先制攻撃で打てる最大火力じゃないだろうか。
「こちらの魔法は感知されると思うか?」
「うーんどうだろう。規模が小さい物なら分からないと思うよ。ツバサの魔法は精霊が殆んど働いていないし、感知するのは難しいと思う」
「それならいけそうだな」
現地に行って魔法で地形をサーチ。砂を散布して火種を投げ入れ、爆発したところを上空待機で眺める。
ドラゴンが生きていれば出てきた所を三人の最大火力で叩いて潰す。
コレで勝つる!!
ジズに、王が横取りを企んでいるかも知れないとも伝えておいた。
彼も王の狙いが分かったようでお腹を押さえていた。
「本当に不老不死になれるのか?」
「無理だよ。確かにドラゴンは悠久の時を生きるけど、エルフと似たような感じだね」
「死なないように専用の細胞があるだっけか?」
「まあ、そんな感じだね。実際に食べると植物人間になって永遠に等しい時を生きることになるよ」
なんでもドラゴンの内臓は人間にとって毒になるらしく、肝を食べて体の維持が出来ても、止むことのない毒の痛みに精神をやられ植物人間に等しい状態になるそうだ。
俺は大人しく禁書の魔法陣を刻むのでいいな。うん。
「ああ、そうだ。それと頼みがあるんだが」
「私に出来る事なら」
俺が選んだ宝石をジズの前に差し出す。
決していい物とは言えないが、俺が気に入ったものを渡したい。
事情を説明して手を貸してほしいと言うと、思ってもみなかった答えが返って来た。
「好きな人からの贈り物ならなんだって嬉しいものじゃないかな。それがその人が一生懸命作ったものなら尚更ね」
「あー、そうか。そうだわな。ありがとうジズ、参考になるよ」
俺の実力でどこまで出来るかは分からないが精一杯の努力はさせてもらおう。
その後は戦闘を仕掛ける日程の話し合いをして解散になった。




