ブリトリア国王剣技祭り 前編
今は大学生活の春休み。今日は水泳をするのです。水泳は嫌いだけど、たまには運動をしないとヤバイ。
次回の投稿は14時頃です。
エリック・ブラウンは、ほっそりとした綺麗な左手で、使い慣れた剣を撫でた。
あの日、レオンは俺に聞いた。
「エリック……まさか……お前はノエルに惚れているのか?」
まさか。
そんなわけないだろう。
俺は誰も信じない。
誰も愛さない。
友情も、愛情も、家族もいらない。
俺の隣にいるものは全て偽物でいい。
感情は全て駒でいい。
あの時、裏切られただろう。もう俺は二度とあんな思いをしない。そして俺も裏切り返したけれども。
一時期、俺はメラニーに惚れている行動を示したことがある。
周りは、それを恋だと勘違いしていたが、俺はメラニーという貴族の女を自分のものにするための計算づくの行動だった。なぜメラニーにしたかというと、周りの評判がよかったからと、血筋のいい貴族の娘だからだ。まあ、かわいい容姿をしていることもあるかもしれない。メラニーというのは、王子である俺が妻にしてもいいと思えるほどいい駒だったのだ。
この国で王家の次に家柄がいい家というのは、ノエルのいるハルミトン家だ。けれども、ノエルはあの壊滅的な性格の悪さで評判をすっかり落としていた。メラニーを川に突き落とした時期から、そろそろ駒を捨てる時期だなと感じた。君は俺にふさわしくないと結論を下したのは正解だと思っている。
いや、違うな。俺はずっとあの少女を切り捨てたいと思っていた。
だって……彼女の全てが気持ち悪かった。笑顔も、声も、容姿も……あいつと同じように向けられる全てが偽物のような気がして怖かった。
だけど、俺もつくづく女々しい男だ。ノエルが誰かに奪われそうになった途端に、ノエルを手放したことを後悔し始めた。
ノエルは嫌いだし、君が悪いし、気持ち悪い。だけど、誰にも渡したくなかった。ノエルの全てが自分だけのものであることを願っていたのかもしれない。
もともと手放すには惜しい駒だ。
だから、俺は勝つ。
勝って君を手に入れる。
エリックの口元に不敵の笑みが浮かんだ。
ほっそりした左手で、右腕を励ますように優しくなでた。
ルーク・ハルミトンは準決勝で負けた。
あいつは強かったけど、相手が悪かった。国で2番目に強いと言われているロイ・ガーデンと当たってしまっただから。
そして、国で一番は俺、エリック・ブラウン。
次は俺も準決勝に出る。ここで負ければルークと同じ順位。
まあ、負ける気はないけれどふとそう気が付いた。
次の俺の相手は、レオン・エイブラハム。神聖騎士団長になるほどの実力の持ち主。
小さい頃は、よく相手をさせられたがこいつは弱すぎて練習相手にすらならなかった。
こいつがこっちに帰ってきてから、めちゃくちゃ強いという評判を聞くが俺はまだ一度も対戦したことはなかった。
いよいよ試合が開始された。
両手で剣を握り締める。
静寂が訪れる。
先に仕掛けたのは俺だ。風のように早く相手の胸をめがけて剣を振り下ろす。
だけど、すごい威力で跳ね返された。腕がビリビリする。
その一瞬で全てを把握した。
今のこいつは……強い。
やりながら、冷静に分析していく。
ただ剣を動かす速度なら俺の方が早い。
しかし、剣に込められた力はあちらの方が上だ。少し気を抜いただけで俺の剣は弾き飛ばされるだろう。
だけど、油断さえしなければいける。俺の速い速度についていくのが精一杯になり、レオンは防戦一方になる。
負けるわけにはいかない。
俺は相手の剣筋を自分が有利に展開できるように導きながら、打ち込んでいた。
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