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p.27[愛の力。相の力。]

 「・・・すいません」


 アリシアさんに抱かれてひとしきり泣いた後、冷静になった俺は恥ずかしさのあまり顔を伏せている。

 いい歳して何やってるんだろう。と思う。


 「どうして、謝るんですか?」

 「こんな恥ずかしいところ・・・我ながら情けない」

 「かっこいいじゃないですか」


 こんな俺をかっこいい、と言うアリシアさん。


 「私にはツバサ様の事情は知りません。ですけど、誰かのために何かを成そうとするその心の在り方はかっこいいと思います」

 「力が無ければ何も出来ないんですよ」


 微笑む彼女に苦笑いで返し、話を濁す。

 泣いてしまった姿を見られた後にかっこいいと言われても恥ずかしくてしょうがない。


 「何も魔法や剣の腕だけが力ではないでしょう?」

 「その他に何があるんですか?・・・俺には分からないんですけど」

 「それは、愛の力です」


 少し溜めて答えたかと思うと、愛の力だと彼女は言った。


 「愛の力?」

 「そうです。傷つけるだけが力では無くて、癒すための力もあると思いませんか?私には魔法や剣を使う事は出来ません。ですが私には人の心を癒す事が出来ます、救う事が出来ます。そう信じています」


 アリシアさんに俺の心が救われた様に、彼女はこの愛の力を使って闘っているのだろう。


 「力がある人間には力に見合った使命や、なすべき事があります。でも、一人で戦う必要はありませんでしょう?」

 「俺は力が在るのなら、力なき人を守るべきだと思ってた。それが力を持った代償だと。だけど俺は出来なかった。アリシアさんに助けられて、話を聞いて自分の無力さを知った」

 「これからは私がいます。だって夫婦になるんですから、ね、ツバサ?」


 アリシアさんの言動が胸を掴む。いきなり敬称略(けいしょうりゃく)で呼ばれて思わず彼女との生活を想像してしまった。


 「照れてるんですか?・・・フフッ」

 「・・・、て、照れてない!」


 沈黙してしまった俺を見てアリシアさんが笑うが、その顔がまた可愛くてさらに沈黙してしまう。

 これは尻に敷かれる予感が・・・。どうにかしなければ。


 「アリシアさん」

 「どうしたんですか?」


 アリシアさんの名前を呼んで彼女に近づいていく。手を伸ばせば肩に手が届くところまで行くが彼女が不審がる事は無い。一応は信頼されているのだろう。


 「俺を救ってくれてありがとう。アリシア・・・」

 「え!?、ちょ...ウゥ」


 アリシアさんへの仕返しとして俺も敬称を無くし、彼女の体を優しく抱き寄せ唇を重ねる。

 キスをした後、彼女は最初驚いていたが、嬉しそうに目を細めると俺の背中に手をまわした。


 「そんなの、卑怯です・・・」

 「お互いさまだろ?」


 しばらくの間、アリシアと顔を突き合わせて笑いあった。

 月光が俺たちを照らし、風が二人を包む。自然に祝福されているようで嬉かった。





 「昨日はお愉しみでしたね」

 「な、何の事カナ?」


 翌日の朝、いつの間にか帰っていたカゼノさんに昨日の事を聞かれ慌てふためく。


 「どうして知ってるんだよ」

 「アネモイ様が教えてくれましたよ?今頃、彼女にアネモイ様からプレゼントが行ってるんじゃないですか」


 アネモイ様あんな恥ずかしいの見てたのか・・・。自然に祝福されているんじゃなくて、神に祝福されてたのか。


 「アネモイ様と会話できるのか?」

 「出来ませんよ?神様と簡単に会話出来たら威厳が無くなる。って言ってましたけど」


 その時の会話の様子を教えて貰うと、アネモイ様は俺の事を凄い心配してくれていたようだった。アネモイ様なりに引け目があったようだ。

 その心配もアリシアのおかげで無くなったので、話が来た時は妙にテンションが高い状態で、用事を片付けていたカゼノさんに連絡が来たそうだ。本当に用事をしていたのかはカゼノさんの自己申告なので本当かは分からないが何かしらやっていたのだろう。


 「それで、どこまで行ったんですか?Aですか?それともB?ま、まさかCまで・・・」

 「うっさいな・・・Aだよ、A!これで満足か?」

 「えー、もっと聞きたいですー」


 無表情でそのセリフを言われても棒読みにしか聞こえないぞ。


 「いいから領主館行くぞ。ほら、魔導書になって」


 おとなしく本の姿になったカゼノさんを抱えて領主館に向かった。





 領主館に入ろうと門に向かっていると俺に気付いたのだろう兵士二人が敬礼をしてくれたので、一旦足を止めて返礼してから中に入った。

 今日も昨日の場所で訓練をしているのかと裏に向かうと素振りをしている姿があった。

 その場にエリックが居たので彼に話しかける。


 「おはよう。ごめん、遅刻だな」

 「いや、お前は待遇が違うから遅刻にはならないし、別に怒られたりもしないだろ。そこは兵達も分かっている。時間も教えて無かったしな」

 「そうか」


 エリックにはそう答えたが、明日からは今日より早く来ようと思う。頭では分かっているが昨日入ったばかりの新人がコレでは不満も出てくるだろう。

 エリックに訓練が始まる時間を教えて貰い広場の脇による。時計が無いので早めに行動した方がいいだろう。


 今日も一人で魔法の練習を始める。軽く体操をし終わると魔導書を開く。


 「カゼノさん今日は試したい事があるんだ」

 『何やるんですか?』

 「いや、魔法を一人で使ってみたいんだ。昨日出来たし魔力を見る練習にもなるかな、と思って」


 エリックから剣を受け取って魔法を使おうとして一つ昨日の事を思い出した。


 「カゼノさん魔法使えるの?昨日は『飛行(フライ)』使ってたけど」

 「一応使えますよ。魔力消費はツバサさん持ちですが」


 魔法が使えるようなので俺がしたい事を教えておく。

 そして、俺は俺で魔法を唱える。


 「『飛行フライ』、そして『浮遊剣(フローター・ソーズ)』」


 まずはカゼノさん——魔導書を目の高さに『飛行フライ』を掛けて、魔法の操作は彼女の意思で出来るようにしておく。

 次に『浮遊剣(フローター・ソーズ)』で剣を二つ浮かす。

 魔法を発動し終わると魔導書に文字が浮かぶ。


 『『浮遊剣(フローター・ソーズ)』』


 それと同時に複数の剣が浮かび上がり、俺を中心に大小二つの環状かんじょうを取る。


 俺の両手に二本。一つの輪につき四本ずつ。合わせて十本の剣だ。

 俺の両手の剣も合わせれば三つの輪だ。半分以上の剣はカゼノさんの操作だが、かっこよくていいな。


 俺自身にもフライを掛けて空中で三つの輪を回転させながら飛んでいると視線を感じたので下を見下ろすと剣の素振りをやめて俺を見つめる兵士達の姿があった。

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