p.23[作戦会議]
どうやらアビーさんは俺とカメーリアさんとで話がしたいようで、ココに来たのも俺を呼ぶためだったようだ。
カメーリアさんもついて来たのは兵士たちと顔を合わせさせるためのようだ。
カメーリアさんが普通に俺を使徒だと言ってしまったがどうする気だろうか。セバスチャンも流石にこの人数じゃ手に負えないんじゃないだろうか。
もう隠しておくのも面倒くさいし、使徒だと言ってしまうのも良い気がするんだが・・・。多くの人間に周知されればその分影響力も増えるからな。厄介事も増えるけど・・・。
「それで、私にお話とは」
場所は変わって対談室。俺が最初にアビーさんと会った場所だ。
向かいにはアビーさんが座っていて、カメーリアは何故か俺の隣に座っている。
「ヘリオス様からの信託で私はツバサ様の手助けを申し渡されましたが、具体的に何をすればいいか、という事です。アビー様から簡単な説明はしていただきましたが詳しくは三人で、と言うことでしたので」
「アビー様はどこまで説明を?」
「シルフィック卿から聞かされたドラゴンのお話をそのまま伝えただけですわ」
「そうですか」
今の段階で決まっているのはアネモイ様の神殿の禁書室に行くぐらいだろうか。
考えてみると全然決まっていない事に頭が痛くなる。
「今はドラゴンがいつ目覚めるのか、その場所すら分かっていません。後日、神殿にある禁書室に行く事にはなっていますが、それ以外には特に何も決まっていないんです」
「それでは王都に手紙を送ってみては?事が事ですし兵を派遣してくれるかも・・・」
「すでに手紙は送ったのですが、国王の・・・ヘンリー三世でしたっけ?その王様に嘘だと言われてしまいましてね」
王都へと手紙を書いたらどうかと提案してきたカメーリアさんは俺の返答を聞くと、口を開け呆然とした表情になった。
凄い顔だな。これではせっかく整った顔をしているのに台無しだ。
「使徒からの情報なのに・・・そんな事、許されるはずが」
「そうですわね。神殿も舐められたものですわ」
そんなに信じられない事のようだ。
話を聞いてみると、俺の言葉は神の言葉と同等の決定権を持っているようだ。因みに、カメーリアさんはヘリオス様の神殿の教皇に言われて、この任について居るようなので神具を持っているからといって、そんなに強い発言力は無いそうだ。
「まあ、それは置いておくとして。王都からの援軍は来ないと考えるしかないでしょう。何かカメーリアさんの方から提案はありますか」
「え、えっと。そうですね。ヘリオス様のように他の神々もこの事態に気付いてもいないかもしれませんし神殿を一通り回ってみるのはどうでしょうか」
国王の話で呆然としている所に急に話を振られて若干素の部分が出ていたが、話していくうちに落ち着いて行ったカメーリアさん。
確かにヘリオス様の神殿に立ち寄った事でカメーリアさんに会う事が出来たし、ほかの神殿でも何かあるかもしれない。
「それはやってみる価値はありそうですね」
「ヘリオス様の神殿の禁書室への立ち入りも許可されています。もちろん、見たことについては他言無用ですが」
ヘリオス様の神殿の禁書室にも行けるようになったようだ。ありがたい。
「私からは、領内の地理書を見る事、ぐらいでしょうか。ドラゴンが冬眠している場所の健闘がつくかもしれませんし、見て損は無いと思いますわ」
「地理書ですか。アビーさん、一般的なドラゴンの体躯はどのくらいの大きさでしょうか」
「小山程でしょうか。伝記ではその様な大きさだと書かれていましたが、本当かどうかは怪しいですわ」
小山ってどのくらいの大きさなんだ・・・?分からないけどそんぐらいの大きさだったら結構どこでも隠れれそうだよな。
「その伝記の中に他にドラゴンについて書かれている事はありますか?できればその本の題名も教えてください」
「本の題名は『一人の女性に捧げる、その後』だったかと思います。小さいころに禁書室に忍び込んで読んだことがあります。ドラゴンに関する記述ですが、何分私が小さい頃に読んだ本ですので記憶が曖昧なのですが神級魔法使いが二人にエルフが一人が戦っていたように思います。並みの魔法では歯がたたなかったとか」
エルフも居るのか。獣人は期待してもいいのだろうか?
それにしても神級魔法使いが二人、エルフが一人。合計三人でドラゴンと戦ったのか。
俺が神級魔法使い、カメーリアの神具で神級がもう一人。その伝記に出て来る人達の力量を俺は知らないが、今の戦力では火力不足だというのは分かる。エルフは長寿である、という話はよく聞くが当時戦っていたエルフが現在も生きていると考えるのは楽観的な考えだろう。一度会ってみたいものだが。
「歯が立たないで思い出したんですけど、革職人を紹介して貰えないですか」
「構いませんけど、どうかしたんですか?」
「本を止める道具が欲しいくて、作って貰おうかなと」
エイデンさんに歯が立たなかった事を思い出し、魔導書を止める物が欲しいと伝える。
アビーさんに見えるように魔導書を持ち、軽く左右に振って見せた。
「ツバサ様は同期はなされていないんですか?」
横から声が掛かったのでそちらを向く。
カメーリアさんが手を胸に当て何かを引き抜くような動きをすると光が集まって魔導書が現れた。アビーさんも同じような要領で魔導書を出していく。
カメーリアさんの魔導書はえんじ色。アビーさんの魔導書は白に緑が薄く溶けたような色だった。
「私の魔導書はちょっと特別なんですよ。カメーリアさんのその剣みたいに、神具と呼ばれる物だと思うんですけど・・・。まあ理由が色々とありまして同期できないんです」
俺が適当に言ったのが逆に二人の興味を引いたようで、視線が魔導書に注がれる。
このままだと長くなりそうだったので一つ咳ばらいをして、この話のまとめに入る。
「とりあえず、これからやるべきことをまとめますね。まずは神殿を巡って他の神様の協力を仰ぐ事。アネモイ様、ヘリオス様の神殿の禁書室での情報収集。地理書でドラゴンが居そうな場所を調べる事。このぐらいですか?」
「今のところはそうですね」
「私の方からも教皇様に国王様へ手紙を書いていただきましょうか?」
「そうですね、よろしくお願いします」
カメーリアさんの方からも国王へと手紙を書いてもらえそうだ。正直、あの王様は気に食わないが背に腹は代えられないからな。ココは我慢だ。
アビーの魔導書の色は秘色です。




