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四季

──場所は移って、秋の家。一階。リビング。

キッチンと一体になっていることもあり、さすがに秋の部屋よりだいぶ広い。

トイレと脱衣所以外の一階のほとんどを占めている。

テレビ台とソファの間に引かれた絨毯の上に、仰向けで寝かされているのは、連れてきた少女。桃色の毛布を掛けられて。


その少女を囲むようにして、四人が正座している。

「大怪我がなくてよかったな」

「あの高さから落ちて怪我のないことの方が、問題な気がするのは私だけかしら?」

小声で話を始めたのは、英文字がデザインされたTシャツを着た黒髪の少年と、膝に届きそうなほどの長髪を赤く染めた大人びた少女。

ゲーム部最強と最弱──友達どうしの秋と夏。

小声で話しているのは、気持ち良さそうに寝ている少女を起こさないためだろうか。

「この子……可愛い……」

と感想のみを述べたのは、仰向けの少女を優しい目で眺めながら話を聞いていた、ゲーム部もう二人の少女の内の一人だ。

高校生には見えない、矮小で童顔な少女。

ゲーム部最年少──春ちゃんこと神崎桜。

「あっ、目を覚ますよー皆ぁー」

寝ている少女のピンクの髪を撫でながら、さらに話を続けたのは、ゲーム部最後の一人。

白色の面持ちと澄んだ青い瞳をした少女。

ゲーム部の──いや、世界の最高頭脳を持つ、冬こと猪瀬由紀。


「うっ……んっ……へぇっ!?」

ぼんやりと、どこか遠くを見るように瞳を開いた少女は、オレンジ色の光の手前で、自分を覗いている四人の人だかりに、俊敏に反応した。

「怪しいものじゃないわ大丈夫よ? あなた、名前は?」

 優しい目と口調で話しかけ、首を傾げた夏。

 それに対して、身体を起こし、後ずさりをしながら、少女が答える。

「えっ? えっと、リルル・シキーです」

 戸惑いながらも、聞かれた通り名を口にした少女。

そしてその名は、まるで謀ったようで。

「四季? いい名前じゃねぇか!」

「ゲーム部にぴったりだねー四季ぃー」


あれほどの天変地異を見せられ。しかもその中に無傷でいた謎の少女を前にして、普通の人間なら色々聞きたいこともあるだろうに。

彼らが一番関心を持ったのは、シキーという名前とは。

やはり、彼らは頭のネジがいくつか飛んでいるのだろう。

現状に呆れる夏と、無関心の春はまだ僅かにマシか。

「それで? あなた宇宙人よね? なんであんなところにいたの?」

──前言撤回。いくらあんなことがあったとはいえ、いきなり宇宙人と認識していたとは、さすがはゲーム部部長か。

「まぁ宇宙人なんてゲームじゃよくあることだからな」

「ここは現実だ」というツッコミをする者も、このクラブにはいない訳で。


手を叩いて注目を集め、本題? に戻った夏のその質問に。

四季は少しの沈黙の後、さっきまでとは違う空気を漂わせ、企みを含んだしかし天真爛漫な笑みと一緒に回答した。


「ゲームの強い人を探してたんですが──皆さんはゲーム弱いから関係ないですね」


聞き捨てならない一言だった。

攻略したゲームは数知れず。

二階の部屋だけに収まらない、一階のテレビ台の下にも連なる無数のゲーム機とソフト。

クリア済みのそれらが物語る、ゲーマーとしての過去の記録。

いくつもの称号を持つ彼と。

そのゲーマーをも弄ぶ異端の天才児たちに。


ゲームが弱いなどと。


また、なにより気に入らないのは、四季の、秋たちを知っているかのような口ぶりだ。

いや、秋たちは皆、薄々は気づいていたのだが……。


あの光景を見ることができたのは秋たちだけ。ならば明らかに、秋たちを知る誰かが見せていたと考えるべき。

もしそんな者がいるならば、その者はおそらく。

──四季自身かその関係者。


そしてやはり、その想像は当たっていた。

つまり四季は、最初から秋たちを知っていて狙っていたのだ。


──なるほど。

と、しかし怒りの表情ではなく不敵な笑みを浮かべて。

四人共に理解した。どうやら四季は、自分たちのことを挑発しているらしいということ。

そしてその意味も。

止めておけと告げる本能に蓋をして、その笑みのまま続ける秋。

「いいぜ? 要は、俺たちとゲームがしたいんだろう?」

「こんな面倒なことしなくてもぉー言えばコテンパンにしてあげるのに四季ぃー」

「四季……めんどい……」

さらりと毒づく秋たちに、どことなく嬉しそうな笑みを向けて。

「さすが。お強い」

 四季は称賛を口にした。

 

何故、挑発してまで彼らと戦いたいのか。

その理由は明かされぬまま。

秋たちの新たなゲームが始まる。

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