運命
「さて、全てのタネ明かしが終わったところで、どうする? 俺たちを代表にしてみるか?」
それぞれのコピーロボットをただの人形に戻して、抱えながら秋が尋ねる。
「そうじゃな……じゃが主は、嘘つきゲーム自体はわしに負けておるではないか」
顎に手を当てて悩んでいた王、思い出すように口にする。
「その前に一つ。お前のその崩れやすいキャラと口調もういらないんだからやめちまえよ。鬱陶しい」
「あ、やっぱりバレてた?」
全く関係ない返答をした秋だが。
やりづらかったんだよねー、とコロッと口調を変える王。
「先に言ったろう? お前らの敗因は俺らを敵に回したことだって。俺一人じゃ無理でも、俺ら四人なら、コピーロボットの件から想像できるだろ」
ここまでを見る限り、秋の強さだって、常軌を逸している。
その秋と互角の王は確かにすごいが。
その秋より強い三人が、さらに秋の味方に付けば。
なるほど、結果は火を見るより明らかである。
「んーでもなー」
「まだ信用できないなら、測ってみればいいんじゃないかしら? 今度はこっち、四人でやってあげるから」
悩む自分の心を読んで話を進める夏に、やっと気づき、王は思う。
──なるほど。ここまで想定しての、あの言葉だったのか。
「じゃあ、再戦して……ください」
頭を下げる王と四季に、四人が笑い、その思いを代表して、秋が口にする。
「じゃあまずお前ら……ゲーム部に来い!」
目を丸くして驚く二人に、だがもう何も言うことはない。
二人も、何も尋ねない。
言わなくても、伝わるから。
「うん! 行こっか!」
四季が大きく頷く。
嬉しかった。
何も言わず、脅して、騙して、色んなひどいことをした自分たちを、許すとも言わず、誘ってくれたことが。
「仕方ねぇな。ゲームの強さはそこで──」
「じゃあちょっと待ってて! すぐ支度してくるから!」
同じ気持ちの王が、照れる顔を背けながら言おうとするのを遮って。
王の手を引き、書斎の外へ飛び出していく四季。
「面白そうだからー私たちも行こうよー」
「……春……も……行く」
同意を得たことをいいことに。
誘拐犯のように春を連れ去っていく冬の姿が、遠くなっていく。
「秋は行かないの?」
「夏の方こそ」
顔を見合って、互いに尋ねてみる。
だがお互い、待っていると決めている様子だった。
「帰ったら、四季たちも入れて、前のゲームの続きをしないといけないわね」
暇を潰そうと優しく笑って話しかける夏に。
「……なんで? あのゲーム、もう俺の勝ちだよ?」
喧嘩を売るように秋が返答する。
「何を言ってるの? ついにボケたのかしら。あのゲームは中断しているはずでしょ?」
「中断するなんて一言も言ってねぇよ。ボケてんのはそっちだろ」
笑い合いながら、言葉で殴り合う二人の会話は続く。
「タイマーとして使ってた携帯は置いてきたままのはずよ?」
「時間を計るタイマーは、あの携帯のみなんて限定してないんですが。馬鹿なんですか?」
自分のジャブを避けて、わざとらしく挑発する秋。
イラッとしながらも、夏は考え、気づく。
「この星のタイマーを使ったわけね。でも秋なんて単語一分ごとに毎回言ってたら、いくら馬鹿な秋くんでも、頭がおかしくなったと思われて、病院送りなんじゃないかしら?」
「あれー夏さんまだ分からないんですか? ……日本語だけとも限定した覚えはないんですが」
お互い嘲笑して、相手を見下しながら言い合う。
そんなやりとりも大詰めといったところで。
秋の返しに夏が初めて、意図を汲み取れずに戸惑う。
表情に出さないように努めながら、思考を巡らせる。
日本語に限定していないということは、日本語以外で言ったということ。
だが、癪なことにゲーム部には、二人の頭の良さを──いや人類の限界を、遥かに超越したような天才児、冬がいる。
十数ヵ国の言語、手話、点字、それら全てを操れる冬に、全く気づかれず外国語を話すのは、不可能と言っていいだろうに。
──どうやって?
いや、違う。
冬にバレずに外国語を言えたならば、それは紛れもなく、秋が冬より頭が良くなったということ。
だが、そんなことは有り得ない。
自分が秋なら、どうするか──。
どうにかして冬に気づかれないようにするんではなく。
最初から、冬には気づけないだろう言葉で狙う。
──ハッと。答えが夏の頭を過ぎった。
その表情を見て、今までで一番ムカつく、不敵な笑みを浮かべて。
「そう。フランス語や英語だけじゃない。宝石言葉や──花言葉だって、言葉だよな」
──やられた。
歯を噛み締めて、悔しがる夏。
ここに至ってからの夏は速い。
四季との対戦中、何かと理由をつけて、一分ギリギリで秋が口にしていた花言葉を全て思い返す。
その花言葉は──純潔、片思い、要注意、の三つ。
そして、その花の名は。
「秋桜、秋海棠、秋の麒麟草」
同じ花言葉なんて、無数にあるが、これを選んでいたと言われれば、それまで。
「一分ごとにちゃんと、秋って言ってたんだぜ? 三ポイント✕三回で九ポイント。プラスそれまでのポイントで、完璧な俺の勝ち」
ムカつくが、言い返せる言葉はない。
まさか、ゲームをやりながら、違うゲームの勝利も一緒に収めるとは。
「やってくれるわね。本当に……」
落ち込みながらも、どこか清々しい顔で夏は言った。
そして、支度を終えた四季たちが大荷物を持って駆け寄ってくる。
「ねぇねぇ。何話してたんですか?」
「ん? 秋が、四季との勝負で手を抜いてたって話」
「……なんですって?」
「うわっ! 夏なんてこと言うんだ! 違うんだ! 手を抜いてたんじゃない。ちょっと違うこと考えてただけで」
「違うことを……考えてた?」
「あっ……」
「「「「アハハハハッ」」」」
まったく秋は、火に油を注ぐ天才だ。
四季と秋以外の四人が、一緒に笑った。
この後、地球に戻った秋たちは、見事王様に認められ。
他の星の王たちと、また熾烈なゲームを戦い抜いていくわけだが。
──それはまた、別のお話。
ある日突然、空から女の子が降ってきた。
そんなこと、普通の人ならまず皆無だろう。
だが、いつかこの出逢いを、彼らはこう呼ぶのだろう。
運命だったと。
何故なら彼らは、運命というものが、好きな生き物なのだから。




