EP7 狙われた美少女
瀬戸隆平です。
夕方のお疲れさま時間に、お付き合いいただきましてありがとうございます!
豪華なシャンデリアが部屋をまぶしく照らす。
ここは東光学園の最上階にある理事長室だ。
入学式の翌日の4月6日。
重厚な机を前に本革の椅子に堂々と座るグレースーツ、白髪の初老の男。
東光学園理事長・渡邉英司である。
威圧感のある低い声、目の前の部下に聞く。
「3年後は何人、東京大学に送れるんだ?」
答えるのは高等部1年・学年主任の成田隆弘だ。
紺色のスーツ、水色のネクタイ、銀縁の眼鏡。
緊張した表情で、レンズの奥から眉毛を吊り上げて答える。
「150人合格させる見込みです!」
渡邉英司理事長は少し口角を上げる。
「目標はクリアできそうだな」
成田主任は、大きなディスプレイに画面を表示する。
特別進学コースの生徒たちの名簿が表示される。
「名前」「顔写真」「志望校」「合格可能性」。
写真と共に記されているのはこの4つだ。
最初の方に表示されているのは上位クラスの生徒たち。
「東京大学」「合格可能性95%」。
この2つの文字がズラリと並んでいる。
生徒たちの名簿は下へスクロールされていく。
次第に生徒名と共に別の大学も出てくる。
「京都大学」「合格可能性95%」
「一橋大学」「合格可能性95%」
それを見て渡邉理事長は満足そうにうなずく。
しかし一瞬、渡邉理事長が眉をひそめた。
視線は、ひとりの生徒の写真に向けられていた。
名前は「辻獅堂」と記されている。
「この生徒、志望校も合格可能性も空白じゃないか?」
成田主任は、慌ててスクロールの手を止める。
成田主任は頭を何度も下げながら言う。
「辻獅堂ですね。この生徒だけ資料が取れなくて」
「問題ある生徒なのか?」
「いえ、単なるデータ連携のミスだと思います」
「なんなら一人ぐらい退学させてもかまわないぞ」
「いえいえ、それには及ばないです」
ひたすら頭を下げ続ける成田主任。
こう続ける。
「本当にデータの問題ですから……」
「ふむ、もういい」
渡邉理事長の興味はもう次に移っていた。
成田主任に言う。
「スポーツ部門、文化・芸術部門の進路予定先も見せてもらおう」
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4月7日。
獅堂が登校すると、東大島の大きな体が、教室の隅で誰かを追い詰めている。
ほかの生徒たちは遠巻きに静観するだけだ。
獅堂は様子を伺おうと近づく。
すると東大島の背中越しに、女の子のスカートと白いブラウスが見えた。
そしてブロンドの金髪。
ロシア人留学生のソフィア・カーリンだった。
「なあ、いいだろ。食事に付き合ってくれればいいだけだから」
東大島の長い両腕が彼女の両側の壁に延びて、通せんぼをしている。
ソフィアは両腕を体の前で折り曲げて拳を握り締め、体を縮こまらせている。
青い瞳は充血してうるんでいる。
東大島が迫る。
「だから連絡先、連絡先のIDを教えてくれよ」
そのとき背後から大きな声が響いた。
「フラッショ?(ХОРОШО? 大丈夫ですか?)」
ソフィアが、はっとしたように声の主を見た。
それは獅堂の声だった。
ソフィアは獅堂の方に向かって、大きな声を張った。
「ウ ミェンヤ プラブレムリ! ポタムシュトネ ミェンヤ オカズゥブ ダビエンニャ!!(У меня проблемы, потому что на меня оказывают давление からまれて困っています)」
東大島も釣られて、獅堂の方を振り向く。
その左腕が留守になった。
ソフィアの右側が開いた。
その隙に彼女は逃げ出す。
獅堂に駆け寄ってくるソフィア。
追おうとする東大島。
獅堂は盾になるように東大島の行く手に割って入る。
そしてソフィアの体に手を回して駆け出した。
「ダバイチ ポエジュントダ(Давайте пойдем туда. 向こうに行こう!)」
呆気に取られた表情で取り残される東大島。
拳を握り締めながら、
「覚えてやがれ!」
と大きく舌打ちをする。
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