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p.30[禁書の中]

 この魔法陣は前記した、不老の魔法陣だ。この魔法は知り合いのエルフから長寿の理由を聞いた私が、その効果を昇華して創った魔法だ。

 エルフが長寿なのは神に似せて創られたからだと言われてきたが、エルフの知人曰く、ある菌が身体の維持をしているようだ。歳を取っていく事でその菌は数を減らすようだが、どうして数を減らすのかは詳しくは分からなかった。

 不老の魔法の効果だが、名前の通りだ。まず、この魔法が掛かっている間は寿命で死ぬことは無くなる。また、容姿が変わる事も無い。

 身体に魔法陣を刻むことによって菌を創りだし、その菌の維持も同時に行う。

 注意点だが、魔法陣を描く際に使った魔力が無くなると魔法陣が効果を失う。効果が切れた際に身体がどうなってしまうのかは確認していないが危険な事は確かだろう。

 魔法陣の持続時間だが、コレは方陣を書く際に使って魔力量に依存してしまう。魔法陣が消えてしまう前に新しい方陣を書く事も可能だ。だが、新しく描くにはタイミングが大切だ。方陣が同じ個体に二つ以上描かれていると体が少しずつだが崩れて行ってしまうからだ。前に描かれた方陣が消えるのとほぼ同じタイミングで描くのが好ましいだろう。





 次に、ドラゴンに比較的有効だった魔法だ。この魔法は対象の大きさに応じて必要な魔力量と集中力が異なる。

 使い方、起こる現象について説明しよう。空気中の水分を集めることで光を曲げて、対象にまるで自分がもう一人現れたかのように見せるのがこの魔法だ。

 コレのどこがドラゴンに有効なのか、という話なのだが戦場で手足を失った兵士が傷は治っているのに無くなった筈の部位があたかも実在しているかの様か感覚を覚える現象を知っているだろうか。大体はそのような現象を作りだすとでも思っていたらいい。

 脳に偽の情報を送る事で実際には傷を負っていないのに傷が有るかのようにする事で、綺麗な死体を作りだす事も可能だ。

 映し出した相手と殆んど同じ動きしかできないのが玉にきずだが、十分利用価値はある。

 砂漠等の水分が殆んど無い場所では使用魔力量が跳ね上がるので使用する際には注意してほしい。





 禁書室の一角で本を読んでいると不意に肩を叩かれので振り向いてみるとアビーさんだった。


 「ツバサ様、わたくしは用がありますので失礼したいのですが残られますか?」

 「そうですね・・・、本の持ち出しは可能ですか?」

 「本来ならダメなのですが今回は特別ですわよ」

 「ありがとうございます」


 アビーさんから本の持ち出しの許可を得たので、紐でグルグル巻きにされていた今読んでいる本、「隔離された神殿」、天候を変える魔法について書かれている本を何冊か持ち出し、禁書室を後にした。


 「禁書室に残っていらしゃっても良かったんですのに、何か用事でもおありだったんですか?」

 「特には決めていなかったのですが、神殿でも回ってみようかと思いまして」


 ズズズッ———!


 石碑が元の位置に戻る音を背中に受けつつ、アビーさんの質問に答える。

 俺が神殿を回ってみようと思ったのは魔法について書かれた本を読んでいて、風魔法だけでは再現できないと思わせるような魔法が数多くあったからだ。

 神殿を一通り回ってみて、その神に合った属性の魔法がもらえればラッキー。カメーリアさんの様に神具を持った助っ人が来てくれるのも良い。

 何も得るものがなければそういうもんだと思って割り切ろうと思っている。

 まずはアネモイ様の隣の神殿からだ。



 神殿巡りをして、日が暮れてきた頃。俺が廻れた神殿の数は半分位だった。


 「ちょっと数が多すぎないか?」

 『私に言われても知りません。我慢してください』


 幾つ神殿を回っただろうか?十では足りない様な気がする。

 二つ三つの神殿が複合で作られていたり、果樹園や庭園があったりと各神殿の特徴が色々と見られて退屈する事は無かったが何せ数が多い。

 更には俺が神殿内の道を間違えたり、神殿内の道を間違えたりしたので遅れたのも一つの理由だろう。


 『ツバサさんが道を間違えるのが悪いと思うんですけど』


 やっぱりそうか。認めたくないがカゼノさんに言われたら認めるしかないだろう。

 アネモイ様以外の神殿ではアネモイ様の力を使えないのでどうしても俺だけで探すしかなくなるのだ。

 兎にも角にも一旦アビーさんの屋敷に戻るとしよう。その前に何か本を入れれるような袋が欲しいな。




 屋敷入口の扉に近づくとセバスチャンが出てきて俺を出迎えてくれた。


 「お待ちしておりましたタチバナ様」

 「セバスチャン、何か私を待つような事がありましたか?」

 「タチバナ様が頼まれた革職人が来ております」

 「そうですか」


 俺がアビーさんに頼んでいたカゼノさん用の革の留め具を作ってくれる職人が来ているようだ。

 アビーさんの部屋までセバスチャンが案内してくれる様なので後をついて行く。


 コンコンコン・・・

 「アビー様、セバスです。タチバナ様をお連れしました」

 「おはいりなさい」


 セバスチャンが扉を開け、俺を促す。


 「失礼します。ツバサ タチバナです。お待たせしてしまったようですね」

 「そんな事はありませんわ」


 部屋に入るとアビーさんの他に一人の男性がいた。おそらく彼が革の職人だろう。


 「お初にお目にかかります、タチバナ様。私、革職人のネストと申します」

 「ご丁寧にありがとうございます。この度は私の為にありがとうございます」


 ネストさんは髪に所々白髪が混じっていて、にこやかな笑みを浮かべたおじいさんだった。


 「いきなりで申し訳ないのですがお話を進めてよろしいでしょうか?」

 「・・・えぇ、喜んで」


 ネストさんは一瞬アビーさんの方を見たが、俺の方に向き直ってまた微笑んだ。


 「この魔導書は私の物なんですが、とても大切な物なのです。同期出来たらいいんですけど特殊な事情がありましてね、ですので腰に止めておける様な物が欲しいんですけど可能ですか?」

 「もちろん出来ますよ。そういうのも幾つか作った事があるから任せて下さい」


 その日は俺の腰回りと本の採寸をして終わった。

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