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春夏秋冬

「またそんなにお砂糖入れて! 虫歯になるわよ」

「うるさいなぁ。コーヒーってのは砂糖二割とミルク八割の飲み物なの」

「それ……甘めの……牛乳」

「はっはぁー。言われてるぞ秋ぃー」

薄暗く狭い部屋の中で響く四人分の声。

その内、男の声が一つだけ。秋と呼ばれた彼の本名は秋圭史。正しくあだ名の通りである。

「お前らだって! タバスコ入れたり、梅干し入れたり、何も入れなかったりしてるだろうが!」

「はぁ。辛いコーヒーの良さが分からないなんて可哀想な人ね」


秋に対して姉口調で話をする一人目の女が、石倉花火。あだ名は夏。歳は秋の一つ上で十八歳。高校生になって一人暮らしを始めた秋の、隣に一人で住んでいる。最近は、一人っ子の秋のお姉さん的存在で、究極の辛味好き。


「クエン酸……大事……」


ある事件から、話を単語のみで行うようになった二人目の女が、神崎桜。あだ名は春。女というよりは女の子と表現するべきかというほど、身長もその他諸々も小さい。歳は秋の一つ下だが、見た目には、小学生と言っても違和感がない。異常な酸味好き。


「私は別に普通じゃない? 秋ぃー」


語尾をやたらと伸ばして話している三人目の女が、猪瀬由紀。あだ名はもちろん冬。歳は夏と同じである。自称夏の親友であり、自称美の体現者であり、自称秋の許嫁だという。要するに自信家なのだ。ゲーム部以外に友達はいない。作る気もないらしい。無類の苦味好き。



綺麗な雨が降っていた。梅雨が明けたはずの七月に、長雨が顔を見せていた。

秋の部屋に雨音が響く。

先日、素敵な水玉模様の傘を買った夏とは違い、雨があまり好きではない秋は、その音すら耳障りだった。

そんな、天気も優れていない十五時過ぎに、わざわざ四人が集まったのには、それなりの理由があるわけで。

「いいじゃねぇか! じゃあ誰の飲み方が一番か、決めようぜ!」

二回目に入れたコーヒーが、そろそろ無くなろうかという頃、目糞鼻糞の戦いをしていた四人の内三人が、「またこれか」と呆れだした。

「今日……何?……」

「よくぞ聞いてくれたぜ春ちゃん! 今回のゲームはこれだ! 春夏秋冬ゲーム」

「センスのない名前ね」

「前やった、複数人ヌメロンのが楽しそうだよなぁ? 夏ぅー」

コーヒーを机に置いて、夏を指差した秋に、忌憚のない意見が浴びせられる。

個性豊かで何ら共通性のない彼ら四人を繋いでいる確かなものがここに二つある。

一つは、四人全員とも病的なほどのゲーム好きであるというもの。

一度反発や食い違いがあれば、全ては秋の宣言のもと、ゲームが開催される。

「一分のインターバル終了と共に、四つの内好きな季節を四人同時に言う。その時に誰とも被らなかった奴が勝利。勝者には原則一ポイントが加算される」

「ほんと秋ってめげないわよね。いいわ。原則って何?」

「自分で自分の名前の季節を言って勝利した場合のみ、三ポイント加算されるルールにしよう」

「おーそそるねぇー秋ぃー」

「負け……いつもの……」

「オッケー春ちゃん! 勝者は最下位になんでも一つ命令してよし!」

「ゲーム……スタート……」

次々と決まっていくルールに、疑問や質問を挟む余地も意味もない。楽しそうな全員の横顔が物語っていた。


──疑問は勝利へのヒント。敵にくれてやることはない。自分たちで自由に理解しろ。


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