表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢の旅人  作者: 悠かなた
9/9

千弦、中学生 Ⅰ

 中学校に入学したばかりの頃、千弦はひとりぼっちだった。小学校での友達とは、違う学区の中学校に進学したからだ。クラスの他の子たちは、お互いが顔なじみといった感じで、楽しそうに話していた。

「一緒のクラスでよかった」

「また一緒に帰れるね」

「一緒の部活に入ろうよ」

 そんな言葉が教室中を飛び交った。

「昼休み、一緒にサッカーしようぜ」

 ―うるさい。

「今度一緒にショッピングに行こうよ」

 ―うるさい。

「今日の宿題難しいね。一緒に勉強しよう」

 ―うるさい。うるさい。うるさい。

 一緒。みんな一緒。誰かと一緒じゃないと、君たちは何もできないのか。そうやって手を組んで、独りの人間のことは視界に入れないのか。

 そして千弦は休み時間に、本を読むようになった。本を読んでいる間は、周りのうるさい声は聞こえてこない。くだらない『誰かと一緒』の世界に巻き込まれないですむ。それどころか、自分が想ったことも無い、知らない世界が広がっている。

 現実より、本の世界の方が広い。

 休み時間にいつも本を読んでいて、誰とも話さない千弦を見て、クラスメイトは、『暗い』『真面目ちゃん』などと囁いた。

「勝手に言ってろ」

 千弦はお構いなしに、本を読みあさったのだった。成瀬千弦の中学生活はこうして始まった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ