彼の選択
こういう展開は、王道っていうのかな……。
ノエルの結婚式が行われている。
そんなの関係ない。
ああ、どうでもいい。どうでもいい。
愛なんてどうでもいい。友達なんてどうでもいい。自分なんてどうでもいい。他人にどう思われようとどうでもいい。そう思おうとすればするほど、行き場のない感情に押しつぶされてしまうそうになった。
そうして生き場を失った気分だ。
今日は、仕事を、書類を片付けて、用紙を整理した後に、フレンカ国の女王シャーロットと食事か。まるで飼い殺された犬みたいな生き方だ。
その時、ドアをノックして執事であるリューク・ダーナスが入ってきた。彼は、しきたりや、マナーを何よりも大事にする奴だ。俺は、小さい頃から厳しく躾けられた。眼鏡をかけて、マッシュルームカットをしていて、イケメンなのに、髪型や恰好が残念すぎる。
「エリック。ノエルがレッドに誘拐されたそうだ」
ちくしょう。あいつは、やってのけた。
レッドは、有能ゆえにその能力を俺達王族や政府が利用することにより、その悪事を見逃されている。だから、権力を乱用しない限り捕まえることはできない。
「しかし、レッドは意識不明の重体で見つかったそうだ。ノエルは、まだ見つかっていない」
ノエルがレッドに対してそんなことをできるとは思えない。
だったら、ノエルに敵意を持っている奴で、それなりに権力がありそうな奴。
一番有力なのは、メラニーか。
レッドの不意をうち、倒すことができる相手。相当なレベルか、国で管理されている特殊な薬草を持ち出せる人間か。もしくは、その両方を満たせるような奴か。
さすがにメラニーだけでは、無理だろう。協力者が必要だ。彼女の兄だけでは、不十分だろう。
例えば、レッドを倒したことのあるレオンとかどうだろうか。
……レオンとかが協力している可能性がある。あいつがメラニーの計画に乗る理由も思いわたる。だったら、場所はあそこに決まっている。
「悪い、リューク。俺は、これから少し留守にする」
「これから、フレンカ国の女王が来国する。そんな勝手が許されるわけないだろう!
最悪、王子失格になるぞ」
「別に構わない」
「はっ。寝言は寝て言え。お前はこの国の第一王子だろう。この国の未来を背負っているんだろう。義務くらいしっかり果たせよ。
何が大事かくらいお前もわかっているだろう!」
ああ、何もかも煩わしい。
「俺は、この国よりもノエルが大事だ」
ノエルよりも大事なものなんて俺には存在しない。
俺は、リュークを突き飛ばして全力で駆け出した。
いつだったかノエルが言っていた。
『エリックの世界は美しい世界だと思う。冷たくて美しいだけの世界。
でも人間は美しさだけだは感動はしない。感情があって初めて感動でする』
だったら、俺に感情をくれよ。
本気でお前を愛してもいいって許してくれよ。
もういい。
助けなんてもう求められなくてもいい。俺がお前を助けてやる。
読んでくださりありがとうございます。