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掌の上

ハッとして、それでも誰も、思考を止めない。

 それは幾度のゲームを交わしてきた者たちの、意地か。本能か。


──私は最初から、決めている。

焦る様子もなく、周りを観察する夏。

──作戦は死んだか。ならとりあえず、最善手を。

自らが潜めた策も、夏を倒すための作戦も暴かれ、簡易な行動しかとれない秋。

──ポイント……必要……。

秋と同じく三ポイントを狙う、春。

──ちょおームカつく。でもやっぱ強いな夏ぅー。まぁだからこそ、やらせないよぉー。

夏だけは勝たせまいと、あだ名に似合わず燃える、冬。


一秒にも満たない沈思黙考の後、またも春夏秋冬の順に、それぞれの季節が飛び交った。


「春……」

「ふふっ……秋」

「秋!」

「夏うー」

 

秋が張っていた戦略。それがバレた時点で、夏を倒すための共闘作戦は白紙に戻っていた。

 本来なら二ターン目は、一ターン目でポイントを得た冬の協力で、今度は秋か春がポイントを得る。という筋書きだった。

 しかし、そもそも一ターン目に唯一ポイントを得ていたのは、冬ではなく秋だった。

 しかも、冬と春にとっては、被らないで季節を言えばいいだけだと思っていたゲームが、突然、被らずに季節を言ってもらうゲームになった訳で。

 この現状で、最初に作った策を押し通すなど、愚の骨頂だった。


 二ターン目が終了して、ポイントを得ていたのは、冬以外の三人。

 春が三ポイントで。秋が一ポイントで。夏が一ポイント。

 そして、この状況を分かっていたと言わんばかりに。歪んだ笑顔を浮かべて。

「ポイントありがとね? 冬」

 馬鹿だと罵るより、夏は薄汚れたお礼を口にし。相手を煽る。

「ゲーム中は本当に性格悪いな。夏」

 少々引いた様子で、秋が苦笑する。

「ゲーム前からあんなことしてた秋に言われたくないわよ」

 冷たい目と言葉で。秋を挑発しているのはあからさま。

「夏……怖い……」

 今度はだいぶ引いた様子で、春。

「相手の心理を読むのも誘導するのも壊すのも、全部私の十八番だって知ってるでしょ?」

 だが、夏がそれを気にするはずもなかった。

「馬鹿なのに強いんだよねぇー夏ぅー」

「あら? 馬鹿っていうのは、頭は良いのにそれを活かせないどっかの天才ちゃんの事を言うんじゃないの?」

「言ってくれるじゃん、夏うー」

 言葉からでは読み取れない、煮えくり返る内心を。されど、冬は鬼の形相で。

「なんで三ポイントを取りにいかなかったんだ?」

 空気を変えようと新たな話題を振る秋に。

「分かってたからよ。あれだけ挑発すれば、冬なら必ず私の得点を阻止しに来るって」

「なるほど。ついでに俺が最善を選ぶこともお見通しだったわけだ」

「もちろん。渾身の伏線を破られて、これ以上手がないってこともね。残念ね。私がいなきゃ、ゲームを始める前から勝ってたのに」

 特別いやらしい顔で、心を見透かしたように夏が嗤う。

 その不気味さは、──今後のゲームも全て、掌の上。そう言わんばかりで。


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