前途多難……
描いていた以上のステージへ……いけたらいいのになあ。
その時、ドアがノックする音が聞こえた。
ルークさんは、いまいましそうに舌打ちしてから私から離れた。
「はい、どうぞ」
彼がそう許可すると同時に、青いポニーテールをした青年が入ってくる。とてもシンプルな服装をしていたため、彼が水のように爽やかな印象を感じた。紫紺の瞳がとてもきれいだ。
なぜ、剣を腰にさしているのだろうか?ちょっと気になった。
彼は、さらりと爆弾発言をした。
「お久しぶりです、ノエル様。ぜひ、剣の手合わせをお願いします」
「は、はい……って。え、えええ!わ、私?私なの?人違いじゃないかしら?」
剣で戦って犬にすら勝てる気がしない。そんな私に、こんな強そうな人と剣と戦えと?ルークさんの間違いじゃないだろうか?
しかし、彼は平然と恐ろしい事実をしゃべりだした。
「ノエル様は、私に剣で勝ちました。こんなに剣が強い人は初めて会いました」
ルークさんが隣で解説しだす。
「彼は、ロイ・ガードナー。国で二番目に強いと言われている剣士だ。
ノエルは、彼に圧勝した。僕もその光景を覚えている」
「ノエル様。ぜひ、私と戦ってください。私は、屈辱をばねにあの時よりも更に強くなりました」
「ふえ……。い、いやあ。そ、その。今は病み上がりなので、またいつか」
そのいつかは永遠に来てほしくなかった。
「楽しみにしています。では、また今度お会いしましょう」
……もう二度とこの人には会いたくなかった。この人と戦うなんて自殺行為だ。
いざとなったら夜逃げしよう。
命はとても大切だ。
寝る前に渡された鏡を見て思わず息を飲んだ。月の光みたいにきれいな銀の髪に、紫色の目。サクランボ色の唇。雪のように白い肌。整った顔立ちに、ほっそりとした首筋。
欠点何て一つもないような美しい少女がいた。
誰だ?この美少女?
絶世の美少女が困った顔をしながらこちらを見ている。
こ、こ、これが私なのか。
うう……なんか胃が痛くなってきた。
へ、平凡な心の持ち主には、平凡な顔立ちが似合っていると思います。
こんな顔立ちをしているなんて……うわあ……憂鬱になってきた。
今すぐ溶けて消えてしまいたい。
それから、実は私がお金持ちのお嬢様であることが発覚して胃が痛くなった。
私はお嬢様とか勤まるようなそんな器じゃないですからと神様に抗議したい気分だ。
国で王家の次にお金持ちだとか……もうストレスのあまり死んでしまいそうだ。ノエルは、千ポイントのダメージをくらった……という気分なのです。
次の日も、更に私に知らない人と会うという試練が待ち構えていた。
「姉さん。レオンが会いにきたけどどうする?レオンは、姉さんが昔、いじめていた少年だよ」
「ど、どうして私はそんなひどいことをしていたのですか?」
「ストレス発散じゃない?」
私が……何の罪もないかよわい少年をストレス発散でいじめていた……。……ぐはあ。今のセリフで私は一万ポイントのダメージを食らった。私はそんなレベルのことまでしでかしていたのか。
これがゲームの世界だったら再起不能になっていたかもしれない。
実は私は楊貴妃の生まれ変わりだったのかもしれない。
自分がクズすぎて悲しくなってきた。
「『やってしまったものは仕方がないでしょう』と言って開き直られたことは今でも覚えている」
……何その悪女。今すぐ自殺するべきかもしれない。
「……と、とにかく。会います。わざわざ来て下さったのに、会わないで帰すなんて失礼ですから」
「じゃあ、呼んでくるよ」
やがて、コツコツ足音が近づいてきた。
どんな顔をしてあっていいのか私には少しもわからなかった。
読んでくださりありがとうございます。




