彼がナイトとなり運命が変わる
弱虫ペダルのopやedが大好きです。元気になります。
夕食を食べ終わって、私がやるべきことをしている時のことだった。
ルークは、真剣な顔をしている私を応援しようとお茶をいれてくれた。
そして彼もテーブルに座り、優雅に紅茶を飲み始めた。
茶色のサラサラとした髪の毛に琥珀色の瞳。整った彫りの深い顔立ち。本当に顔だけはかっこいいな。ああ、ルークとも、もうすぐお別れか。
「そんなに真剣な顔をしてどうしたの?ま、まさかラブレターでも書いているの?」
「私が書いているのは遺言書よ」
ああ、もうすぐ私は死ぬのだ。かわいそうな、私。
死ぬまでにちゃんと遺書を書いておかなければいけない。
「ぶっ……。ごほっ。ごほ、ごほ。うう……」
ルークは、見事に紅茶を吹き出しむせこみ始めた。
せっかくのイケメンが台無しだ。
「紅茶を吐き出すなんて汚いわね」
「姉さんが変なことを言うから悪い。何か病気にでもかかったのか?」
ルークはうろたえだした。
「いいえ」
「ま、ま、まさか自殺でもするつもり?そりゃあ、姉さんは自殺して償わないといけないレベルのひどいことをしてきたけど、姉さんが自殺したら悲しむ人間だってたくさん……はいないけど数人はいるよ」
ルークの言葉は、全然慰めになっていなかった。
「お黙りなさい。自殺なんてしないわよ。でもね、私は死ぬ運命なのよ」
「運命?」
「大体、ずっとおかしいと思っていたの。
私はルークやレオンを見ただけで苛めたくてたまらなくなったの。メラニーなんて一目見ただけで殺したくなったの。
そんなこと心優しい私が思うはずがないのに……。
きっと私は運命という名のもとで操られていた被害者だったのよ」
「おかしいのは姉さんの頭だよ!」
「そんなことないわ。私はきっとメラニーを苛める運命になっていたのよ」
「自分の行いを運命のせいにするなんて最低だ」
しかし、運命を連呼していて気が付いた。
どうしてルークは変わらないのだろう?
ルークはどうしてヒロインにぞっこん状態になっていないのだろうか。
彼とヒロインのイベントは、一番早くに存在する。ルークはそれを達成してヒロインにもう恋していてもいいはずなのに……。
何か重要なことを忘れているような……。
思い出した。
「そういえばルークは必ず失恋する、かませ犬的なポジションだ」
「なんてひどいことを!もう姉さんなんて知らない」
そう言って子供っぽいすねた顔をしながら、彼は再び紅茶を飲みだした。
ルークが琥珀色の目で私を睨んできたが、それどころじゃなかった。
そうか。だからこそ、彼にはあまりこの世界の強制力が働いていないのか。
あまりメラニーに惚れるように仕向けていないのかもしれない。
それか、ルークは鈍感そうだから自分の思いに全く気が付いていないのかもしれない。
まあ、弟がヒロイン絶対主義の人間になっていなくてよかった。
……と見せかけてそのうち食事に毒を入れ始めたりするのではないのだろうか?
いや、ルークに限ってそんなこと……ありえる。
ルークがノエルを毒殺するパターンも存在したのだ。
「ねえ、ルーク。あなたって私の紅茶に毒をいれた?」
「ぶっ」
そうルークは再び紅茶を吹き出した。行儀の悪い子ね。
「そんなわけないだろう!どうしてそんなことを考える?」
「そういう運命を知っているから」
「姉さんのバカ!」
「まあ、いっか。別にあなたにだったら殺されてもいい気がしてきた」
だって紅茶が飲みたいから。そう思い私は紅茶を飲んだ。やっぱりルークの紅茶はおいしい。
「ね、ね、姉さんのバカ」
ルークはなぜか耳まで真っ赤になった。
ちなみに、毒は入っていなかった。よかった。
「ねえ、ルーク。信じられないかもしれないけど、聞いて。
ここは乙女ゲームの世界なのよ」
「は?」
それから私は乙女ゲームの内容、私が殺される運命であることを話した。
「私の話が本当なら、三日後、私はエリックに殺される可能性があるの。
だから、私を助けてくれない?」
「そんなわけないだろう。頭がおかしくなったんじゃない」
……冷たい男だ。
三日後、私はエリックに重要な話があると呼び出された。
私を呼び出したエリックは、さっそく二人きりにさせた。
ドアが閉まるなり、彼の顔つきが変わった。
エリックは、殺気と狂気を帯びた目で私を見ていた。
彼の青い目が怖くてたまらなかった。
彼は、すっかり変わっていた。
人間というよりも、作られたキャラクターのようだと思った。
それは、前世で画面越しで見たエリックにそっくりだったからかもしれない。
「ノエルは、メラニーを苛めていただろう。
俺のメラニーによくも傷をつけたな。お前のせいで俺のかわいいメラニーが何度も死にかけた。メラニーは泣いていた。許さない。殺してやる。てめぇなんかぶっ殺してやる」
もう私の知っていたエリックの面影はなかった。
彼は、殺気を帯びた目で私の胸に向かって剣を突き立てようとした。
国一番と呼ばれた男の剣だ。簡単には避けられない。
死ぬ……。そう思って目をつぶったが、剣はキンッという音をして弾き飛ばされていた。
私の前にルークがいた。
彼は、エリックの剣を受け止めていた。
「助けに来たよ、姉さん」
少しも黒が混じっていない茶色の髪と温かみのある茶色の瞳。町を歩くと誰もが振り返るような美少年、ルーク。彫が深く、左右均整のとれた一度見たら忘れられないようなハンサムな顔立ち。高い身長に、鍛え抜かれた体。茶色の髪の毛がサラサラと風になびいている。
彼がかっこいいことは知っていた。だけど、これほどかっこよく見えたことは今までなかった。こんなかっこいい奴は初めて見たと思わず感じてしまった。
白いシャツに黒いズボン。シンプルな服装なのに、彼が私を守ってくれるナイトに見えた。
「どこにいたの?」
「天井。のぞき見していた」
お前は忍者か!
ルークは言った。
「姉さん。僕は、姉さんの言ったことを信じる。
だから、どうすればこいつらがヒロインへの恋から解放されるか教えてくれないか?」
「ルーク……」
信じてくれてありがとう。
「そんな方法わからないよ。わかってっていたら、もっと早くに実行しているわよ」
「そんなばかな。まあ、いっか。力づくでなんとかしてみせるよ」
「お前如きにできるわけないだろう、雑魚が」
目の前で、エリックが私たちを殺そうと剣を構えていた。
彼の青い瞳が逃がさないというのうに私を捉えている。癖のある金髪が、ゾッとするように美しい。狂気を帯びた微笑みが怖かった。
本当に、悪魔のように美しい男だ。
そして悪魔のように怖い男だ。
そんなエリックに対してルークは涼しげな顔をしながら剣を構えていた。
薄く形のいい唇が、自信気な笑みを生み出すかのように孤を描いている。
ルークの琥珀のようきれいな瞳が挑発の色を帯びながら輝いていた。
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