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タイマーの音と同時に口を開いた秋。その直後にコールをした三人の順番は、夏。春。冬。だった。

 

三ターン目にして、ようやく夏を倒せる可能性を見つけて。

今回こそ、──してやったり。そう思って不敵に笑っていたのに。

警戒するべきだったのだ。最高の瞬間。自分が誰かを罠に嵌める時こそ、自分も最も罠にかかりやすい時なのだから。

 

驚きの声を上げて春に視線を集めた三人は、最年少の少女に、面白いぐらいにして・・やられたのだった。



目立たないこと。それは意外にも困難なことである。そして、息を潜めることは、時に何より絶大な策になっていることもある。

──春ちゃんには、イカサマしかない。

その驕りが。慢心が。傲慢が。

一人だけ六ポイント。という決定的な差を作り出したのだ。


 小さめの背もたれで腰を痛めたのか、大きく背筋を伸ばしたかと思うと、秋は突然立ち上がって、今度は後ろのベッドに座り込んだ。

枕を挟んで、壁に寄りかかる。さすがに疲れが出てきたようだ。

すっかり冷めてしまったコーヒーが、時間が過ぎたことを物語っている。


さっきより高い目線になったことで、見下ろす形になった秋。一点を見つめて。

「やってくれるじゃねぇか。春ちゃん」

奇しくも、一ターン目に夏に思せた言葉そのままを、今度は秋が口にする。

しかし、あの時とはあまりに違う今の状況に、その言葉の重みたるや。

「秋……最弱……」

眉間にシワを寄せた悔し顔を隠せない秋を、バカにするように。

春が、前と同じセリフで返答する。

飛びっきりの笑顔を携えて。


苦虫を噛み潰したようなその顔のまま、秋と、もう一人の被害者冬は、春を睨みつけることしか出来なかった。



積み上げられたゲームの山。本棚に並ぶは、無数の攻略本。

しかし、そのどれにもページを開いた形跡すらないところをみると、どうやらコレクションしているだけらしい。

散乱するコントローラーを避けるように引かれた焦げ茶色のカーペットの上には、同じ色の机が一つ。さらにその上に、四つのティーカップが無造作に置かれていた。

薄い青色の壁紙と、それとは対照的な電球色に覆われた部屋。

その部屋に、強くなった雨音が木霊していく。


手の届く範囲にあったお菓子の中から、ポテトチップスののり塩味に手を伸ばした秋は、それを大胆に広げて、机の真ん中に置いた。

「まぁ、春ちゃんにしてやられたことは置いといて、何分か休憩するか」

そう言った秋の周りを飛行する、夏の代表的なその虫は、どこから紛れ込んだのか。突然現れて、耳元で羽音を掻き鳴らす。

雨やゲームの件から、苛立ちが溜まっていたのだろうか。その存在が気になった冬が、立ち上がり飛んでいる蚊を殺そうとした。その瞬間。


「おい! なんだよあれ!」


ふと外を見た秋の大声が響くと同時に、ひどく続いていた雨音が、止んだ。



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