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p.45[親方、空から領主軍が]

 訓練と称した本気の打ち合いを経て今。殺気を込めて剣をぶつけ合っていた筈の俺達は仲良く正座していた。

 規則正しく並んだ俺達の前にはアビーさんが仁王立ちしている。


 「朝から元気が有り余っているようですね」


 何気ないようなその一言で何人かが身体を震わせたのが横目に見えた。

 俺が震えてるだけかもしれない...。


 「ツバサ様?」

 「は、はいぃぃぃ!!」

 「貴方まで混ざって何をしているんですか?」

 「申し訳ありませんでしたーー!」


 若干場に酔ってる気がしないでもないが、ヘコヘコと頭を下げる。

 そんな俺を見て笑いを堪えている奴が居たのでそいつの顔を脳裏に焼き付ける。後で覚えとけよ!


 スッパ—―――ン!!


 笑いを堪えていた奴が吹き飛んだ。

 何があった!?


 視線を向けると何かを振り抜いた格好のセバスチャンが...。

 !? おい、てめぇ、どこから現れた!さっきまで居なかっただろうが!!


 「罰として街の外壁の補強工事を手伝うように!」

 「よっしゃ野郎ども行くぞ——!」

 「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」


 俺の号令の元、正座していた野郎どもが立ち上がる。

 エリックが「俺のセリフだ!」とか言っていたが知らんな、俺がガ...正義だ!


 足が痺れて動けない奴は俺の魔法で運ぶ。

 エリック。お前は自分で走れ。あ、あと俺を見て笑ってた奴も。


 「誰か外壁の場所教えてくれ!『飛行フライ』。『飛行フライ』」

 「多分あそこだ!ついて来てくれ!」

 「「「行くぞオラァァァ!」」」


 追加でフライを掛けまくりながら屋敷を脱出。先導役が先行して何十という人数が後に続く。

 街の人達は何事かと騒いでいたが領主軍だと分かると手を振ってくれた。

 兵士達もまんざらでは無いようだ。


 『飛行フライ』の制御を任せているのだが普通に上手く制御できてるな。


 「結構上手じゃないか!」

 「俺、空飛ぶのが夢だったんだ!!」

 「魔法って難しい物だと思ってたんだが結構簡単だな!」


 空を飛んでテンションが上がっているようだ。

 エリックと俺を笑ってた奴は屋根の上を走ってついて来ていた。

 あいつら人間か!?伊達に訓練してないってか。


 「タチバナ殿!街でイザコザが起こっているようです!」

 「あそこか!周囲を取り囲んでさっさと終わらせるぞ!」

 「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」


 争っていた連中も、雄たけびを上げながら空から突撃する兵士たちを見て顔を青ざめていた。

 流石は本職。テキパキと事情聴取を済ませ、本来警備に当たっている兵士達に任せていく。


 「事情聴取終わりました!」

 「よし、外壁に向かうぞ」


 地を蹴って街の外壁へと飛ぶ。

 その後も何件か争いをなだめ、外壁に到着した。


 息を切らせながら到着したエリックに担当者との挨拶をしてもらう。

 もちろん俺もそれをただ見ているだけでは無い。鉱山の事をそれとなく聞いてみる。


 「剣ってアビーさんから補充されるのか?」

 「詳しくは知らんがそうじゃないのか?」

 「そうなのか。そういえば街の近くに鉱山があったよな」

 「あぁー、あそこか。噂じゃ最近地響きが酷くて鉱山が崩れる直前だとかなんとか」

 「俺の親父の代から掘ってるって聞いたぜ。流石にもう目ぼしいのは無いんじゃないか?」

 「崩れても惜しくないのか」


 地響きか。ドラゴンが目覚め前兆に体をゆすって体温を高める、ってのがあったよな。

 それが地響きの正体か?単に崩れるだけならいいんだがな。

 ジズの報告待ちか。


 「おい、お前ら。資材運ぶぞ」


 指示を聞いて来たエリックが戻って来る。

 情報収集は一旦終了か。





 「俺もやるのか...」

 「当たり前だろ。誰のせいでこうなってると思ってんだ」

 「うっせぇ、お前も参加してだろうが」


 エリックと二人で荷物を運ぶ。ハンモックのようにした布の上にレンガなんかを置いて両端を持っている。

 俺の様な魔法使いだろうと関係ない。男手の一人として数えられたら参加しない理由にはならない。強制参加だ。


 「片腕だけど日常生活は大丈夫なのか?」


 エリックが興味深そうに聞いて来た。


 「大丈夫じゃないのが見て分からないのか?ああー、今にも倒れそうだ。俺は抜ける」

 「待て待て。今日は奢ってやるから、な?」

 「すまんな、俺は酒はダメなんだ。そもそも今日は用事があるからな」


 今日の夜もジズに合わなければならない。飲めもしない酒を飲んで酔ってしまっては大変だ。

 大人しく自室で待つとしよう。


 「もう魔法でパパッと運んだ方が良いんじゃないか?お前も体力は無いだろうに」

 「何言ってるんだ。魔法に頼ってばかりだと衰退するぞ?魔法使いの数がただでさえ少ないんだ、人の力で出来る事は人の力でやるべきだ」

 「なんかそれっぽい話だな、急に」


 カゼノさんに魔力が無い人間を神様が増やしているという話を聞いた事がある。

 神様の意図は正直分からないし、今すぐに魔法使いが居なくなるとは思わないが魔法に頼ってばかりと言う訳にもいかないだろう。

 魔法よりも科学。と、思わないでもないがコレは地球育ちの俺の理屈だ。豪華な屋敷で生活しているから生活基準が落ちたとは思わないが、日本の暮らしを思い出すとどうしても物足りない。

 魔法の力で生活基準が上がるなら問題は無いが、街の様子を見るに魔法的要素は皆無だ。

 まあそんな訳で魔法に頼るのは良くないと思うわけだ。


 「お前の生活に魔法が必要か?身の回りに魔法の製品はあるか?そんな感じか」


 魔法使いの絶対数が増えれば変わるかもしれないがな。


 「魔法の製品?なんだそれ」

 「魔法の製品って言ったらアレだろ。魔道具だとか魔法具どこか」

 「いや、初耳だ」

 「魔法剣とかは聞いた事あるか?」

 「いや、無いな」


 まさかこの世界、魔法があるくせに魔道具が無いのか?

 無い物を普及しようだなんて無理な話だ。そもそも存在そのものが無かったのか...。


 「で?魔道具って何なんだ?」

 「大体は魔法が込められた道具の略省だな。魔法が使えなくても魔道具を使う事で、込められた魔法の効果を発揮することが出来るんだ」

 「そりゃあ、便利だな。無い物ねだりだとは分かってるがな」


 魔道具作ってみようかな。

 この世界の魔物が魔石型なら案外どうにか出来そうなんだが、違うんだろうな、多分。

 となると候補は宝石類か?魔法陣を描き込んで終わりなら俺にも出来そうだ。

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