復讐の章 後編
お別れだ。
「なあ」
「……」彼は、俺の子供を穏やかな顔でながめていた。
「なあ」
「かわいいね。佑磨の子供」
「僕はねえ、君のことが好きだったんだ」彼はそっと子供の頭皮の産毛をなで上げる。
「僕だけの君にしたかったんだ。
……気持ち悪いよな」ぐすっとすすり泣く。
そして、くっく、と喉を鳴らした。
「……」
「終わりかな? 」にんまりと笑う。吸い込まれそうな目に変わる。『邪悪』に変わったんだ。
俺は目をつぶる。
長かった、そうして平坦ではなかった。そしてもう一人の比奈が俺に与えてくれた道。そうして……
「……お前は元に戻す存在なんだね? 」 『邪悪』に向かって話しかける。
「……」
「変えてしまった今を……そして、俺だけを生き残らせたのは『昌吉』の願いなんだね? 」
「……」
「……」
「ああ」短く言い放ち『目』が笑う。しかし口元は悲しそうに歪んだ。
俺の両親も死ぬ運命だった。あの時よりもっと前に、それの帳尻合わせをしたんだ。それはわかった。でも許す許さない、結論は俺には出なかった。
取り敢えず今は、新しい家族を失いたくない。
(ガチャン、とドアが開く)
「あれ、しょー君きてたんだ。久しぶり! ゆきちゃん元気? 」
食品を入れた。スーパーのビニールが擦れる音が聞こえる。パタパタと冷蔵庫に向かい、それを比奈は冷蔵庫に詰め込む。
「ねえ、佑磨。『未来』起きなかった? 」
「ん。『未来』はよく寝ていたよ……なあ、昌吉」
「そうだね」昌吉はにっこり笑った。
一年後、伊月比奈(18才)と須藤佑磨(21才) 君らは旅行に行く、
【東京湾からクルーザーで片道2時間半、ここはミステリーファンにはたまらない断崖絶壁の『孤島』】
そこを見た君の印象。
須藤君やはり第一被害者のようだね。
死因は、背後から心臓を一突き、即死だ。
『私』が捻じ曲げてやる、安心して旅行を楽しむといい。
『邪悪』も昌吉が抑えるから、何も起こらない。
それは、『私』の都合であり、計算だ。