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ぶち壊された結婚式

 ……勉強頑張ろう。

 神聖なチャペルが鳴り響く。

 真っ赤なヴァージンロードを歩いた先には、神々しいくらいかっこいいルークがいた。

 普段もかっこいいけれど、今日のルークは、白いタキシードを着ているせいかキラキラオーラが半端ない気がする。シャンデリアが彼を主役であるように照らしている。息をのむどころか、石化してしまいそうになるくらい美しい。私は、あまりの眩しさに溶けてしまいそうだ。サラサラとした茶髪の毛が風になびいている。切れがあるけれども、温かみのある琥珀の瞳に私が映っている。そのことに思わずドキリとしてしまった。

 緊張しているのか、こちらを見ながら少し頬が赤くなっている。そのかわいらしい様子に思わずキュンとくる。かっこいいし、かわいいし、無敵すぎるだろう。

 私なんかが花嫁ですいませんと土下座したくなるレベルだ。

 神父が彼に問いかける。

「あなたは、ノエル・ハルミトンを永遠に愛することを誓いますか?」

「誓います」

 彼がためらいもなく即答してくれたことが嬉しかった。

「あなたは、ルーク・ハルミトンを永遠に愛することを誓いますか?」


「誓いません」


 そう結婚式上で堂々と返事をしたのは、私ではなかった。


 少し着崩した黒の服、綺麗に整えられた野生的な髪の毛、

 何故か胸元には真っ赤なバラが刺さっている。


 結婚式だと言うのに、一番華やかで存在感がある気がした。

 

 レッド・カレンが、ウエディングロードのど真ん中で堂々と白馬に乗りながら突っ込んできた。私は、驚きのあまりぎっくり腰にでもなるかと思った。何のドッキリなの?

 あなた……一体何をしているのですか? 

 あなたに質問していないとでも言うように神父が返事をした相手を睨み付けている。

 周囲からの冷たすぎる視線を気にすることなく、彼は白馬に乗りながら歩み寄ってしゃあしゃあと私に話しかけてきた。

「遅くなって悪いな、ノエル。迎えにきたぜ」 

「はい?」

「ノエルは誰にも渡さない!僕が絶対に勝つ!」

 ルークと、明らかな敗北フラグを立ててしまった。

「ノエルを奪いたければ、僕を倒せ」

 銃を取り出し、レッドさんに向かって構えようとするルーク。

 けれども、ルークが銃を構い終える前に、銃の音が2発響きわたっていた。

「きゃああああああああ」

 客席から、黄色い悲鳴があがる。

 ルークは腹部を抑えながら倒れだし、そして、彼はそのまま椅子の角で頭を強くぶつけてしまった。彼の銃を持とうとした手からも血が流れている。

 ルークが死んだ!

 ……ように見えるくらい出血している。

 死んでいるように、安らかに目を閉じていた。

 瞬殺されたルーク。弱い、弱すぎる。というよりも、レッドさんが強すぎるだけか。

「な、何をしているのですか?」

「ただの花嫁の強奪。もう少し早く決行したかったけれど、ノエルの部屋は、鉄格子だったから忍び込めなかったんだよ」 

「どうしてそんな恰好を?」

「それにせっかくだしロマンティックな演出でもしようかと思ってさ」

 ロマンティックを通り越して、目の前でいきなり戦争が起こったかと思うくらいの衝撃を受けている。え?ロマンティックって、もっと心臓に優しいことのような気がする。例えば道端で拾ってきた花を髪に刺してプレゼントするとかじゃないのか?

「とにかく、話は後にしよう」

「きゃあああああ!」

 そう言って、私を強引に抱えて白馬に乗せてしまった。

 そして、颯爽と協会から走り出した。

 周りにいる人たちは、みんなポカンとした顔をしながら突っ立っていた。


 郊外にある空き屋敷で、レッドさんは私を下してくれた。

 とりあえず連れてこられてしまったが、レッドさんに言いたい文句は山ほどある。

「何てことをしてしまったのですか?これじゃあ、結婚式が台無しです」

「それは悪いことをした。じゃあ、ここで結婚式の続きをしようか?」

 ……そんなことできるわけない。

「あれ?そういう問題じゃないです」

「そういう問題だろう。ということで、まずは誓いのキスから」

「ちょっと待った!花婿が途中で交代するとか、どう考えてもおかしいでしょう」

 そんなこと前代未聞だ。聞いたことがない。

 いや、私が記憶喪失なだけで過去に前例があるのだろうか。

 そんなばかなことあってたまるか。

「そうか。じゃあ、誓いのキスはやめておこう」

 そう言って私の肩をがっしり掴んだ後、流れるように自然な動作で、私の唇をペロリと舐めた。

「な、な……」

「ごちそうさま」

 真っ赤になっている私に向かって、肉食獣のような凶暴な笑顔を浮かべながら甘ったるい声でそう言ってきた。

 けれども、その顔が急にゆがめられた。

「ヤバイな。追手がやってきているらしい。いや、追手じゃないのかな。

 いくらなんでも早すぎる。殺気ではないな。何だろう……この気配」

その時、透き通る水のように綺麗な声が響き渡った。

「やあ、ノエル。久しぶりだね」

 闇を溶かしたように黒い癖一つない綺麗な髪の毛に、黒曜石のように綺麗な瞳。憂いを含んでいる表情に見せる長い睫毛、彫が深い顔立ち、形のいい鼻、ほっそりとした綺麗な手。スラリとした無駄な脂肪一つとしてない筋肉質の体つきは、どんな体系よりも綺麗かもしれない。褒めようと思えば切りがない。

 欠点一つない完璧な美少年が立っていた。

 レオン・エイブラハム。

 私を殺そうと突き落とした男だった。

 彼は、小川の水のように透明感のある綺麗な声で告げる。


「今日は、君を殺しにきた。あの時は、殺し損ねたからね」


 彼は、何かの瓶の蓋を開けた。

 次の瞬間、強烈な薬品の匂いがした。それと同時にレッドさんが倒れた。

 倒れた彼に駆け寄ろうとする前に、私の意識が途切れだした。


 最後に見えたのは、飢えた獣のように深い、暗い欲望を秘めているようなレオンさんの黒い瞳だった。


 読んでくださりありがとうございます。生化学……頑張ろう。

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