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初めての恋と失恋

 エリックは、スーザン・ケイの小説に出てくる後にオペラ座の怪人となる少年エリックという名前をいただきました。

 醜かったエリックを私の手でかっこいいヒーローにしてやるわ……という情熱は前からありました。

 レッド・カレンは、エリックを殺す気がなくなったようで去って行った。

 エリックは、私を監禁から解放させて送ってあげると約束してくれた。

 あんな話を聞かされたら、監禁どころの気分ではなくなったのだろう。

「ずっと気になっていた。どうして……俺がエリックじゃないと一発で気が付いた?全てが完璧だったはずだ。エリックのようなしぐさ、態度、しゃべり方。 

 もうレイなんて全て捨てたはずだった」

「だってエリックはあの時、私の笑顔に見とれなかったから」

 それはとても単純なことだったのだ。

 簡単すぎて気が付かなかったようなことだった。

「ノエル。どうしてエリックは俺を殺そうとしたかわかるか?」

「彼は、あなたに嫉妬していたのよ」

「エリックが俺に嫉妬?そんなわけないだろう。

 エリックの方が愛され、与えられ、勉強もできて、運動神経もよかった。

 そんな男が俺に嫉妬するはずない」

 彼は、こいつに嫉妬していた。

 殺そうとするくらい憎んでいた。

 その原因は私だった。

「いいえ。確かにエリックは、あなたに嫉妬していたのよ」

「……彼の婚約者がレイ・ブラウンという男に恋をしていたから」

 信じられない顔をして首を振るレイ。

「だって、いつだって君はエリックに向かって『大好き』だと微笑んでいた。

 俺に対しては冷たかったじゃないか」

 私は……。

 偽物の笑顔と偽物の言葉だけで生きていた。

 そんな私にあなたは違う世界を見せてくれた。

 あの時、生まれた恋心を確かに覚えている。

 これほど誰かを好きになれることはもうないだろう。

 そう思っていた日々が、もう自分の中では思い出になってしまった。

 そうだ。全部、過去の話だ。

 あそこまで醜態をさらしといて、まだあなたを好きだと言えるプライドは存在しない。過去だからこそ今は伝えられる気がした。

「私は最初からレイのことが好きだったの。

 だけど……そんなこと言えないから。エリックに愛を囁き続けていた私が、今更あなたが好きだったなんて言えなかったから。

 だから、私はあなたの顔が好きだと言うしかなかった」

 エリックの青い目も金髪も確かに美しかった。

 私は、その顔も嫌いではなかった。

「私はあなたをエリックの代用品として選んだわ。だってそうしないとレイへの感情が抑えられなかったから。あなたがエリックとして生きていくことを選んだように、私もエリックとしてのあなたを愛することを選んだの」

 恋をしていた。

 かっこよかったから、ときめいた。

 優しかったから、勘違いしてしまった。

 冷たくされたから、欲しくなった。

 手に入らないから、恋しくなって胸が苦しくなってたくさん泣いた。

 そんな単純なことだった。

 私には持っていないものをたくさん持っていて、輝いて見えて、そんなあなたに憧れた。

 ただ……それだけの感情だ。

 ありふれた感情で、きっと時が立てば覚める。

 そういうものでしょう。

「それは、遠い過去の話なの。今は……もういいの」

「もう俺のことは好きじゃないのか?」

「そうよ。もういらないわ」

 正しい人の愛し方がわからなかった。

 そんなものは知らなかった。

 それでも、あなたを愛していたと思う。

 もう全ては美しい思い出で、記憶の中で輝いて見えた。

 

 そんな私にエリックは意地のわるそうな笑顔を見せた。

「なら今度はもう一度俺に惚れさせてみせる」


 ……そんなのお断りだわ。

 そう思ったけれども、頬が少し赤くなってしまった。


 

 読んでくださりありがとうございます(#^.^#)

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