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私の竜はお腹が弱い  作者: チキンハート
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ゾルゾル中編

ゾルゾルは一匹も逃げる事無くノエルの腹に収まった。

内心かなり焦ったが、すぐに派遣された国立研究所の人によると、竜くらい大きい個体であれば寄生虫が成虫になれずに自然と便と一緒に出てくるらしい。


正直ほっとした。あんなバカ竜でも死ぬのは嫌だ。


男達はノエルが突っ込んだ衝撃で気絶した所を捕縛した。合同演習は中止。私たち以外は町の捜索にかり出された。



痕跡は見つかったものの、捜索の結果は芳しくなかったらしい。


「なので、物的証拠はあなたの竜の腹にあるゾルゾルだけという事です」

銀縁眼鏡をした研究員が、神経質そうに顎を触りながら言った。


「はぁ…」

「上からでも下からでも良いです。あの男達によると全部で十三匹だそうなので、消化する前に出させてください」

「はぁ…、え、ゾルゾル自体をですか?」

「ええ。森で見つかった魔獣の死骸から取った寄生虫はすでに研究所で調査しているのですが、魔力痕が弱すぎて術者と照合出来ないのです。

おそらく、ゾルゾル自体にはもっと強く痕が残っていると思われますので」

「いや、ちょっと待ってください。吐かせるのは難しいです。

下から…消化しないでなんて無理ですよ」

あの食欲魔人が食べ物を吐くなんてありえない。


「魔力痕があれば一匹一匹を知覚出来るはずです。

あなたも新米とはいえ竜騎士なのですから、防護膜はお手の物でしょう?

それぞれを包んで外に出せば良いのでは?」

はんっと鼻で笑われた。


感じ悪っるぅぅぅ。しかも何て無茶ぶり。

こいつわざと喧嘩売ってやがる。私の事ちょっとおちょくれば乗ってくるバカだと思ってる! でもここで出来ないと言うなんて、私のプライドが…! うぅぅぅ。


「消化時間にかなりの個体差があるのは、優っ秀な国立研究所の研究員であればわかりますよね。やれることはやりますが、全ての回収は無理だと思ってください」


こんな時に上手い嫌み一つ言えない自分が情けなくなってきた。

ハンナ助けて。



王城の上に一番星が輝き始た頃、王都に戻ってきた。


王城の脇にある竜騎士団の敷地の端の端。

一番奥まった所に、竜が1匹うずくまっている。

卵を守る親竜のポーズだ。


『いや…』


乙女か。縦だけで自分の二倍以上ある奴に言われても可愛くない。雄だし。


『だからね、何度も言うけど、そのゾルゾルお腹に寄生虫を植え付けられててね。

出さないと死んじゃうかもしれないのよ』


犯罪の証拠だなんだといっても絶対に渡さないので、出さないと寄生虫が出てきてまずい事になると説得しているが、結果は変わらなかった。


ノエルが首を上げ、まっすぐにこちらを見る。


『うそ!かってにたべたから、おこってそんなこというんでしょ』

『私があんたに嘘を言ったこと、あったっけ?』

『ぼくのことふとってるっていった!』

『鏡見ろ肥満児』


よりによってそこ…一応気にしてたの?

ノエルは竜にしてはデブだ。まぁ、まだ若くて成長中だから今以上に太らなければ大丈夫だと思うけど。


それよりも今はゾルゾルだ。

ノエルは消化が遅いけど、さすがにこれ以上待っていると溶け出してしまう。

出来ればこの方法は取りたくなかったんだけど、仕方ないか。


『…ノエル、短い間だったけど楽しかったよ。ありがとうね』神妙そうな顔をして噛み締めるよう言った。『本当に、残念だよ』顔を俯ける。


そのまま一分くらい待つ。


ゴロゴロとノエルの腹が鳴った。

ニヤリと笑いそうな顔を必死に抑え、ノエルを見る。

鱗で顔色はわからないが、人間だったら真っ青だろう、ノエルが震えながら言った。


『おなかいたい』


ここら辺でこれからの為にも少し躾けておくか。


『良い?世の中にはね、あんたにとっても危険なものがたくさんあるの。もう拾い食いしないって誓うなら』『しぬまえに』話を遮られた。


『は?』『しぬまえに』ノエルの目に決意がともる。

『おかあさんに、あいにいかなきゃ!!』


赤い目からぶわっと涙が溢れた。お腹をゴロゴロいわせながら翼を広げる。


「ちょっと待てーーーー!!」


思わず念話を忘れる。今度は私が真っ青になった。

飛ばれたら追い付けない。ノエルの上に全力で防護膜を展開する。

ノエルの頭と防護膜がぶつかり耳障りな音を立てた。

ヤバいこいつ全力だ。このままでは持久力の無い私が押しきられる。

誰か一人で良い、手伝ってほしい!

ああぁー! もう仕方ない!


「応援要請、応援要請!こちらカノン・オルセット。

お願いします! とにかく来て!」


右耳にあるピアスに触り告げる。竜騎士が全員持っている連絡用魔法具で、魔力を流す量で通信範囲をだいたい指定できる。通信中のみ相手に位置を教えてくれる便利なものだ。

たくさん人が来てしまっても恥ずかしいし申し訳ないので、通信範囲は狭めにした…誰か近くにいて!


『これじゃまぁぁぁ!!』


一度下がり突撃しようとしたところで、巨大な防護膜が私とノエルを覆った。


ありがとうございますー

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