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p.46[魔法の道具]

遅れてしまい申し訳ないです。

 外壁の補修を無事に終え、アビーさんの屋敷に戻る。

 行きのように『飛行フライ』で帰っても良かったのだが、早く帰りたくないので徒歩で帰宅中だ。


 俺は魔道具に使う様に宝石かそれに準ずる何かを探しているのだが、いいものが中々見つからない。


 「タチバナ殿何か探しものですか?さっきからきょろきょろとしてますが」

 「宝石を探してるんだけどよさげな物が見つからないんだよ」

 「アリシア様にプレゼントですか?」

 「まぁ、そんなところだ」


 ヒューヒュと野郎どもがはやし立てるが勤めて無視だ。

 魔道具が無いから何に使うか聞かれても答えられないんだよな。


 「宝石類ならエリーの店だと思いますよ?」

 「エリーの店?有名なのか」

 「指輪とかネックレスを扱ってるんですけど加工前の宝石も商品としてあった筈です」

 「でも、お高いんでしょう?」

 「ソコソコの値段はしますね」


 持ち金で足りるかな。

 地球でも宝石とか貴金属とは無関係だったから相場が分からない。

 店の場所だけ聞いとこうか。





 アビーさんの館で昼食を済ませた後、訓練場に戻ってエストックを手に持つ。

 右手に魔力線が出るまで魔力を貯めると、剣に向かって魔力線を拡張していくように魔力を動かす。


 今しているのは魔法の武器が出来ないかの確認だ。

 剣にも魔力線が現れば魔法が使えるのでは?と思ったのでやっているが無理っぽいな。

 俺の体内で魔力線が拡がるだけで剣に移る気配がしない。


 次は方陣でも刻むか。やり方を知らないのでカゼノさんの知識頼りになってしまうが。


 『指先に魔力を貯めて剣に刻むように押し当てて下さい』


 カゼノさんのアドバイスに従って指先に魔力が集まる。魔力だけでなく魔力線も集まってグロくなってしまっているがコレでいいのかな?


 カゼノさんに視界に方陣を映してもらい、俺がソレをなぞる。

 エストックの刀身は結構細いので細かいのを描こうとすると潰れてしまうが、魔法の武器が出来るかどうかの実験なので最低限効果を発揮すれば問題ない。


 何とか剣に描き終った。

 エストックに見た目の変化は特に無く、方陣が刻まれてるだけだ。


 『使ってみてください』

 「どうやって使うんだ?何の魔法の方陣かも知らないんだけど」

 『魔法を使うような感じで剣を意識すれば大丈夫ですよ。魔法は危険が無い物を選びました』


 カゼノさんが出した方陣をなぞっただけなので、何の魔法の方陣なのかは分からないが危険は無いようだ。


 魔法を使う様に集中すると変化があった。

 方陣が光ったかと思うと、剣から水が出てきたのだ。

 この水はある程度は自分の意思で動かすことが出来るようで、鞭のように扱ったり、剣に纏わせてみたりと色々と試してみた。


 次は魔法が使えない人でも魔法剣は使えるのか。

 近くに居た兵士にエストックを渡して、剣に意識を集中してもらう。

 結果は、何とか成功と言った具合か。水が出るには出たのだが、操作が甘く、水が拡散してしまう事が多々あった。


 まあ、一応は成功って事で。

 この様子なら魔道具も夢じゃ無いな。





 アビーさんと軽い相談を終えて屋敷を後にした。

 その足で宝石を取り扱っていると言うエリーさんの店に向かう。

 道案内もあるが、ある目的のためにカゼノさんには人型になってもらっている。特に深い意味は無くて、魔力が見えるカゼノさんの意見を聞かせてほしかったのだ。

 俺はまだ魔力が見えないので宝石の善し悪しを教えてほしい。


 「あのお店じゃないですか?」

 「指輪とネックレスの看板か...」


 カゼノさんが指さす先には指輪とネックレスが描かれた看板が吊り下げられたお店だった。

 店の外見からしてオシャレな雰囲気を感じる。


 扉を開けて店の中に入った。

 日本の様にガラスケースに入っているわけじゃなくて、店員と話して商品を決めていくようだ。

 俺とカゼノさんも迎えてくれた店員に案内されて個室に通される。


 「ようこそいらっしゃいました。本日は何をお求めでしょうか」

 「そうですね、私は魔法を嗜んでいるのですが実験に貴金属が必要になったんですよ。それでいくつか見てから決めさせていただこうかと」

 「なるほど、魔法使いの方でしたか。私は魔法にはこれっきしですのでどの種類の物が良い物か...。何点か用意させて頂きますので何かありましたら声をお掛けください」


 そう言って店員は部屋から出て行った。

 貴金属を用意しているのだろう。


 「ツバサさんも魔力を見える様にしましょうか?」

 「いやー、アレには苦い思い出が...」


 店員を待つ間にカゼノさんに声を掛けられた。

 俺に魔力を流して一時的に魔力を見える様にするかどうかの提案だったのだが、前回魔力酔いをしてしまったのでどうにも気が引ける。


 「危なくなったら解除しますから」

 「...分かった」


 ついには押し切られてしまい、魔力を流してもらった。


 何かが焼けるような痛みのあと、視界は水色に光る世界があった。

 懐かしいと言っていい物か...魔力が見える世界だ。


 店員が戻って来て幾つか見せてもらった。

 加工済みの物から加工前の物まで。

 色とりどりの物が並ぶ中で、魔力が呼吸するかのように動き出す。

 中でも俺が気に入ったのは小振りな宝石だった。魔力の光は大きくないが、魔力が動く様子が気に入った。

 カゼノさんは特に何も言ってこなかったので別に問題は無いだろう。

 他にも予算の範囲内で見繕い、店を後にした。


 「一つだけ気に入ってた宝石がありましたね」

 「なんて言うんだろう、こう ビビッ と来たんだよ」

 「まぁ、悪い物では無かったので何も言いませんでしたが、明らかに他の物と比べて見劣りしていたので私はてっきりアリシア様にプレゼントでもするのかと」

 「だから何も言わなかったのか」


 でも悪くないかもしれない。

 思い返せばアリシアに何かをしてあげた事も無かったし、婚約者っぽいイベントも無かった。

 俺は彼女から貰ってばっかりだ。プレゼントぐらいあげてもいいかもしれない。


 「プレゼントするからには最高の物を作るからな。協力してくれるか?」

 「下手な物渡すと魔法の有用性が疑われそうですので全力を尽くしますよ」


 ツンデレなのか、ただのツンなのかは分からないが協力してくれるようだ。

 あ、ジズにも頼んでみよう。

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