表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

混濁のデジャブ

作者: 球磨川 キノ

 昔からだ。私は子供の時からよく、変わらず同じ夢を見る。


 どこかも分からない、何もない不思議なところに気づけば立っている。


そして、誰かの気配を感じて辺りを探しても誰もいない、といった結果に陥る。けれど、何もないはずのこの場所がどこか懐かしさを感じさせる。

そして、何かを忘れているようなということをこの場所で思い出す。





 けれど、夢から覚めれば、何かを忘れているということを忘れている。けれど、そんなことに気づけない自分に嫌気が指す。

毎日同じ夢を見続けるのにその夢がどのような意味を持つのか未だに分からない。 時々思う、毎日見ているのはただの夢ではないのではないか、実は何かを暗示しているのではないかという違和感を抱いて、知らぬ間に違和感が薄れ、また違和感を憶える。記憶にはないのに、断片的に残っている。

つまり、デジャブということだ。



 それが物ならばまだしも、もし人物ならば大変なことだ。

夢では懐かしさのに、現実では、全く思い出せない。私にとっては、とても大事な 「懐かしい」 ことのはずなのに。つまり、大事なことなのに思い出せずに悶えている気分だ。 私は、日に日に寂しさを憶えてくる。

誰か、または私にとって大事な物を忘れている、けれど、「何か」 であるはずのものがどういった存在か思い出せない。 なのに何故か、どうしてか、記憶の片隅にあって、もう少しで出かかるところで止まってしまう。


 けれど、そういう場合ごくわずかなきっかけで記憶の片隅から溢れて出てくる、それだけで思い出せるのだ。私の場合は、「彼」 と悪ふざけで撮った動画だった。私は、ふざけた動画ひとつで夢と現実をさ迷った 「懐かしさ」 を思い出した。


 懐かしいと感じた場所は、私の青春を 「彼」 と一緒に過ごした時代だった……。そして……

「彼」 を失った悲しみを思い出す。

私は幼い頃、「彼」 を事故で亡くしたという事実を忘れていた。


 私は、大好きだった 「彼」 を亡くした悲しみから、逃げて記憶から外れていた。けれど、夢は断片的に憶えていた。

だから、思い出せた。

私は、「彼」 が亡くなってしまった現実を受け止められずにいたのだ。だから、無意識のうちに記憶から外れていた。




 そして私は、「彼」の お墓に行くことを決意した。そして……

『ごめんなさい、私は、あなたを亡くした悲しみから、あなたがいなくなったということを記憶の片隅にしまっていたの。けどね、思い出せたの。だから、もう私は正直になるの。

あなたが亡くなってしまったのは今でも悲しい。

けれど、まずは、あなたのことを忘れてしまっていたことを謝るの、そして、もう、あなたの記憶は絶対に手放さない』

と 「彼」 に告げるために。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ