レッドの祝福
今回は、少し短いです。次回、視点がレッドにうつるためそうなりました。
次の日、部屋で刺繍をしていたら、レッドさんが遊びにきた。
「こんなに遊びにくるなんてレッドさんは、暇人なのですか」
というか、この人と仲良くしないようにルークに言われているけれどもいいのだろうか。でも、……もうすぐルークと結婚するし、これくらいは許されるだろう。
「違う。優秀すぎて仕事を早く終わらせているだけだ」
髪をかき上げながら、そう自慢してきた。
「そういえば、私は結婚することになりました」
レッドさんはまるで明日世界が滅びてしまうとでも聞いた様な顔をした。
大げさだな……。
しかし、すぐに頭をブンブンと振って元気になる。
「そうか。決闘をするのか。相手は誰?
俺がノエルの代わりに決闘するよ」
そして、私にバラのように華やかな笑顔を浮かべてきた。
「結婚です」
引きつった笑顔のまま、さらに提案してきた。
「……俺がノエルの代わりに結婚するよ」
「……いや、無理でしょう」
「……相手は……」
「ルーク」
「ちっ。あのコソ泥が」
レッドさんは、舌打ちをした。
顔が怖い。人って笑顔のままで殺気が出せたのか。
「じゃあ、結婚祝いにあげたいものがある」
「何ですか?」
「結婚指輪」
え?それを私につけろと?
おかしすぎるだろう。
「……結婚指輪を二つもしていたら、私が悪女みたいじゃないですか」
「もう立派な悪女だから心配することないよ」
「いえ。私は、悪女を卒業するのです!」
ルークにふさわしい心優しい立派な女の子を目指そう。
拳を握りしめながら私はそう宣言した。
「そうか」
レッドさんは、今まで私を変えようとしていたことが信じられないくらい簡単に私の宣言を受け入れた。
そして私を口説くように、甘く、優しい笑顔を浮かべながら、はちみつようにとろける声をだした。
「結婚、おめでとう」
レッドさんは、拍子抜けするくらいあっさりと結婚を祝福してくれた。
「どうもありがとう」
私は、そんな彼に笑顔を浮かべながらお礼を言った。
その瞬間、私たちの間で何かが変わった気がした。
上手く言葉では説明できないかもしれないけれど、そんな気がした。
彼は、遠い昔を懐かしむような、なくしていた鍵を諦めるような、死んだ人間に再会したような、そんな目で私を見ていた。
読んでくださりありがとうございます。