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勝負の行方

 『初めて恋をした記憶』って知っていますか?

 この曲を聞きながら、書きました。

 決闘が始まってから30秒立っていないが、エリックの方が圧倒的に強いと感じた。というか、剣大会の時よりも、エリックが10倍くらい強くなって見えるのは気のせいだろうか?

 ……いや、気のせいじゃない。こんなはずじゃなかった。かっこいい決め台詞を言った僕がエリックをぼこぼこにやっつけているはずだった。

 左利きだと思っていたこいつが、右利きになっているし。まさか、あの時はケガでもしていたのだろうか。はああ。ケガしていてあのレベルとかおかしいだろう。こんな恵まれた人間、禿げてしまえ。

 このままだと僕が倒されるのは、時間の問題だろう。

 だけど、僕が諦めたら姉さんがこいつに殺される。

 それだけはどうしても嫌だった。

 それにエリックこそ絶対に後悔するに決まっている。きっと彼が本当に好きなのは、メラニーではなくノエルだ。それを乙女ゲームの強制力とかいう呪いみたいなもので変えさせられたのだ。

 偽物の恋心を押し付けられて本当に愛した人間を殺してしまったとしたら、これ以上の悲劇はないだろう。そんなことは決してあってはならない。

 まずい、よけきれない。顔の皮膚が少し切られた。お前のためにも戦ってあげているのに何てひどい奴だ。

 段々と疲れてきたあまり体の動きが鈍くなってきてしまう。

 エリックが手先しか動かしていないのに、僕は体中動かしているような状態だ。

 防戦ばかりになったため、体力がなくなってきた。

 体がだるい。切られた部分が痛い。迫りくる剣が怖い。 

 もう勝負の行方が薄らと見えてきた気がする。

 だけど……。

 絶対に諦めたくない。この勝負に自分の全てを捧げてもいい。最後の一滴を出し切るまで体を動かせ。

 ちくしょう。隙がない。

 僕が死ぬ気で戦っているのに、こいつは汗一つかいていない。お前は本当に人間かよ。サイボーグの間違いじゃないだろうか。

 奴は、爽やかな笑顔でしゃべりかけてきた。

「なかなかしぶといな。さっさと死んでくれればいいのに」

 くそっ。こっちは、闘うので精一杯だと言うのに。

 僕は、息切れしながら答えた。

「はあ……はあっ……それは……こっちの……セリフだ」

 マジで、チートとか絶滅して欲しい。ハイスペックすぎるだろう!クソ野郎。

「どうして君はノエルなんかのためにそんなに頑張る?

 あんな女、最低だろう。メラニーを川に突き落とすような女だ。死んで当然じゃないか」

 僕は……。

 その時、鈴の音がなるような美しい声が聞こえた。

「ルーク……もういいよ。

 そんなに頑張らなくていい。私はきっと死ぬ運命なの。ルークは、私なんて捨てて生き残ればいい。運命だから仕方ないの」

 何で……そんな冷たいことを言うんだよ!

「姉さんのバカ」

 運命が何だよ?くだらない。そんなものくそくらえ!

 僕は勝つよ。姉さんを全ての死亡フラグから守る。

 攻略対象者を全員殺してでも姉さんを守るってみせる。

 ああ、そうだ。全員皆殺しにすればハッピーエンドの完成だ。

「僕は……勝つ」

 エリックの剣を左の方向へ流し、心臓めがけて攻撃した。

 初めて……僕の剣をよけたエリックがバランスを崩した。

 その途端、彼の目つきがガラリと変わった。

「君はなかなか強い。だけど、俺には敵わない」

 そう言ってエリックが、思いっきり剣を振った。

 僕の剣が弾き飛ばされて壁に突き刺さる。

 そして、一瞬の隙を見せた僕に容赦ない蹴りをいれた。

「ゴホッ」

 思わず血を吐き出した。

 蹴られた痛みに全てが奪われていく。

 体が床に近づいていく。

 もう限界だ。


「ルーク!」


 鈴の音のように少し高めのかわいらしい声。

姉さんが僕を呼ぶ声が聞こえた気がした。

 今、死んだっていいやくらいの気分になれるくらい

 素敵な声だ。


 読んでくださりありがとうございます。

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