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p.31[神々からの贈り物]

アビーさんの屋敷を出た後に俺を待っていたのはエイデンさんだった。

アリシアと仲直り?をした事で再度シルフィック家に招待しようと言うことだった。

食事の際にオースティンさんから今後はこの家で過ごすように言われたので大人しく従う事にした。

そして、その夜俺は不思議な夢を見たのだ。


足元には何処かで見た事あるような花畑が広がっていた。


「アネモイ様の空間……?」


歩く度にサワサワと花を掻きわける音が鳴る。自分の夢だとは思うがココがアネモイ様の空間であるなら彼女が居るはずだ。

花畑を歩いて行くと遠目に人影が見えたので手を振ってみると、その人影は大きく跳躍して俺の方に飛んできた。よく見てみると背中に翼を持っていて女性である事が分かった。


「お久しぶりです、アネモイ様」

「そうね」


短く返してくれた言葉にはほんの少しだが喜びを感じる事が出来た。


「何かあったのですか?楽しそうですが」

「そう?実はね他の神々から贈り物が届いたの」

「贈り物がですか?」


今日、神殿を回った事が原因だろう。

アネモイ様が手を横に振ると何処からか光る球体であったり鈴、ローブ、種といった多種多様な品々が顔を出した。


「これはネプトゥネス様から、こっちはクロノス様かな?あとは…」


息をつく間もない程に次々と出てくる品々。


「アネモイ様、あの、私はどうしたら…」

「あ、すいません。まずはコレを飲んでみましょうか」


一人でアレコレしだすアネモイ様に疎外感を感じつつ言葉を挟むと、銀のワイングラスが差し出された。

アネモイ様の手にも同じ物があるので二つで一つのセットなんだろう。中には赤い液体が半分ほど注がれていた。


「これはディオニューソス様からですね。中は葡萄酒かな?」

「は、はぁ」


ティーーーン

アネモイ様が互いのグラスを鳴らすと一気に呷ったので俺も飲んでみる。

ん、甘いな。スッキリした味わいって言うんだろうか。


「美味しいですね、でもコレで何が変わるんでしょうか」

「魔道書開いてみたらどうですか?」


・所持スキル

異世界言語[熟練度10.0☆]

風魔法[熟練度1.75]

風魔法適正[熟練度8.78]

狂気の酒杯

MP増加Ⅰ

MP増加Ⅱ


「狂気の酒杯?」

「使ってみてください」


見るからに怪しいスキルだが、アネモイ様に言われるままにスキル名を唱える。

すると銀の糸が何十本と掌に生まれ、互いに編み込まれながら伸縮を繰り返し銀の杯を形どった。

蔦が所々に巻き付いているかのようなデザインだった。

杯の中から水が湧き出し、杯を溢れ出した水は足元を水で埋めるかのような広がりを見せる。


「水が止まらないんですけど、大丈夫なのでしょうか」

「もう止めていいですよ。効果はだいたい分かりました」


俺には効果が分からなかったのだがアネモイ様には分かったようなのでスキルの使用を止めるとそれに合わせて水の出も収まり、杯は銀の糸に戻り塵となって消えた。


「それでスキルの効果なんですが」

「効果は溢れた水に触れた者が狂乱する事でしょうか?他にも効果があるようですけど、そこは実地で試してください」

「わかりました」


狂乱?あんまりピンと来ない効果だな。使ってみれば分かるか?

俺以外の全ての人に効果が及ぶようであれば使い所が限られるな…。



「次はこのローブいきましょうか」


今度はローブのようだ。このローブはモイライと言う神からの贈り物だそうだ。

モイライ様は運命の神でこのローブは運命の糸と呼ばれる物で作られていて、身につけていると選択に強くなったり、運命に導かれる事があったりするようだ。

運命の糸とは人の寿命や死、生命によって長さが変わる糸で、糸が切れたらこのローブの効力が切れると言われた。

黒字に金に近い黄色の修飾が施されたローブを羽織り、アネモイ様が次に出したものを見る。


「コレは?」

「ガイア様の未来を予言する能力の劣化版ですね」


光る球体を片手にクルクルと回るアネモイ様。

動きが急に止まったかと思うと光る球体を「えいっ」と俺に向かって投げた。

俺にぶつかった球体は何の抵抗もなく俺の中に入っていった。


「投げないで下さいよ、神様からの贈り物でしょう?」

「私も神ですよ?心配要りません」


それでいいのか、とも思うが次の贈り物を取り出してきたのでそちらに注目する。


「これは、クロノス様の鎌ですね。時間が無くなってきているのでここからは説明は飛ばしていきますね」


どうやら現実の方で朝が近づいて来ているようだ。

クロノス様の一抱えもある鎌を手に取って、渡されるものを受け取っていく。


デーメーテール様の豊穣の種。

セレーネー様の安月の鈴。

ディアナ様の銀の弓…


まぁ数多くのものを頂いた。

手に持てなかったものは光となって魔道書に吸い込まれた。

吸い込んだ物によって魔道書の見た目も変わった。例えばディアナ様の銀の弓を魔道書に取り込むと新月が浮かび上がって来たりといった感じだ。


頂いたものを仕分けると大体三つに分けられた。

武器や防具、スキル、補助の道具。この三つだ。

武器と防具は正直、一人では装備しきれるような量では無いので、使えそうなのをカメーリアさんにでも渡してしまおう。

スキルは劣化とは言え、神のチカラが元になっているので強力な物ばかりだ。

補助の道具は、一回使えば無くなってしまう様な消耗品が殆ど。使い所が難しい。


急ぎ急ぎでの贈り物の確認だったが、それも落ち着いたので二人向かい合う。


「それでは頑張って下さいね。貴方の心の内が私には心配でしたが、それも解決した様ですし…」

「分かりました。……アネモイ様、私はこの世界に来れて良かった」


そして意識が途絶えた。





まだ周囲が薄暗い時間に目が覚めた。

近くに置いていた椅子の上には魔道書、背もたれにはローブが掛けられ、壁には鎌が。

夢の中――アネモイ様の空間の中で俺が身に付けていた物はこの部屋の中にあった。


カゼノさんが人の姿を取り、椅子に座った状態で話しかけてくる。


「一人で倒せるんじゃないですか?ドラゴン。私は一昨日彼に会いに行ってドラゴン討伐を手伝ってくれると約束を交わしてきましたが」

「これだけの力があれば倒せるかもな。でも、もう半分の神殿を回らないと反感を買うかもしれないから取り敢えず神殿回りに行くよ」


ここでカゼノさんが言う彼とは彼女が守ったドラゴンだろう。

一昨日だから、神殿に泊まった日か。『飛行(フライ)』で飛んで行ったのはその為か。本当に出来た魔道書だ。


「一人で倒せるんだったら、その方が良いよな」

「そうですね。そうするんですか?」

「アリシアにはあぁ言ったけどやっぱ一人で出来るなら、した方が良いんだよ」


今、具現化してある贈り物をカゼノさんに取り込んでもらい、何事も無かったかのように部屋を出る。

すれ違ったメイドさんに神殿に行く事を伝えて屋敷を後にした。


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