レッド・カレンの闇
まずはこの人から。
~レッド・カレンの闇~
カレン家は、裏社会のボスと言われているほど闇とのかかわりが深い。
俺も小さい頃から人が殺されるところを見てきたし、人を殺してきた。
最初の頃は銃の引き金を引くたびに手が震えた。けれども、今では人を殺すことに慣れてしまった。食事をするように自然に人を殺すようになった。
頼まれた人間を殺し、口封じのために善良な人間を殺し、裏切者を殺し、友達だった奴を殺した。
いつしか自分が周りに比べてひどく汚れている人間に見えた。
周りの人間も自分と同じように闇に落ちてしまえばいいのに。
けれども、俺よりも汚れて見える人間はいなくなっていた。
みんなまだどこかで優しい部分が残っている奴らばかりだった。
自己嫌悪、心の闇、恐怖から逃れるように、狂ったように女を抱いた。
美しい女に溺れている間は余計なことを考えなくて済んだし、目の前で喘ぎ声を出して俺を必死に求めている女も俺と同じように汚れて見えた。
そんな時に、ノエルに会った。ふくよかな胸、月の光を思わせる長くて美しい髪、アメジストの瞳……少女はとても美しかった。けれども、それだけではなかった。
目的のためなら手段を選ばない態度。
嘘をついても、人を傷つけても私は悪くないと思う堂々とした様子。
用済みとなった友達を見捨てる冷酷さ。
恋のライバルを、罪の意識を抱くことなく『あなたが生まれてきたから悪いのよ』とでも言うように始末しようとする冷たさ。
彼女の性格は真っ黒だった。
……俺と同じくらい。
彼女を知った時はゾクリとした。生まれて初めて仲間にあったような気分になった。
ノエルは汚れていなければならない。
俺と同じように。
俺の孤独な心を満たすために。
俺は彼女に愛を囁くが、あいつに惚れているわけではない。
ただ俺と同じように黒色の心をした少女を欲しいと思った。
黒色をしたノエルと反対にあるのはメラニーである。
メラニーのことは初めて会った時から、大嫌いだった。
あんなに性格がいい女がこの世にいることが信じられなかった。
愛されて育ってただ性格がいいってだけだ。
そんなの不公平だ。
俺は……カレン家の次期ボスとしてしか見られてこなかった俺は、本当の愛なんて与えられたことがなかった。
もちろん、愛なんていらない。
そんなもの必要ない。
欲望を満たしてくれる存在と、温もりさえあればそれでいい。
うふふふ。
何だかいい気分。