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種明かし

哀れむような目をして、鼻で笑う秋に。

図星を指された二人は、だが何を口にすればいいか分からないでいた。

そんな二人に、──差し当ってまずは、と秋は口を開く。

「状況を分かっていないてめぇらと、何も分かっていない可哀想な読者のために、何度も言っているタネ明かしをしてやろう」

「だから読者ってなんですか読者って」

こんな場面でも、本能的に一応ツッコミを入れる四季を、軽く無視して。

「おかしいところ、思うことは、山ほどあった。まず一つ。何故お前らは俺たちとゲームをしたいのか」

「それは、ゲームの賞品から気づけるわ。つまりあなたたちの目的は、──私たちを手に入れること。そうよね?」

椅子から離れ、秋の元へ歩きながら夏が言う。

「二つ目。俺たちが必要なら、力尽くでいいはず。ゲームをする必要はどこにあるのか」

笑って視線を送る秋。

それを受け二人目が、話しながら歩いてくる。

「ゲームの強さをー測りたかったんじゃないのぉー?」


何故、武装で圧倒しているのに、それを使って手に入れないのか。

わざわざ秋たちとゲームをする必要があるということ。

自分たちよりゲームが強いか確認している。

それが、考えられる中で最も可能性の高い答えだった。


「三つ目。何故、ゲームの強さを測っているのか」

三人目の少女が、秋に近づきながら、小さな声で教えてくれる。

「必要……ゲーム……強い人……」

ギュッと自分に抱きつく、春の頭を撫でながら、秋が頷く。


王たちが欲している者たちとは。

ただの秋たちではなく──ゲームの強い人間。

それを踏まえ、四つ目に。


「では最後。何故、ゲームの強い人間を欲しているのか。そして、この星には何故、人類がお前らしかいないのか。それと、四季が、仲間の命を賭けたことについて怒った時、俺の後ろに見ていたものは何なのか」

秋の元へ集まった三人が、それぞれ答える。

「これから、負けられないゲームに挑むから」

そう──もう後がないから。

「この星の人間をーゲームの掛け金にしてー負けたからかなぁー」

違う星の人類に──持って行かれたから。

「……自分……」

秋と同じように、友達の命を賭けてゲームに負けた──四季自身。


王と四季の額に、汗が滲む。

見抜かれた内容について、何も言い返せる言葉がない。

それほどに、全てが、四人の言う通り。

彼らが何と言おうと、王たちのそれのほとんどは、ヒントや失言とは言えず。

たったあれだけで、その答えにたどり着くなど。

まるで本当に──。

「──心が読めているようでしょ?」

「……確かに見事じゃ。じゃが……それでもお主らは負けた!」

他人の心の声を、笑って先読みする夏の顔を、恐怖から、王は直視できず。

だが、何とかゲームの勝敗に話を逸らし、言い返した。

「あぁ。まだそっちが残ってたな」

が、まだ気づかないのか、と同情を込めて冷笑し、秋は淡々と口にする。

その態度に、王は怒りのままに言う。

「結局勝てねぇなら、お前らなんか意味ねぇんだよ! 再戦もしねぇなら、奴隷にした奴ら今すぐここで──」


銃口を向けようとして、固まる王。

誰に銃口を向ければいいか、分からずに。

夏と冬と春の三人が、二人ずついる故──。

「これで分かったか? 俺たちは再戦しないんじゃねぇ。する必要がねぇんだよ」

秋の言葉と、突然現れた人間に、血の気が引いていく王と。

目の前の七人を見てもまだ、理解出来ていない様子の四季。

そんな二人を指差して、秋は薄く笑って続ける。

「お前らの敗因はただ一つ。──俺らを敵に回したことだ」

敗因という言葉に──ここに来る前から、幾度となく言われたセリフが、沈黙する四季の頭を過る。


──全部終わった。もう勝ってるから。


ずっと、その言葉の意味は、どうやって再戦するか。そして、再戦したらどうやって勝つか。

その方法を編み出したという意味だと、思っていた。

──でも、違う?

唯一、この状況を理解出来ないでいる四季の脳が、必死に回転し、命令する。

集めたパズルのピースを──繋ぎ合わせろと。

この場に着く前から、秋に、再戦などする気はなかった。

それはつまり、仲間を取り返す気がなかった。ということ。

どうして? 仲間が大切でないはずがない。なら、つまり──。

つまり、つまり、つまり。

「……最初から……奪われていない?」


自分に勝った相手に、相手の敗因を語る。

矛盾した行動の意味が、四季の中で繋がった。

息が漏れるように呟いた四季の正解に。

秋の口元が、静かに緩んだ。


そう。奪われていないから、取り返す必要もない。


だがすぐに、新たな疑問が生じる。

それ即ち──何故奪われていないのか。

しかし、その問いの答えは、既に目の前に用意されていた。

やっと四季も、全てを悟って。

あまりの出来事に、圧倒的な行いに、ゲームの神童を見た思いで。

震えた声で、たった一言。

「……コピーロボット」

「正解だ。こんな危ないゲームに、仲間を巻き込むわけないだろ」

秋の言葉と同時。

顔を隠していたベール剥いで、四季が言い当てるのを待っていた七人が、優しく笑う。


一体いつから。

そんなものは、愚問だ。

トイレに行くと見せかけて武器になる拳銃を探し。

今度は、その拳銃のためにトイレに行ったのだと思わせ、裏では瞬間移動の装置を使用。

だが、それすらカモフラージュ。

あの時──本当の、本当の本当は。

何があっても、殺されても、いいように、自分たちとコピーロボットを入れ替えていた。

想像を絶するとは、こういうことを言うのだろうと四季。

城に来てからを思い返す。


無造作に置かれた機器の中に、コピーロボットと瞬間移動装置の二つの名を聞いた秋たち。

城に来て数分で、自分たちの計画を見破り破綻に追い込み。

そこからの全てが、秋たちの掌の上。

何をしようと無意味。何もかも、詰んでいた。

まだ、何も始まっていなかった、あの時点で。


へらへらと笑っている秋の横顔に、何故こんな人が──と思いながら、気づく。

それ自体が、術中なのだと。

ゲームが始まって、もしくはその直前になって、真剣な顔を見せる秋に、ほとんどの者がそこから警戒を始める。そして考えを改める。

だが、それでは遅すぎるのだ。

本当に怖いのは、笑っている時の秋。

何故なら秋のあの真剣な顔は、始まりの合図ではなく。

終了の合図なのだから。

警戒させないこと。そして、相手が警戒した時には、全てが終わっていること。

へらへらしていることにすら、意味があったのだと気づいた四季は。

秋の笑顔に、再び、感心した。


天晴というほかない。

ただただ感服する思いが、四季の心を埋めていく中、だが認めたくないという気持ちもそこにはあった。

「嘘だ! だって……もしそれが本当なら──」

四季と同様の思いが、王の胸にもあったのだろう。

四季より先に、──信じられないと否定する。

出来る出来ないの話ではない。

もし本当に、ずっとコピーロボットだったとしたならば。

あの時から、ずっと運命を支配してきたというならば。

花言葉しりとりで死闘を行ったのも。

王とのゲームで、負けられないと口にしたのも。

プライドを捨て、恥を忍んで、土下座をしたあの場面も。

無様だと笑う敵に、カッコ悪くないと涙を流し引き下がる少女も。

自分の命と引換に、仲間を守ろうとした行動も。

──全てが演技。全てが、コピーロボットによる偽りの産物だったということ。


「嘘だって……言ってくれよ……コピーロボットだったなんて、あの全てが偽りなんて……あんまりじゃねぇか!」

ゲームに負けてなお、食い下がる姿に。

こいつらだけは、と頭を下げる姿に。

友達のために、泣く姿に。

今までありがとう、と命を賭ける姿に。

王様のキャラを守り、敵役に徹しながらも、自分を重ね──感動すら覚えた気持ちが、溢れてくる。


悲しい瞳で、願うように自分を見る王に。

すぐに、嘲笑う眼をした秋、だがグッと唇を噛み、見つめきれず逃げるように目線を逸らし、顔を伏せ、僅かに沈黙。

そこから、涙を溜めた顔を上げ、歯を噛み締めてから、吐き捨てるように口にする。


「──嘘じゃねぇよ」

──何だったんだ。あの時、友情を、大切なものを見た気でいた俺は、何だったんだよ。

「夏たちを、命より大事だって思った気持ちは、コピーであって、嘘じゃねぇ!」

胸ぐらを掴んでやりたいと、ぶん殴ってやりたいと、思っていた王の耳に、思いもよらぬ言葉が伝搬する。

力強く響いた偽りない秋の言葉は、王の求める答えだったのだろうか。

今まで、自分を責め続けた王の心を、救える一言だったのだろうか。

分からない。

だが、綺麗な涙を流す、王と四季の心は言っていた。

──選んだのが、この人たちでよかった。

ゲームが強く、そして、気持ちを分かってくれる。通じ合える。

優しい人たちでよかった。


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