表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
演算の魔女は祈らない 〜The Witch of Calculus Never Prays〜  作者: N


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/83

第三話 世界の底から汲む

——魔法学院 基礎実習棟 放課後


実習棟に残っているのは、私一人だった。

他の生徒はとっくに帰った。

最弱の灰色属性が自主練をしていても、誰も見ていて楽しくない。

私はそれでよかった。


今日の課題は「点火の術式」。

クラス全員が午前中に習得した。

私だけを除いて。


術式の構造は読めている。

問題は出力だ。

最低でも魔力〇・三単位が要る。

私の総量は〇・四。

一回の点火で七割を使い果たす設計——非効率にもほどがある。


ノートに術式の構造式を書き写し、変数を整理していく。

そこで、ふと手が止まった。


魔力が足りないなら、外から持ってくればいい。——どこから?


◆ ◆ ◆


前世の記憶が音もなく浮かんだ。

ダークエネルギー。

宇宙の膨張を駆動する正体不明の何か。

全エネルギーの六十八パーセントを占めながら、観測できない。


——この世界にも、あるはずだ。魔法で満ちた世界なら、その底にも同じ構造が。


```

Φ(x,t) = ∮ ρ_dark · κ(λ) dΩ → E_magic

```


自分で書いたはずなのに、どこか他人のもののように見えた。

でも式は美しかった。

前世で「美しい数式は正しい」と信じていた。


◆ ◆ ◆


目を閉じた。世界の底から何かを汲み上げるイメージで、術式を展開する。


……来る。


手のひらの上に、蒼白い炎が揺れた。

三十秒。

消えない。

自分の魔力は〇・四のまま——消費されていない。


これは、まだ誰にも言わない。

なぜ機能するのか、限界はどこか、副作用は何か——全部これから検証する。

目的もない段階で人に渡す情報ではない。


発表は、証明が終わってからだ。

それが、数学者のやり方だ。


ノートを閉じて立ち上がる。

窓の外はすっかり暮れていた。

最弱の少女は、誰も知らないまま、世界の底に手を届かせていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ