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p.2[初陣]

 「なぁー、いつになったら街に着くんだよ」

 『もう少しです』

 「ソレさっきも聞いたんだけど?」


 さすがはサポーターと言うか、カゼノさんが一番近い街の位置を知っていたので指示に従って進んでいく。

 森の中を少し歩くと街道らしきものを見つけたので今はそれに沿って移動している。


 ナビゲーションをしてくれているカゼノさんだが、疲れるのが嫌なのだそうで今は魔導書になっている。本をもって移動するというのは想像していた以上に大変だ。


 「街に入るときってさぁ、お金取られないの?税金とか色々あるじゃんか」


 これから行く街について少し質問してみる。

 今の俺の格好はゴワゴワしたシャツにゴワゴワしたズボンで、改めて日本の繊維業の凄さを実感した。

 おそらくこの格好がこちらの世界では一般的なのじゃないかと考えている。アネモイ様の空間では日本に居た時の服装だったので、わざわざ着替えさせたのには意味があると思ったからだ。

 そこまで配慮してくれたのに、アネモイ様はこの世界のお金をくれなかったのである。日本でも、そして異世界でもお金があって困ることは無いだろう。宿もとらないといけないしね。


 『税金は基本的に払わなくても問題ありません。代わりに自分が住んでいる所を治める領主に色々と税を払っています。他にあるのは犯罪履歴の確認だけですね』

 「そんなのどうやって聞くんだ?素直に聞いて はい、そうです。 って訳にはいかないだろ」

 『そのための魔導書です』


 どうやら犯罪を犯すと魔導書に罪状が書かれるのでそれで確認するようだ。

 因みにカゼノさんが魔導書の状態なのにどうやって会話しているかというと、魔導書の白紙のページに文字が浮かび上がってくるのでそれで意思疎通をしている。

 実際に声が出ている訳では無いので、傍から観たら独り言を言っているようにしか見えないだろう。





 『ツバサさん』

 「何でしょうかカゼノさん」

 『先ほど通った場所で戦闘が起こりました』


 しばらく歩いているとカゼノさんがそう言った。

 後ろを振り返って耳を澄ますと僅かに何かがぶつかり合っているような音が聞こえる。

 盗賊か?俺達が通った時に襲われなかったのは見るからに金目の物を持ってなかったからだろうか。


 『どうします?先を急ぎましょうか』

 「いや、開幕の盗賊戦はよく聞く話だ。それにだいたい襲われてるのは身分が高い人物だから助けられるなら助けた方が今後のためになると思う」

 『とりあえず見に行くだけ行ってみましょうか』

 「そうだな」

 

 助けるかどうかを聞かれるが今の俺にはアネモイ様から貰ったチートがある。

 思惑が裏に無いわけではないが助けられるなら助けたい。


 「ところで魔法ってどうやって使うの?詠唱とかいるの?」

 『私がサポートしますので詠唱しなくて結構です。魔法名だけ言ってもらえれば』

 「じゃあサポートは頼んだ」

 『頼まれました』





 

 街道の脇にある草むらに身を隠し、状況を窺う。

 灰色の鎧を着た七人の騎士が薄汚れた格好のいかにも盗賊と言った感じの人達と戦っているようだ。

 騎士たちは馬車を背に戦っていて戦い難そうだ、今も盗賊との人数差で馬車に一人近づかれていた。剣の腕は騎士たちの方が上なようで負けることは無いと思うが恩を売るには俺も参戦するしかないだろう。


 『行かないんですか?』

 「戦うなんて事、現代日本じゃありえなかったからな。それに俺、魔法しか使えないから遠くからチマチマつついていくよ。」


 緊張からか脚が震えてきた。直接戦いに参加するわけではないがこればかりはどうしようもない。

 カゼノさんがサポートしてくれるだろうし、意を決して戦闘に参加する。

 右手をターゲットとなる盗賊に向けて意識を集中させる。


 「いくよ。・・・『風の悪戯ウインドミスチーク』!!」


 手に持った魔導書状態のカゼノさんに合図を送り魔法の名前を唱える。

 心臓が一際跳ね上がり、右手の掌力が集まっていく。その一点に力が集まりきると スっ と力が抜け軽い脱力感が襲って来た。

 

 想像した現象は風による相手の行動の阻害。

 踏み出そうとしたところに横から強風を当ててやったり、砂を巻き込んで目をつぶしてやる。コレで幾らか戦いやすくなるだろう。


 元々、数で負けて苦戦していただけで、腕っぷしでは騎士の方が強い。

 騎士を目の前にスキをさらしていく盗賊たち。その数ははみるみるうちに数を減らし、遂に最後の一人が打ち取られた。


 「そこに居る者出てこい」


 戦闘が終わるが騎士さんは警戒を解かずにこう言って来た。剣先は俺の方に向けられ太陽の光を軽く反射していた。

 どうやら騎士さんは俺の存在に気付いていたらしい。

 盗賊残党と思われても嫌なので敵意は無いと両手を頭の上に上げて草むらから出ていく。


 「気付いてたんですね」

 「急に目に見えて敵にスキが生まれたからな。こちらにも余裕が出来たから見つけられただけだ」


 草むらに怪しい男がいれば警戒しない方がおかしいだろう。

 そりゃあ疑われても仕方ないよな。


 「さっきのはお前の魔法か?」

 「そうですよ」

 「すまないが魔導書を見せてくれ」


 阻害系の魔法だったのに魔法を使ったのが分かったのか?

 騎士が魔導書を見せてくれと言ったのは、さっきカゼノさんが説明してくれた犯罪者かどうかの確認だろう。

 どこまで情報が確認出来るかは知らないがこの場で使徒だとバレてどうなるだろうか。

 馬車の中の人物が悪い人なら困るしな・・・


 「カゼノさん、頼むどうにかしてくれ」


 小声でカゼノさんに話しかける。

 俺にここで魔導書を出さないという選択肢は無い。

 彼女に任せるしかないだろう。


 「どうぞ」

 「あぁ」


 もう一人やって来て俺の魔導書を確認し始めた。

 少しすると確認が終わったようで魔導書を返してくれた。


 「疑ってすまなった」

 「いえ、あの状況じゃ仕方無いですので」


 確認するときに称号が確認されるのかは知らないが、上手くいったようだ。

 さすがはカゼノさん。


 「この馬車は街まで行くんですか?」

 「そうだな」

 「すいませんがご一緒しても?」

 「ちょっと待ってろ」


 そう言うと騎士さんは馬車に向かって歩き始めた。

 主人に聞いてくれるのだろう。姿を見せないのは賊を警戒しているか、よっぽど高貴な人物かのどっちかだろう。

 どうせなら男より女の方がいいよな。

 この誘いは周りの騎士が馬を持っていなかったから聞いてみたのだが、さっきの戦闘で逃げてしまったのだろうか。


 「お許しが出たぞ」

 「本当ですか。助かります。また、さっきみたいなのが出て来ないとも限りませんしね」

 「ここら辺は街に近いし比較的安全なはずなんだけどなぁ。あ、そうだお前歳いくつだ?」


 許可を得て戻って来た騎士さんが歳を聞いてきてので十九だと答えてやると騎士さんは驚いたような表情を浮かべた。


 「どうかしたんですか?」

 「魔法が戦闘に役に立つレベルで使えるようになるまで早くて二十年だぞ!?俺はてっきり魔法で若返ってるのかと思ってたんだ」

 「へぇー。そんな魔法もあるんですね」


 アネモイ様は素晴らしいチートをくれたようだ。

 俺も若返りの魔法を使ってみたいもんだ。まだ若いけどな。

 そうなると不老不死の魔法もありそうだ。時間があれば探してみるのもいいかもしれない。


 「お前、今日の宿は決まってるのか?」

 「いや、まだですが」


 別の騎士がやってきて今日の宿を聞いてきた。

 何か意味があるのだろうか。


 「どうしたんだ?」

 「いやな?オースティン様が礼として家に招待するとか言ったんだよ」

 「本当ですか?それは助かります」


 宿代が無くて心配だったがどうにかなってよかった。

 異世界の街並みはどんなんだろうか。今から楽しみだ。

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