伏線
18時を過ぎてしまいました。
申し訳ないです。
明日以降はまた18時に更新します。
再び押されたタイマーの開始ボタン。同時に、五十九、五十八、と数が減っていく。
秋が、机の中央に携帯を置き直したことによって、全員がそちらを覗く。
だが、四人の誰もが、秒数になど一ミリの興味も持っていなかった。
ぼんやりとその周辺を見ているに過ぎなく、動かしていたのは思考だった。
この場を、今この時を、このゲームを、本当に理解して把握して、支配しているのは誰なのか。
全員がそんなことを考えていた。
だが、それこそ悩むまでもなかった。
──そんなの、自分以外にいるはずがない。
それぞれがそれぞれ、その根拠たる策を持ち、その策を発動する機会を窺っていた。
だからこそ、その時を今だと感じた者の手によって。
まだ僅か二ターン目にして、ゲームは大きく動き出す。
「ねぇ秋、一つ聞いていい?」
「ん? なんだよ」
二ターン目が始まって早々に口を開いた夏の方へ、秋以外の二人の視線も自然と移る。
その視線を待ってから質問を続けた、夏。
「このゲームってさ、被らない季節を言った人の勝利? それとも、被らない季節を言わせた人の勝利?」
ニヤッと笑った夏は確信していた。
──自分は、秋が巡らせていた伏線を既に看破している。と。
そして、それが意味するところも。
「……どういう意味だよ?」
「別に? そのままの意味よ」
解答の前どころか、質問の遥か前から返答を知っている夏の、すっとぼけたような、だが笑みを隠せていないその表情に、秋は絶望の色を見せた。
「えっ……どういうことぉ? 夏ぅー」
自分が語るべきではない。とわざとらしく秋を指差す夏。
それを得て、再度視線を移した冬。
その視線の先で秋は、ため息混じりに口を開く。
「──誰とも被らなかった奴が勝利。ってのはつまり、意味が二つある」
「……あっ……」
やっと理解して声が漏れる、春。
苛立ちを隠せない様子で、秋は髪を掻き毟る。
「正確に結論を言おう。このゲームは、被らない季節を言った奴が勝ち。ではなく、被らないで自分のあだ名と同じ季節を言わせた奴の勝利だ」
確かに、「被らなかった奴=言った奴」とは誰も言っていない。
だがしかし……。
「そんなのってありかよぉ秋ぃー」
ずるいと言わんばかりに振舞う冬に、ニヤニヤと言葉を返したのは、夏。
「気づかないのが悪いのよ。現に私は気づいてた」
「ほんとにぃー? だってそのセリフがあったのゲーム前だよぉー。仕掛けるのが早すぎるよぉー。どうやって気づけば……」
「そう? 得点は自分で把握しろ。なんて、本当は自分が点を得たことを言いたくない。としか思えないわよ。ねえ? ヒントはあったのよ。気づける可能性があったのに、──気づけなかったから、そんなのずるい。ていうのは、あまりに……」
続くセリフを止めた夏の、嘲笑う表情が、冬の返す言葉をなくさせる。
──秋が飲んでいる砂糖ミルク(自称コーヒー)より、甘々だわ。
続くはずだったセリフが冬の脳を過ぎる──。
瞬間、再び、甲高い音が全員の耳を貫いた。




