p.47[王の狙い]
夕食の時間。
シルフィック一家との食事にもだいぶ慣れてきた。俺がそう思っているとオースティンさんが話題を出した。
「私が盗賊に襲われた事は覚えているかな?」
「ええ、まあ。私も戦闘には微力ながら参加させて頂きましたし」
俺がオースティンさんと初めて会った時のことか。
「私が調べさせたところアレはこの国の国王が関わっている可能性が高い」
その一言で場が凍り付いた。給仕の人達も気をきかせて退出したようだ。
「ソレは私たちに聞かせてもよいお話ですか?」
「大事なことだ、聞いておいてくれ」
クロエさんが尋ねるがオースティンさんの言葉で静まる。
「どういうことでしょうか」
「盗賊たちが襲うのは物資を大量に積んだ商人の馬車なんかが一般的だ。人を殺すのが目的じゃないからな。それに、貴族を襲うのもよっぽど馬鹿じゃないとしない。これは討伐隊が組まれるのを防ぐためだ。護衛の騎士が居たから、地位ある人間なのは一目で分かる。...では、なぜそんな私を襲ったのか、分かるかい?」
「他に目的があったという事でしょうか」
説明してくれたからあの盗賊たちが怪しいのは分かった。
だからといって襲われた理由は分からないが。
食料が足りなくなって襲った馬車がたまたまオースティンさんが乗った馬車だった。
うーん。これは無いかな?盗賊たちにやつれた様子は特に見られなかったし。
「襲うならばもっと強い人達を雇うのではないですか?騎士達は数で押されていましたが剣の腕事態は負けていませんでしたし、確実に殺せたとは言えません」
「まあ、アレは嫌がらせじゃないかと思っている。王都からの帰りだったんだが王と少し揉めてしまってね」
思いついたことを言ってみただけなのだが。盗賊をけしかける嫌がらせとか嫌だわー。
「アネモイ様の神殿の教皇だけがこの街に居るのは知ってると思う。他の教皇たちは王都で過ごしているんだが、その事で王都のアネモイ様の神殿が不遇な目に合っていてな。私が大使として王都まで出向き、王に直談判しに行ったのだよ」
「また無茶な...」
俺の返答に「君にだけは言われたくない」と返されてしまってぐうの音も出ない。
「では、それで嫌がらせされたと?器が小さすぎるのでは?」
「私もそう思うが外では言わない方がいいぞ。...その時王が意味深な事を言っていてな。『黙って守っておればいいのだ』、と小声で言っていたんだ」
「守る?何から守る必要が...ドラゴンですか?」
「そうだろうな」
どういうことだ?王がドラゴンが来ることを知っている?
じゃあ何で出兵をしてくれなかったんだ?
嫌がらせして戦力を減らしてる時じゃないだろうに。
「ドラゴンの事を王が知っていたとして、何故出兵しないのですか?」
「そうだな、王都に過去の記録が残っていたとして、タチバナ殿の力で倒せると思ったのか。それとも何か別のものがあるのか」
このままいけばドラゴン討伐には俺とカゼノさん、そしてジズの三人で向かう事になる。この三人がいて負ける事は無いと思う。
王がドラゴンの力を知っていて、魔法使いがどれだけいれば倒せるかどうか分かっているのならば、そんなに数を出さなくても倒すことは出来る。
もしかしたら、俺が倒し終えた後に横取りを考えているのかもしれない。
アネモイの使徒、タチバナ殿は勇敢にもドラゴンに立ち向かったが力及ばず破れてしまった。我々、国王軍は彼との戦闘で弱っていたドラゴンを無事討伐し彼の無念を晴らさせて頂いた。
...みたいな。横取りされてもなー。
ドラゴンから街を守れればいいわけだからそれでもかまわないんだけど、王にドラゴンを討伐するメリットが無いと横取りはされないか。
名声とかは手に入るだろうけどそれなら出兵しろって話だ。
まてよ?過去にドラゴンであるジズが襲われたのはどうしてだ?
不老不死になるとされる肝があったからだ。
王都に過去の資料があるとすればこの事を知っていてもおかしくはない。
機密情報であるならば、人数は少ない方がいいだろう。ドラゴンを倒して弱っている俺を、王が率いる討伐軍が殺し、不老不死の肝を得る。
辻褄が会うような、合わないような。俺のこじつけかもしれないが一考してもいいかもしれない。
「王が抱えている魔法使いの数はどれくらいですか?」
「現役なものは三十人を超える。王都の方には魔法使いの家系と言うのが何家かある。そこの人間が全て出て来るのであれば五十程か...。だが何故それを?」
「いえ、思い当たる節があったものですから」
魔法使いが三十人以上。魔法の腕にもよるが討伐できない数ではない。安全と確実性を期して俺が戦い終わった後に仕掛けられたとしたら確実に負ける。
神具、魔道具をフルに活用すればドラゴン戦は幾らか魔力を温存できるか?いや、数の前には微力すぎるか...。
「王が何か仕掛けてきたとき対処は可能か?」
「私が万全の状態ならば何とか可能です。ですが私が考えている限り、そんな状態では襲ってこない」
「難しいか...。君が消耗しているとしてどれだけの人数がいれば勝てる?」
「魔法の前には剣が効果を発揮するとは思えません。距離にもよりますが、至近距離で魔法を使おうとする馬鹿はいませんし...」
結局、こちらの陣営に魔法使いが少ないのが痛い。
オースティンさんとそんな平行線の話をしている時、エイデンさんが会話に入った。
「今日使っていた剣を使えばどうだ?聞いたところによると魔法が使えなくても扱えるそうだが」
「魔法剣ですか。確かにアレが大量にあれば魔法が使えなくても大丈夫だとは思います」
「魔法剣?なんだそれは」
訓練場であったことを俺とエイデンさんとで説明した。
その後も話は進み、王の兵達は魔法の武具を持った者達で抑えることになった。
問題なのは、魔道具を作れるのが俺だけだという事ぐらいか。




