『だから、愛されることに向いていなかった』
……。文字が多くて読みにくいかも……。ごめんなさい。
でも、こういう風に感情でぶわあっと埋め尽くされたページが好きです。
無抵抗の少年は殴られ続けた。それは輝きの欠片もない汚れた姿だった。無様で、醜く、かっこ悪く、情けない姿だ。傷だらけの少年が床に捨てられている。廃棄処分されるのを待つだけだ。
もう俺なんて使い物にならない。
王子であることを捨て、自分が背負った肩書を全部投げ捨てて、自分が立てた未来への計画も、手にする予定の栄光も名誉も地位も財産も、信頼も、期待も、恩も、全部投げ捨てて、ゴミのように朽ち果てることを選んだ。
生きている意味を残そうと、素晴らしい人間になろうと、価値のある時間を過ごそうと、血のにじむような努力を積み重ねてきた。それをたった今、台無しにしているのだ。自分が本当に生きたい道を選んだから。少女を守る盾になることを選んだから。
なあ、ノエル。
俺は、君が嫌いだ。俺の心を塗り替えて、忘れられない言葉を刻み付けて、存在だけで俺の全てを奪ってしまう。手に入らないくせに輝いている君が大嫌いだ。好きになることを許してもらえなかったから嫌いになることしかできなかった。そんな大嫌いな君のために俺の全てを捧げるよ。だから、君は俺を嫌いにならないで。ずっと俺を救えなかった罪悪感を抱いて苦しめばいい。俺のことを考えながら生きればいい。
お金目当てで人とつるみ、役に立たない人間には何の価値も感じることができなかった。
いつしか打算的にしか人と接することができなくなった。人をまっすぐと見ることができていたら何か変わっていたのだろうか?彼女は俺の中に美しさを見つけてくれたのだろうか?結局、俺は誰のこともその内面に興味を持たないで接していただけだった。優しさも愛も思いやりも面白さもどうでもよかった。自分に利益をもたらす人間か、そうではないかだけで隣にいる人を選んだ。心からの言葉を言うより、お世辞を言った方が人間関係は上手くいった。
それでも、君とは上手くいかなかった。
君は俺に理想を押し付けた。
俺を高嶺の花で、純粋で、特別な人間だと思い込んでいた。
俺はそんな君の理想が壊れることを恐れて、本当の自分を見せられなくなった。
理想を裏切ることに怯えていた。
理想が崩れることを恐れた。
理想が離れることを怖がった。
俺という人間が、君が望んだような存在ではないことがばれて、その恋が消えることに怯えていた。その愛を疎ましくすら思っていたのに、おかしいだろう。
だから、愛されることに向いていなかった。
今まで奴隷のように惨めに、疲れた体に鞭をうつように頑張り続けるだけでした。笑うことは、義務でしかありませんでした。甘い声は演技でしかありませんでした。本当は、周りにいる奴ら全員大嫌いでした。仕方がなく、しょうがなく、望まれた少年の振りをしました。けれども、他人と会話する時間はひどく無意味に思えました。そんな時間を積み重ね続けても何も生まれない気がしていました。期待も、信頼も、優しさまでも何もかも重かったです。重かったから、気持ち悪かったです。いつしか他人の自分に対する評価を気にしなくなりました。それでも他人に嫌われることを恐れていました。自己中心的な人間になりきれませんでした。毎日、とても辛くて苦しかったです。生きることは地獄でしかありませんでした。吐き出された言葉は偽りでしかありませんでした。愛されていると思っていたのは幻想でしかありませんでした。俺の宝物は全部他の人のものでした。吐き出した言葉を何度も何度も後悔しているのに……謝ることができませんでした。傷つけたのは俺の方なのに、後悔して死にたくなっているのはきっと俺だけだろう。彼女を傷つけたくせに、決して取り消すことができないひどい言葉で罵ったくせに、全て許されることを期待していました。他人の生き方を採点して酷評し見下しているくせに自分はそれを超えることなんてできませんでした。他人を醜いとバカにしていたのに、俺は美しい人間になれませんでした。誰かを飾り抜きで愛せるほどよくできた人間になることはできませんでした。君の誰よりも見ているつもりでした。でも君のことなんて何一つ知りませんでした。俺の理想の君はどこにも存在しませんでした。それでも君は輝いていました。近くにいることができないくせに大事な人になることを夢見ていた。それは、きっと手の届かない願いでしかなかった。
どうしてこんな生き方しかできなかったのだろう。
「あなたは本当に昔からバカね」
鈴の音のように美しい調べが響き渡った。
ああ、やっと会えた。
本当はずっと待っていたんだよ。
会いたくてたまらなかった。
少年の目から音もなく涙が流れた。
少女は昔と同じようにまっすぐと少年を見た。
「そうだよ。僕はバカだよ」
少年は泣きながら笑顔を浮かべた。
少女もつられるように笑顔を浮かべた。
ということで、このシーンは絶対に書こうと思っていました。