レオンの復讐
今日はショッピングをしました。
かわいいコートに一目ぼれして買ってしまった。えへへ。
ルークは、かわいい少女にダンスに誘われて行ってしまった。
彼は、踊りながらなぜか考え込むような顔をして私の方を見ている。大丈夫だ。私はこのことをメラニーに言ったりしない。
一人きりになった時に、黒髪のイケメンが私の方へやってきた。
「久しぶり」
さきほどから無表情だ。人間というより機械みたいに顔が変化しない。
ある意味すごいな。
「……あなた誰ですか?」
「レオン・エイブラハム」
ああ、名前までレオンと同じなのか。同姓同名の人間が存在するなんて世界は広いな。
何でこいつは私のところに挨拶にきたのだろう?
「初めまして、ノエル・ハルミトンです」
「だから、久しぶりだって。俺は、レオン。君が化け物呼ばわりしていた少年だ」
「……私の知っているレオンはもっと豚みたいに太っていて、ゴブリンみたいに醜い顔をしていたわよ。あなたはレオンの振りでもしたいわけ?さすがに無理があるわ」
「ゴブリンで悪かったな」
艶のあるイケメンボイスでそう言われた。
「ノエル・ハルミトン。俺は……いや。僕はもう君には憧れない。いつか絶対、復讐してやる」
それはかつてレオンが私に言ったセリフだった。
「えええええええええええええ!まさか、あなたは本当にあのレオンなの?」
「そうだ」
「整形をするほど思いつめてしまうなんて。人間は見た目じゃないのよ。心なの」
「それをノエルが言うな。俺は整形なんてしないない」
「……人類の神秘ね」
……ここまでかっこよくなれるなんて奇跡だ。
「私、あなたに会ったら言おうと思っていたことがあるの」
「何?」
「ごめんなさい。あなたを苛めたことを心から反省しているわ」
私は、ドレスの裾をつまみ完璧に礼をしてみせた。
お願いします。どうか私を殺さないでください。私は、こんなに反省していますから。
もう生まれ変わったのです。いい女になります。
「……何を企んでいる?」
「何よ!人がせっかく素直に心をこめて謝ってあげているのに失礼ね」
「……ノエルが謝るなんておかしい……」
「おかしいのはあなたの頭よ!」
「大体、謝ったから許せと?随分、自己中心的な性格をしているな。
いい加減、世界は自分のために回っているわけではないと気が付いたら?」
俺は、ノエルを一生、許さない」
冷ややかな目線。
小さく泣き虫だったレオンはとても強くなっていた。
私の知っているレオンはもうどこにもいない気がして悲しかった。
「なら勝手にすればいい。あなたは私にどうやって復讐するつもり?」
「君とエリックとの婚約を解消させる」
やったー!これで死亡フラグから一歩遠ざかります。
「同時に君を反逆罪で囚人にする」
「……」
私は、キョトンとした目でレオンを見た。
「……」
レオンは冷ややかな目で私を見返した。
「えっ……反逆罪?」
私は今まで散々悪いことをしてきた。
だけど、反逆罪になるほどのことをした覚えはなかった。なぜなら、大好きだったエリックが王族だったからだ。王族にだけは、優しく接していたのだ(媚を売っていたのだ)。
「ああ、そうだ。俺は、ブリトリア国王神聖騎士団の団長となった」
「騎士団の団長……」
国の武力のトップ。
その人に歯向かうものは、王族に歯向かったものと見なされる。
私は、そいつに向かって散々ひどいことをしてきた。
レオンが川に入っている時、彼の着ていた服を底なし沼に捨ててしまったことをふと思い出した。
「君には生涯牢屋で過ごしてもらう」
何ですって!
こうして私は扉の向こうで待機していた騎士団員達に連れ去られて牢屋へぶち込まれた。
……人生は何が起こるかわからない。
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