EP9 最初の退学者
お疲れ様です!
瀬戸隆平です。
本日もお読みいただきありがとうございます!
辻獅堂は小寺孝雄と共に4組の教室へ向かう。
入口には他の組の生徒が集まっている。
教室のドアは空いており、中の様子が見える。
獅堂は4組の教室の中を見て実感した。
設備がまるで違い、一流オフィスのようだ。
机や椅子は最新式で洗練されたデザイン。
充電やWifiも完備されている。
黒板などはなく、教壇はホワイトボードとプロジェクターだ。
しかし、みんなが騒いでいるのは、そんなこととはまるで関係がない。
獅堂は夏川美穂の姿を見つけた。
ギャラリーと一緒に4組の様子をのぞき込んでいる。
獅堂は彼女の肩に軽く触れた。
美穂が振り向くのを見て、声をかける。
「朝から何の騒ぎ?」
美穂が獅堂の顔に近づいて耳打ちする。
「もう退学者が出たの。男子生徒。入学式からまだ日もないのに」
〈ここは夢への切符をつかめる場所ではなかったのか?〉
獅堂は、眉をひそめる。
そんな獅堂の顔を見て美穂はさらに耳打ちする。
「理由は不登校よ。入学式はもちろん、ずっと来ていなかったらしいの」
獅堂は美穂にそっと聞く。
「でも、それだけで退学って、さすがに人権無視してないか?」
美穂は獅堂の袖を引っ張って、ギャラリーの群れから外れる。
さすがにそれ以上、込み入った会話を人ごみで続けるわけにいかないらしい。
「あんた、空気読みなさいよ」
美穂が目を三角にして言う。
「すまん。人の迷惑かえりみずで生きてきたからな」
美穂は腕組みして、ため息をつく。
「まあ、いいわ。話を続けましょう」
美穂が言う。
「その男子生徒はエグいイジメにあっていたらしいの」
獅堂が聞く。
「学校は何か対策できなかったのか?」
美穂が答える。
「実態をつかめなかったらしいよ」
「お役所的だな」
獅堂は、ため息をつく。
美穂が言う。
「学校はその生徒の家族と話し合って、自主退学と言う形をとったらしいの」
獅堂は感心したように言う。
「それにしても、よくそこまで事情がわかったな。夏川は探偵なのか?」
「あはは…」
美穂は乾いた笑い声をあげた。
その目はは害虫を見るように冷たい。
それでも、こう答えてくれた。
「中高一貫だから、4組にも知り合いがいるの。薄~い付き合いだけど。だからクラス同士で情報が伝わるのも割と早いのよ」
「なるほど」
獅堂は美穂の厳しい視線に気づかないふりで、さらに続ける。
「おそらく、そこまでわかっているのに、みんなはなぜ、まだここに群れているんだ?」
美穂はため息をつく。
そして首を振りながら言う。
「あなた、そんなこともわからないの?」
獅堂は黙っている。
わからないものはわからない、仕方がない。
美穂が続ける。
「みんな退学が怖いからよ。いつ自分が標的になってもおかしくない」
獅堂は美穂を見て、次の言葉を待つ。
彼女はこう続けた。
「ここでみんなと群れることで、新しい材料を集めている。ランキングは情報戦でもあるからね」
次回は明日朝の予定です。
よろしくお願いします!




