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少女の心にはもう届かない

 まずはこの人から。

 33話でルークの名前を間違えていたことに気がつきました。

 ごめんなさい。修正しました。

 ノエルを突き落とした夕方、魔法にでもかけられたようにメラニーへの思いも、ノエルへの殺意も溶けてなくなってしまった。

 ノエル・ハルミトンは、記憶喪失になっているとルークから聞いた。部分的に嫌なことだけを忘れているのだろうか?忘れていてもなかったことにはならない。

 後悔しても過去へ戻ることはできない。

 どうしてもノエルに謝りたい。今すぐ土下座したい。

 ノエルが許しくれるなら何でもする。炎で燃やされながら殺されてもいい。

 そんな決意をこめてノエルに会いに行った。

 けれども、そこには俺の知っているノエルはいなかった。

 いたのは、純粋そうな瞳でまっすぐに俺を見てくる少女だった。

 俺は、その眩しさに溶けてしまいそうだった。 

 謝らなければいけない。どんなに罵られてもかまわない。

 自分がしたことを打ち明けよう。

 そう思って重い口を開いきかけた。

 その時、ずっと聞きたいと思っていた声が聞こえた。

「あなたがレオンさんという人ですか?」

「俺について何も覚えていないのか?」

 俺はお前の思い出も、言葉も、自分がしてきたことも全て覚えているのに。忘れることなんてできないのに。

「ごめんなさい。私、記憶喪失になってしまっていたみたいで、何も覚えていません」

「……俺がお前にしたこともわからないのか?」


「残念ながら、私は何も知りません」


 その一言が僕を底なしの絶望へ突き落とした。

ようやく悟ったのだ。自分の思いが声になったとしても、気持ちは少女には届かないだろう。

 例え目の前にいる少女が許してくれても。自分が許してもらいたかった少女に許してもらえるわけではないのだ。 

「……それなら、言う言葉は何もない」

 少女を置いて僕は歩き出した。

 僕は謝ることすらもうできない。

 それでも、どうしようもない思いが胸に広がっていく。

 ごめん、ノエル。僕は君を傷つけたくなかった。……僕は君を幸せにしたかった。


 あの時、違う言葉を言いたかった。

 

 この想いは、あの時僕が言った言葉さえ思い出せない少女の心に響かないだろう。


 読んでくださりありがとうございます。

 次の投稿は19時です。

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