EP6 ランキングシステム
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担任の富樫由美がオリエンテーションを始める。
「この学校は皆さんがご存知のとおり、学業、各分野での成績を【SCORE】に数値化してランキングを作成しています。上位になると優遇が与えられ、下位には場合によってペナルティがあります」
生徒たちは黙って聞いている。
その様子は辻獅堂にとっては意外だった。
癖の強い生徒がやりたい放題な学校。
だが学校のローカルルールは聞き逃さないよう注視している。
「この【SCORE】は各生徒の都合によって、両者間の合意があれば、自由に貸し借りして構いません。奪うことはできませんが、他の生徒に譲渡することも可能です」
退屈な説明にもクラスは耳を傾ける。
由美が話を続ける。
「クラス分けは年に1回、ランキング順に行われます。所属クラスによって各生徒に与えられる基礎SCOREが変動します。そして毎月の特別ルールがあります。クラスの平均スコアが上位クラスを一定のレベルで上回った場合、クラスごとランキングが入れ替わり、基礎スコアも変動します。何か質問はありますか?」
手を上げた女生徒がいる。
席順「1番」、つまりクラスの首席だ。
「どうぞ。緑川綾乃さんですね」
担任の由美は彼女のことを、しっかり認識しているようだ。
綾乃は席から立ち上がる。
身長158㎝ほどで、黒髪ロングヘア。
色白で大きな黒い瞳。
紺色のブレザーと白いブラウスに、清楚感が漂っている。
綾乃が言う。
「今の話を私なりに理解すると、今後は【SCORE】をめぐる個人戦と、クラスごとの団体戦が始まるということですね」
「その通りです」
担任教師・由美の言葉を受けて、綾乃が言う。
「みなさん、これから上位進出を目指してクラスで団結して頑張りましょう」
生徒たちからは大きな拍手が起こる。
それを見て笑顔を浮かべる由美。
こう呼びかける。
「クラスの皆さんに提案です。緑川さんには1年6組のクラス委員を務めてもらおうと思いますが、いかがでしょうか?」
クラスからは、先ほどより大きな拍手が起こった。
緑川綾乃は、
「よろしくお願いします」
と大きく頭を下げた。
チャイムが鳴り、休み時間になる。
生徒たちが一斉に立ち上がる。
獅堂は隣の夏川美穂を見る。
昨日のスーツ姿とは違い、春らしい黄緑のニットにひざ丈の白いスカート。
しかし愛らしい服と対照的に、笑顔はない。
獅堂が言う。
「夏川、あの東大島に見覚えないか?」
美穂が目を見開いて、獅堂に聞く。
「どうしてそれを!?」
「昨日の電車、俺も乗っていたんだよ」
美穂は小さく息を吐いて、言う。
「そう。じゃあ、見たよね。男って乱暴なことするから、大嫌い」
「誰もがあんな奴というわけじゃない」
「男はみんな一緒よ。女を道具としか思ってないわ」
「何かあったのか?」
「何でもないわ」
と眉をひそめる美穂。
こう続ける。
「私に話しかけないでって、言ったでしょう」
獅堂は食い下がる。
「あのときベビーカーの母子を助けていた夏川は勇気があると思った」
美穂が口元を隠すように手で覆う。
「それも見てたの?」
「ああ」
獅堂が続ける。
「その夏川と、最下位近くの席に座る夏川が、どうしても結びつかなくて…」
美穂は机に両肘をつき、両手の甲をあごに添えている。
その姿勢のまま、静かに話し出す。
「私は陸上競技の推薦で入学しているの」
獅堂が眉を上げながら言う。
「アスリートじゃないか、凄いな!」
しかし美穂は首を振る。
「全国大会でメダルは取れてないし、陸上というジャンルはメジャースポーツに比べて評価が高くない。お金の動く桁が違うから」
「そんな…」
美穂はさらに続ける。
「それに私は中学で色々あって勉強が留守の時期があって、成績も落ちちゃったし」
獅堂が言う。
「大変だったんだな。でも今の夏川はちゃんとしてる」
美穂が少しだけ笑ったように見えた。
彼女は、ため息をついていう。
「学年最下位の人に言われてもねぇ…」
「ハハハ、きっついなぁ!」
獅堂が頭を掻きながら笑う。
つられて美穂も笑顔を浮かべた。
獅堂が言う。
「底辺どうし、仲良くやろうぜ」
美穂が少し目を潤ませながらうなずく。
引き続きよろしくお願いします!




